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第四章 鍛冶師の国
第二百二十八話 新たなフィールド《前編》
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そして工房を後にしてからもナギは残りの紹介状を頼りに他の場所もまわった。AOの時間で3日間かけて6カ所に行ったナギは、ほぼ毎日のように動き回ったので王都の地形などにはかなり詳しくなっていた。
しかも紹介状にあったのは工房のような施設を除いても鍛冶に関係のある場所ばかりで、巡っただけでもかなり有用な知識と人脈を手に入れていた。そのつながりのおかげもあってナギは街の中だけではなく周辺のfieldの情報も手に入れていた。
「さてっと、今日は紹介状も終わったし装備の新調…はお金の関係で延長するしかなかったけど、新しいフィールドの探索行ってみるかな!」
もうやる事も無く、フィールドの情報もかなりの量を集めることが出来たのでナギはようやく探索に出る事ができるのだ。
正直鍛冶に関しての施設巡りも楽しかったがナギは自ら戦って素材を集めるのも同じくらいには好きで、ここ数日はろくに鍛冶をする事もなかったので少しテンションが上がっていた。
その後はやる事を決めたナギは武器等を確認して王都の門へと向かう。
さすがに王都だけはあって門の大きさは始まりの街の門に比べても頑丈で巨大だった。その門を見上げながらギルドカードを見せて検問を通って、ついに新しい国で初めてのフィールドに出た。
「思っていた以上に別物って感じだな」
外に出たと同時に周囲を見回してナギはしみじみと言った。
なにせ始まりの街周辺は全てに少なからず草原などの自然があったが、今居るこのフィールドは何処を見ても周囲には岩肌しかなかった。しかも遠くに視線を向けると始まりの街のような鉱山が周囲を囲むように並んでいた。
「えっと、正面の門から出て正面が初級、右が中級で左が上級って感じに敵や出て来る鉱物の種類が変わるって事だったな…」
紹介状の1つに会った鉱石の専門店で聞いた情報を元に、今見ている範囲の風景と情報を合わせて考えて何処に句化を考え始めた。ただ城壁のすぐ近くとは言ってもフィールドに出ている以上は当然として魔物が居る訳で、考え込んで動かない者など格好の獲物に見えるのだ。
案の定だが考え込んでいたナギ目掛けて地面から土が槍のようになってのびて来た。
「う~ん…」
しかしナギは考え事を続けながら突如生えて来た土槍に一歩横にずれて躱した。
その後も何度となく足元から出て来るナギは考え事をしながら予知しているかのように避け続けていた。
もっともこれには種も仕掛けもしっかりある。
『三秒後に右後ろから』
『二秒後に正面』
『四秒後に左右から』
と言ったようにコートの内に隠れているソルテが土妖精として感じ取った変化を伝え、それに合わせてナギは反射的に避け続けていただけだ。ただ避けながらだと思考の速度がいつもより確実に落ちてしまうので、しかたなくナギはめんどくさそうに意識を切り替えた。
「はぁ…うざい。場所は何処?」
『えっと、今の位置から右前方19m…です』
「OK」
敵の位置をソルテに確認するとナギは短くそう答えて火球を両手に出現させ、鍛冶でも使用していた魔力操作で瞬時に圧縮して撃った。圧縮されて速度自体も少し上がったそれは言われた場所に当たると今まで以上に強力な爆発を起こした。
ドゴォォォォォーーーーーーー‼
「…威力上げ過ぎたか?」
想像以上の爆発にコートや髪をなびかせながらナギは少し顔を引きつらせながら見ていた。
それから数分後に爆風や土煙が完全に収まったのを確認してナギは気持ちを切り替えた。
「これだけの威力があれば倒せただろ!」
『そうですね…気配は感知できないです』
「ならよかった。これで倒せていなかったら、さすがに騒音で怒られた可能性が高いからな」
『街近いですもんね』
ソルテが言ったように避けながら移動したことで城壁からは離れていたが、それでも十分に近い事もあって爆風やら爆音が街中まで影響を与えた可能性が高い。それに加えて攻撃したけど倒せていなかったら言い訳もできないので気配がないと言う事にナギは安心していた。
そして敵も排除したことでナギは最初から考えていた今回行く場所を決めた。
「一先ずは正面だな。ここでの初級が俺の認識と違っていたら大変だし」
『急に上級に行くとか言わなくて安心しました』
「別に俺も死にたくはないし、そんな無茶はしない。と言うかあのロキの仕掛けで倒せない敵とも会ってるしな…」
少し意外と言うように話すソルテの言葉にナギは思い出したくもないロキの事を引き合いに出してまで心外だと伝える。それを聞いてロキの事をお思い出したのかソルテも嫌そうに顔を歪めた。
『確かに居ましたね…』
「と言う事で慎重に行こう」
『はい!』
変な空気になりそうだったこともあってナギは話を終わらせて決めた通りに正面の鉱山を目指して移動を開始した。
移動開始して20分程経ったが初めてのフィールドで、更には見晴らしの悪い岩場で走るのは奇襲の危険があるのでナギも今回は走るのを自重していた。なのでいつもよりは移動速度が遅くまだ城壁がはっきりと見えるほどの距離にいた。
しかも移動している間に3度の攻撃にあっていた。
「…なんでこのフィールドの魔物どもは姿をみせねぇ~のかなぁ~?」
そして今までにない程にナギは苛立っていた。なにせこの鉱山まで続く岩場のフィールドで戦闘した敵全てが姿を見せず、土魔法や石や地面を介したスキルでの攻撃だけで姿を一向に見せなかった。
なのでいまだに鑑定すらできずに正体も分からないまま高威力の魔法によるごり押しで倒していた。
倒したのは光になって消えるエフェクトのおかげで分かってはいた。だから正体を知りたくてアイテムボックスに増えていたアイテムを確認もしたのだが『ストーン・モグラ』と言う名と爪や毛皮に血液があった。
それだけで敵は地中に居る事はわかったしソルテからも地中の気配を感知していた。ただどれだけ気配を見つけてもナギから近寄ると逃げてしまい、気がついても近寄らずにいると向こうが攻撃を仕掛けてくるのだ。
なので4度目の襲撃の時に倒すMPがもったいなく感じたナギは攻撃しないで避けていたら、5分程攻撃は続いたがその後は攻撃が来なくなってしまった。
「近寄れば逃げて、勝てない相手にはまた逃げて…たいして強くないのに鬱陶しい‼」
『ははは…まぁそれが彼らの生存方法ですから』
「わかってるよ。でも実際にやられる方は苛つくんだよ…」
一応生存方法として戦い方自体はナギも認めていたのだが鬱陶しくて苛立ってしまうのはどうしようもなかった。
だが悪い事ばかりでもなく岩場のフィールドだけあって少し他よりも大きな岩などには採掘ポイントも存在して、そこからは銅が5割・鉄が4割・銀が1割ほどの確率で手に入った。
そんな場所を見つけては取りつくすまで採掘をしていて移動が遅れていた事もあって、一概に魔物の攻撃だけが移動の遅れの原因とも言えなかった。
なので後れを取り戻すためにナギは一度溜息をついて頭を切り替えた。
「はぁ…とりあえず攻撃の方法は何となくわかったし、その予兆?みたいなのをソルテが感じ取れるなら問題ないか…」
『なんかとてつもなく嫌な予感がするんですけど…』
ブツブツと何事か呟くナギの姿に今までの経験からソルテは嫌な予感がして顔を引きつらせていた。
そのソルテの反応を横目にしたナギは悪戯っぽくニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ…別に特別な事はしないから安心しろ。ただ加減なしに走るだけだ」
『……いやぁ~』
「いやじゃない」
拒否するように首を左右に振うソルテの動きを先読みしてナギはきっぱりと切り捨てて、身をかがめて足に力を溜め始めた。ここまで来てはもう止めることはできないと諦めてソルテは自分の役目に集中する。
それを確認してナギも満足そうに頷くと表情を無にして一気に溜めた力を解放して走り出し岩場をアクロバティックに移動するのだった。
しかも紹介状にあったのは工房のような施設を除いても鍛冶に関係のある場所ばかりで、巡っただけでもかなり有用な知識と人脈を手に入れていた。そのつながりのおかげもあってナギは街の中だけではなく周辺のfieldの情報も手に入れていた。
「さてっと、今日は紹介状も終わったし装備の新調…はお金の関係で延長するしかなかったけど、新しいフィールドの探索行ってみるかな!」
もうやる事も無く、フィールドの情報もかなりの量を集めることが出来たのでナギはようやく探索に出る事ができるのだ。
正直鍛冶に関しての施設巡りも楽しかったがナギは自ら戦って素材を集めるのも同じくらいには好きで、ここ数日はろくに鍛冶をする事もなかったので少しテンションが上がっていた。
その後はやる事を決めたナギは武器等を確認して王都の門へと向かう。
さすがに王都だけはあって門の大きさは始まりの街の門に比べても頑丈で巨大だった。その門を見上げながらギルドカードを見せて検問を通って、ついに新しい国で初めてのフィールドに出た。
「思っていた以上に別物って感じだな」
外に出たと同時に周囲を見回してナギはしみじみと言った。
なにせ始まりの街周辺は全てに少なからず草原などの自然があったが、今居るこのフィールドは何処を見ても周囲には岩肌しかなかった。しかも遠くに視線を向けると始まりの街のような鉱山が周囲を囲むように並んでいた。
「えっと、正面の門から出て正面が初級、右が中級で左が上級って感じに敵や出て来る鉱物の種類が変わるって事だったな…」
紹介状の1つに会った鉱石の専門店で聞いた情報を元に、今見ている範囲の風景と情報を合わせて考えて何処に句化を考え始めた。ただ城壁のすぐ近くとは言ってもフィールドに出ている以上は当然として魔物が居る訳で、考え込んで動かない者など格好の獲物に見えるのだ。
案の定だが考え込んでいたナギ目掛けて地面から土が槍のようになってのびて来た。
「う~ん…」
しかしナギは考え事を続けながら突如生えて来た土槍に一歩横にずれて躱した。
その後も何度となく足元から出て来るナギは考え事をしながら予知しているかのように避け続けていた。
もっともこれには種も仕掛けもしっかりある。
『三秒後に右後ろから』
『二秒後に正面』
『四秒後に左右から』
と言ったようにコートの内に隠れているソルテが土妖精として感じ取った変化を伝え、それに合わせてナギは反射的に避け続けていただけだ。ただ避けながらだと思考の速度がいつもより確実に落ちてしまうので、しかたなくナギはめんどくさそうに意識を切り替えた。
「はぁ…うざい。場所は何処?」
『えっと、今の位置から右前方19m…です』
「OK」
敵の位置をソルテに確認するとナギは短くそう答えて火球を両手に出現させ、鍛冶でも使用していた魔力操作で瞬時に圧縮して撃った。圧縮されて速度自体も少し上がったそれは言われた場所に当たると今まで以上に強力な爆発を起こした。
ドゴォォォォォーーーーーーー‼
「…威力上げ過ぎたか?」
想像以上の爆発にコートや髪をなびかせながらナギは少し顔を引きつらせながら見ていた。
それから数分後に爆風や土煙が完全に収まったのを確認してナギは気持ちを切り替えた。
「これだけの威力があれば倒せただろ!」
『そうですね…気配は感知できないです』
「ならよかった。これで倒せていなかったら、さすがに騒音で怒られた可能性が高いからな」
『街近いですもんね』
ソルテが言ったように避けながら移動したことで城壁からは離れていたが、それでも十分に近い事もあって爆風やら爆音が街中まで影響を与えた可能性が高い。それに加えて攻撃したけど倒せていなかったら言い訳もできないので気配がないと言う事にナギは安心していた。
そして敵も排除したことでナギは最初から考えていた今回行く場所を決めた。
「一先ずは正面だな。ここでの初級が俺の認識と違っていたら大変だし」
『急に上級に行くとか言わなくて安心しました』
「別に俺も死にたくはないし、そんな無茶はしない。と言うかあのロキの仕掛けで倒せない敵とも会ってるしな…」
少し意外と言うように話すソルテの言葉にナギは思い出したくもないロキの事を引き合いに出してまで心外だと伝える。それを聞いてロキの事をお思い出したのかソルテも嫌そうに顔を歪めた。
『確かに居ましたね…』
「と言う事で慎重に行こう」
『はい!』
変な空気になりそうだったこともあってナギは話を終わらせて決めた通りに正面の鉱山を目指して移動を開始した。
移動開始して20分程経ったが初めてのフィールドで、更には見晴らしの悪い岩場で走るのは奇襲の危険があるのでナギも今回は走るのを自重していた。なのでいつもよりは移動速度が遅くまだ城壁がはっきりと見えるほどの距離にいた。
しかも移動している間に3度の攻撃にあっていた。
「…なんでこのフィールドの魔物どもは姿をみせねぇ~のかなぁ~?」
そして今までにない程にナギは苛立っていた。なにせこの鉱山まで続く岩場のフィールドで戦闘した敵全てが姿を見せず、土魔法や石や地面を介したスキルでの攻撃だけで姿を一向に見せなかった。
なのでいまだに鑑定すらできずに正体も分からないまま高威力の魔法によるごり押しで倒していた。
倒したのは光になって消えるエフェクトのおかげで分かってはいた。だから正体を知りたくてアイテムボックスに増えていたアイテムを確認もしたのだが『ストーン・モグラ』と言う名と爪や毛皮に血液があった。
それだけで敵は地中に居る事はわかったしソルテからも地中の気配を感知していた。ただどれだけ気配を見つけてもナギから近寄ると逃げてしまい、気がついても近寄らずにいると向こうが攻撃を仕掛けてくるのだ。
なので4度目の襲撃の時に倒すMPがもったいなく感じたナギは攻撃しないで避けていたら、5分程攻撃は続いたがその後は攻撃が来なくなってしまった。
「近寄れば逃げて、勝てない相手にはまた逃げて…たいして強くないのに鬱陶しい‼」
『ははは…まぁそれが彼らの生存方法ですから』
「わかってるよ。でも実際にやられる方は苛つくんだよ…」
一応生存方法として戦い方自体はナギも認めていたのだが鬱陶しくて苛立ってしまうのはどうしようもなかった。
だが悪い事ばかりでもなく岩場のフィールドだけあって少し他よりも大きな岩などには採掘ポイントも存在して、そこからは銅が5割・鉄が4割・銀が1割ほどの確率で手に入った。
そんな場所を見つけては取りつくすまで採掘をしていて移動が遅れていた事もあって、一概に魔物の攻撃だけが移動の遅れの原因とも言えなかった。
なので後れを取り戻すためにナギは一度溜息をついて頭を切り替えた。
「はぁ…とりあえず攻撃の方法は何となくわかったし、その予兆?みたいなのをソルテが感じ取れるなら問題ないか…」
『なんかとてつもなく嫌な予感がするんですけど…』
ブツブツと何事か呟くナギの姿に今までの経験からソルテは嫌な予感がして顔を引きつらせていた。
そのソルテの反応を横目にしたナギは悪戯っぽくニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ…別に特別な事はしないから安心しろ。ただ加減なしに走るだけだ」
『……いやぁ~』
「いやじゃない」
拒否するように首を左右に振うソルテの動きを先読みしてナギはきっぱりと切り捨てて、身をかがめて足に力を溜め始めた。ここまで来てはもう止めることはできないと諦めてソルテは自分の役目に集中する。
それを確認してナギも満足そうに頷くと表情を無にして一気に溜めた力を解放して走り出し岩場をアクロバティックに移動するのだった。
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