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第四章 鍛冶師の国
第二百三十四話 試作の日々《ロングソード:後編》
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初めてのロングソードの製作にナギとソルテの2人は調性やらと慣れない事も多くて必要以上に疲れていた。特にサポートとして補助魔法を使っていたソルテはMPの消費も大きくなっていた。
それでもここまで来て止める選択肢なんてあるはずもなく2人は少し休憩を挟みながら作業を続けていた。
「ソルテは最低限のサポートで疲労軽減と筋力増加を中心に使ってくれ」
『わかりました』
「よし、頑張るか」
最低限の指示を出したナギは改めて気合を入れ直すと窯の中から一つに纏まった鉄のインゴットを取り出して成型へと取り掛かる。
すでに鉄の歪な棒のようにまでは出来ているので、後はロングソードとしての形にするだけだった。
ただ言葉にするほど簡単でもなくナギは長くなった鉄の棒を窯の中に入れて十分に熱すると取り出して鎚で打つが、2個のインゴットを纏めたからか叩く範囲は広くなっているので単純に手間が二倍に増えていた。
この事をナギはなんとなく予想できていたからこそソルテに使用する補助魔法の1つを疲労軽減にしてもらうようにしたのだ。
その効果もあって鎚を振るう腕は一定のテンポを崩す事なく動かせていた。
しかし範囲が大きくなったことで凹凸を減らすのには本気で集中した状態で、かなり細かく注意をしないといけなくて徐々にだがナギにも疲労が見え始めた。
「っ…」
だからと言って手を止められるのは窯に入れている時間くらいで、打っている時に手を止めるとここまでの苦労が無駄になってしまうので休憩する事もなくナギは作業を続けた。
窯に入れている間も火の入りをよくするために魔力操作も範囲などを先ほどまで以上に気を付ける必要があって、手は止められていても頭自体はろくに休むこともできない。
そんな極限状態でもナギは集中は一切途切れさせる事はなく周囲の音すら聞こえない程の集中を常に維持していた。おかげで作業自体は少し初めてのために戸惑いはしたが比較的順調に進んだ。
しばらく作業を続ければまだ荒いが剣としての形が出来てきていた。
一度手を止めて刃になる部分などを確認してナギは小さく息を吐きだした。
「ふぅ…もうひと踏ん張りっと」
小さく気合を入れ直すように呟くとナギは冷却用とは別で用意して置いた水で顔を一度濡らして作業を再開した。
さすがに火傷するほどの熱は感じなくても夏場に近い熱は感じていたので冷たい水を浴びたおかげでナギは頭が好き入りしたようで、更に深く集中して窯の制御と鎚を握った。
それからも凹凸をなくすように鎚を打って大きさによって力の強弱も上手く調整した。
他にも余計な場所を叩かないように注意して作業を進めて、始めてから2時間半以上掛けてようやくロングソードとして成形が終わった。
「お、おわった…」
『お疲れさまでした…』
成形が終わっただけだがナギとソルテの2人は疲れ切った様子でイスに深く座り込んだ。
まだ研いだり磨いたり作業は残っているのだが一番大変だと思われた作業が終わった事で少し気が抜けてしまったのだ。
だからと言ってずっと休んでいるつもりはないので少し休んだらゆっくりと、本当にゆっくりと体を起き上がらせて作りかけのロングソードを見つめる。
「はぁ…形はだいぶできたな。まだ少しゴド爺さんの作ったのに比べると荒い印象だけど、最初に作ったにしては及第点ってところか」
『熟練の職人さんと比べたらダメですよ。年季が違いすぎます』
「確かに、それじゃ追いつくために仕上げ頑張って終わらせるか?」
『はい!最後の頑張りです‼』
どこか疲れの滲むナギに対してソルテも勢いでなんとか元気なように振る舞っていたが、やはりどこか表情には疲れが浮かんでいた。
そんな状態でも決めたからには2人は仕上げの研ぎの作業へと取り掛かる。
今回も使用するのは最初から使っている物だが慣れている分、この研ぎの作業ではナギはまだ楽なようで腕の動きが軽かった。サポートのソルテも使用する魔法の種類も経験から予想が出来るので無理のない範囲でする事ができた。
もっとも大きさが増えている事には変わりがないので普段よりも時間は掛かったが研ぎと刃作りは終わった。
ここまで来るとロングソードは武器としての鈍い輝きを放ち始めていた。少し一息ついて休みたかったナギだが木を抜くと作業に戻るのに時間がかかりそうだと思ったので、どうせやるのも汚れを落として磨くことくらいなので一気に終わらせることにした。
そして水で表面の煤などの汚れを綺麗に落として水気を綺麗に取れば終了だ。
「『おわった~~~‼』」
すべて終わると同時に達成感にナギとソルテの2人は両手を振り上げて叫んでいた。
もちろん完成したロングソードは傷つけないように別の場所に丁寧に置いた後にだ。ここまで来て傷でも出来たら2人は絶望のあまり気絶していたかもしれない。
なので少し過剰なまでに丁寧に扱っていた。
しばらく疲労や達成感に開放感やらが合わさって少しハイテンションだったナギとソルテの2人だったが、さすがに時間が経つと冷静になったようで座って静かになっていた。
「……はぁ、なんかいろいろ疲れたな」
『ははは…本当ですね』
冷静になった事で極まった疲労を正確に認識して2人は疲れ切ったようにうなだれていた。
それでも肉体的な疲労を感じないだけにナギは精神疲労だけなので比較的早めに持ち直して置いたままのロングソードを手に持った。
「うん、やっぱり素材の量が増えただけに結構重く感じるな」
持ってみると鉄のインゴットを2個も使用しているだけあって、普段使用している短刀と比べてもかなり重く感じた。それでもSTRにポイントを多く振っているナギからすると誤差にもならない程の違いなので、作業場の中でも広い場所で軽く振って感触を確かめてみる。
「…そこそこか?重心が少しぶれているような気がするけど、やっぱり本格的に使わないと断言はできないか」
『初めて作って店売りに並んでそうな出来栄えなんですから。もう少し嬉しそうにしてくださいよ…』
初めての製作で売り物になる出来の物を作った。その事は職人としてすごい事だと分かるだけにソルテはあまり喜んでいる様子のないナギに残念そうにしていた。
その反応にナギも考えている事は理解できるので何とも言い難そうに自分の考えを言った。
「いや、嬉しいけど…今回の目的は自分の装備を自作するための準備って事だからな。やっぱり妥協したくない」
いつも以上に必死に頑張る理由なだけにナギは珍しい程に真剣な表情で話した。
正面からその表情を見たソルテもこれ以上何か言う気にも慣れず黙ってしまったが、表情は先ほどまでよりも何処か晴れやかだった。
それから少しの間は軽く今後の事を話したりしながら休憩を取った。
「さて、十分休んだし追加で一本仕上げて今日は終わろう」
『はい!頑張りますよ‼』
「おう、なにせレシピ1つ10個作る予定だからな。急がないにしても頑張らないと」
『そういう話でしたからね…』
数時間にわたる大変な作業には気が滅入るため最初に決めた個数に嫌そうにしていた2人だったが、一度決めた以上は帰るつもりがナギにはないので気合を入れ直して今日最後の一本の製作に挑むのだった。
それでもここまで来て止める選択肢なんてあるはずもなく2人は少し休憩を挟みながら作業を続けていた。
「ソルテは最低限のサポートで疲労軽減と筋力増加を中心に使ってくれ」
『わかりました』
「よし、頑張るか」
最低限の指示を出したナギは改めて気合を入れ直すと窯の中から一つに纏まった鉄のインゴットを取り出して成型へと取り掛かる。
すでに鉄の歪な棒のようにまでは出来ているので、後はロングソードとしての形にするだけだった。
ただ言葉にするほど簡単でもなくナギは長くなった鉄の棒を窯の中に入れて十分に熱すると取り出して鎚で打つが、2個のインゴットを纏めたからか叩く範囲は広くなっているので単純に手間が二倍に増えていた。
この事をナギはなんとなく予想できていたからこそソルテに使用する補助魔法の1つを疲労軽減にしてもらうようにしたのだ。
その効果もあって鎚を振るう腕は一定のテンポを崩す事なく動かせていた。
しかし範囲が大きくなったことで凹凸を減らすのには本気で集中した状態で、かなり細かく注意をしないといけなくて徐々にだがナギにも疲労が見え始めた。
「っ…」
だからと言って手を止められるのは窯に入れている時間くらいで、打っている時に手を止めるとここまでの苦労が無駄になってしまうので休憩する事もなくナギは作業を続けた。
窯に入れている間も火の入りをよくするために魔力操作も範囲などを先ほどまで以上に気を付ける必要があって、手は止められていても頭自体はろくに休むこともできない。
そんな極限状態でもナギは集中は一切途切れさせる事はなく周囲の音すら聞こえない程の集中を常に維持していた。おかげで作業自体は少し初めてのために戸惑いはしたが比較的順調に進んだ。
しばらく作業を続ければまだ荒いが剣としての形が出来てきていた。
一度手を止めて刃になる部分などを確認してナギは小さく息を吐きだした。
「ふぅ…もうひと踏ん張りっと」
小さく気合を入れ直すように呟くとナギは冷却用とは別で用意して置いた水で顔を一度濡らして作業を再開した。
さすがに火傷するほどの熱は感じなくても夏場に近い熱は感じていたので冷たい水を浴びたおかげでナギは頭が好き入りしたようで、更に深く集中して窯の制御と鎚を握った。
それからも凹凸をなくすように鎚を打って大きさによって力の強弱も上手く調整した。
他にも余計な場所を叩かないように注意して作業を進めて、始めてから2時間半以上掛けてようやくロングソードとして成形が終わった。
「お、おわった…」
『お疲れさまでした…』
成形が終わっただけだがナギとソルテの2人は疲れ切った様子でイスに深く座り込んだ。
まだ研いだり磨いたり作業は残っているのだが一番大変だと思われた作業が終わった事で少し気が抜けてしまったのだ。
だからと言ってずっと休んでいるつもりはないので少し休んだらゆっくりと、本当にゆっくりと体を起き上がらせて作りかけのロングソードを見つめる。
「はぁ…形はだいぶできたな。まだ少しゴド爺さんの作ったのに比べると荒い印象だけど、最初に作ったにしては及第点ってところか」
『熟練の職人さんと比べたらダメですよ。年季が違いすぎます』
「確かに、それじゃ追いつくために仕上げ頑張って終わらせるか?」
『はい!最後の頑張りです‼』
どこか疲れの滲むナギに対してソルテも勢いでなんとか元気なように振る舞っていたが、やはりどこか表情には疲れが浮かんでいた。
そんな状態でも決めたからには2人は仕上げの研ぎの作業へと取り掛かる。
今回も使用するのは最初から使っている物だが慣れている分、この研ぎの作業ではナギはまだ楽なようで腕の動きが軽かった。サポートのソルテも使用する魔法の種類も経験から予想が出来るので無理のない範囲でする事ができた。
もっとも大きさが増えている事には変わりがないので普段よりも時間は掛かったが研ぎと刃作りは終わった。
ここまで来るとロングソードは武器としての鈍い輝きを放ち始めていた。少し一息ついて休みたかったナギだが木を抜くと作業に戻るのに時間がかかりそうだと思ったので、どうせやるのも汚れを落として磨くことくらいなので一気に終わらせることにした。
そして水で表面の煤などの汚れを綺麗に落として水気を綺麗に取れば終了だ。
「『おわった~~~‼』」
すべて終わると同時に達成感にナギとソルテの2人は両手を振り上げて叫んでいた。
もちろん完成したロングソードは傷つけないように別の場所に丁寧に置いた後にだ。ここまで来て傷でも出来たら2人は絶望のあまり気絶していたかもしれない。
なので少し過剰なまでに丁寧に扱っていた。
しばらく疲労や達成感に開放感やらが合わさって少しハイテンションだったナギとソルテの2人だったが、さすがに時間が経つと冷静になったようで座って静かになっていた。
「……はぁ、なんかいろいろ疲れたな」
『ははは…本当ですね』
冷静になった事で極まった疲労を正確に認識して2人は疲れ切ったようにうなだれていた。
それでも肉体的な疲労を感じないだけにナギは精神疲労だけなので比較的早めに持ち直して置いたままのロングソードを手に持った。
「うん、やっぱり素材の量が増えただけに結構重く感じるな」
持ってみると鉄のインゴットを2個も使用しているだけあって、普段使用している短刀と比べてもかなり重く感じた。それでもSTRにポイントを多く振っているナギからすると誤差にもならない程の違いなので、作業場の中でも広い場所で軽く振って感触を確かめてみる。
「…そこそこか?重心が少しぶれているような気がするけど、やっぱり本格的に使わないと断言はできないか」
『初めて作って店売りに並んでそうな出来栄えなんですから。もう少し嬉しそうにしてくださいよ…』
初めての製作で売り物になる出来の物を作った。その事は職人としてすごい事だと分かるだけにソルテはあまり喜んでいる様子のないナギに残念そうにしていた。
その反応にナギも考えている事は理解できるので何とも言い難そうに自分の考えを言った。
「いや、嬉しいけど…今回の目的は自分の装備を自作するための準備って事だからな。やっぱり妥協したくない」
いつも以上に必死に頑張る理由なだけにナギは珍しい程に真剣な表情で話した。
正面からその表情を見たソルテもこれ以上何か言う気にも慣れず黙ってしまったが、表情は先ほどまでよりも何処か晴れやかだった。
それから少しの間は軽く今後の事を話したりしながら休憩を取った。
「さて、十分休んだし追加で一本仕上げて今日は終わろう」
『はい!頑張りますよ‼』
「おう、なにせレシピ1つ10個作る予定だからな。急がないにしても頑張らないと」
『そういう話でしたからね…』
数時間にわたる大変な作業には気が滅入るため最初に決めた個数に嫌そうにしていた2人だったが、一度決めた以上は帰るつもりがナギにはないので気合を入れ直して今日最後の一本の製作に挑むのだった。
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