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大六章 死神戦
第二百八十九話 骸の城《11》
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「くぅ…」
魔力をしばらく注ぎ込むとナギは体の力が急激に抜けていくような感覚に襲われて膝をついた。
それでも手を離すこともできないので無抵抗に必死に耐えていた。
尋常な様子ではないナギに鎧達やソルテは手を離れさせようとしたが、押しも引いても本当に少しも動かなかった。
最初こそ粘り強く救おうとしてくれていたがナギが無駄なことを止めるように言ったことで手出しできなくなっていた。ただナギの視界の端には自分のMPだけではなくHPまでが減りだしていることが見えていた。
「さすがに…まずいか…」
急激にMPとHPがなくなったことで虚弱の状態異常にまでなっていて、本格的にナギは危機感を抱き始めた。
しかし元気な時でさえ外せなかった手が、力の入らない状態では余計に不可能だった。
そうして少しするとMPとHPが残り1㎜ほどになったところで吸収が止まって解放された。
「っ!」
拘束されていた事で支えられていた体は解放されると同時に床に倒れてしまった。
『主様⁉大丈夫ですか‼』
「大丈夫だ…ポーションくれ」
『わかりました!』
心配して駆け寄ってきたソルテに対してナギはなんとかアイテムボックスからポーションを落として飲ませてもらった。するとHPは見る見るうちに回復して起き上がることができるほどになった。
動けるようになると自分でMPポーションを飲んでMPも回復して立ち上がった。
「あぁ~ひどい目にあったわ」
虚脱感が完全に抜けたナギは体を解しながら先ほどまで掴んでいた本へと目を向けた。
その本は黒かった表紙に白く文字が浮かんでいたがナギには読むことができなかった。
「読めない…ってことは他にスキルかアイテムで読む方法があるか、そもそも読めないことが普通なのかだな」
もう吸収されることはないと判断したナギは本を手に取って数ページ開いてみたが表紙と同じく読めず、これから導き出される可能性をナギは口に出して確認していった。
それでも全部がどこかしっくりこなくて首をかしげていた。
『なにか気になることでもあったんですか?』
「気になるというか、ロキとは違ってしっかりした相手のイメージに読めない本っていうのは少し合わなくてな…」
『なるほど、言われてみると確かに不自然ですね』
悪印象の強かったロキとは反対に今回の死神に関しては動機も理解できたし、やられた試練も敵の強さは勝てない難易度ではあったが攻略法がちゃんと用意されていた。
だからこそ一切読めない本を用意するような意地の悪い事をするのはイメージに合わなかった。
その事だけがどうしても腑に落ちなくてナギとソルテの2人は頭を悩ませていたのだ。
すると手に持っていた黒い本が薄っすらと光っていることに気が付いた。
「これ…黒くて見難いけど光ってるな」
『え…あ、本当ですね。すごい見難いですけど、確かに光ってます』
「なんで黒い本に黒い光を纏わせるかな。危うく気が付かないところだったぞ…」
どこかで聞いているだろう相手に向かってわかりにくい仕掛けにナギは文句を言った。
それでも気にしない相手なのはわかっているし、なにより反応があるとも思ってはいなかったが少しくらい文句でも言わないと切り替える気分にならなかったのだ。
これで頭を落ち着けたナギは目の前の本の纏っている光や魔力を注意深く観察した。
「特に害があるわけではなさそうだけど、やっぱり何かヒントと考えるべきかな」
本を観察したナギは他にも似たようなものが無いかと部屋の中を確認してみた。
しかし他には何か特別な物は部屋のどこにもなく、置かれていた机の引き出しの中を調べても見つけられなかった。
「この部屋にはないってことは、他の部屋か…先へと進んだ後のキーアイテムってところか」
『キーアイテムですか』
「この後の場所で進むのに必要とかだろうな。だとすると…一回部屋を出てみるか」
『え⁉』
せっかく安心できる室内にいるのに不気味な通路に出ようとしているナギにソルテは驚いたように声を上げた。
それを見てナギは何か確信めいた表情を浮かべてソルテを掴んでコートの奥に押し込むと鎧達を引きつれて外へとでた。
すると変わらず薄暗く不気味な通路が広がっていたが、そこには待っていたようにデス・フラワーゴーレムがたたずんでいた。
「待っていたってことは合格か不合格か結果が出たのか?」
「やはり鋭いお方ですね。その通りです」
「で、結果は?」
会話するナギとデス・フラワーゴーレムは穏やかそうに見えても言い知れぬ圧があって、感情の希薄な鎧達も恐怖からかカタカタと小刻みに震えていた。
そして不敵に笑みを浮かべて見つめ合う2人はしばらくの沈黙の後に口を開いた。
「もちろん合格です」
「ちなみに今回の条件は『安心感に抗う』ってところか?」
「⁉…正解です。こちらの通路には私と一緒に行動することに対する安心感、部屋にはとどまる事への安心感が増幅されるようになっていました」
「やっぱりか…」
「最後に、何故お客様は影響を受けていないのでしょうか?」
「そのことか…俺にもよくわからん!ただ昔から飽きやすいし、安心感なんてめったに感じたことはないからな。特に今回のような警戒心が前回になっているときはなおさらな」
「っ!そんな理由で突破されるとは…」
さすがにこの答えは予想外だったのかデス・フラワーゴーレムは初めて本心からの感情だと思えるほど分かりやすく唖然としていた。その間抜けな姿にナギは思わず笑いそうになりながら必死に堪えて再起動するまで待つのだった。
魔力をしばらく注ぎ込むとナギは体の力が急激に抜けていくような感覚に襲われて膝をついた。
それでも手を離すこともできないので無抵抗に必死に耐えていた。
尋常な様子ではないナギに鎧達やソルテは手を離れさせようとしたが、押しも引いても本当に少しも動かなかった。
最初こそ粘り強く救おうとしてくれていたがナギが無駄なことを止めるように言ったことで手出しできなくなっていた。ただナギの視界の端には自分のMPだけではなくHPまでが減りだしていることが見えていた。
「さすがに…まずいか…」
急激にMPとHPがなくなったことで虚弱の状態異常にまでなっていて、本格的にナギは危機感を抱き始めた。
しかし元気な時でさえ外せなかった手が、力の入らない状態では余計に不可能だった。
そうして少しするとMPとHPが残り1㎜ほどになったところで吸収が止まって解放された。
「っ!」
拘束されていた事で支えられていた体は解放されると同時に床に倒れてしまった。
『主様⁉大丈夫ですか‼』
「大丈夫だ…ポーションくれ」
『わかりました!』
心配して駆け寄ってきたソルテに対してナギはなんとかアイテムボックスからポーションを落として飲ませてもらった。するとHPは見る見るうちに回復して起き上がることができるほどになった。
動けるようになると自分でMPポーションを飲んでMPも回復して立ち上がった。
「あぁ~ひどい目にあったわ」
虚脱感が完全に抜けたナギは体を解しながら先ほどまで掴んでいた本へと目を向けた。
その本は黒かった表紙に白く文字が浮かんでいたがナギには読むことができなかった。
「読めない…ってことは他にスキルかアイテムで読む方法があるか、そもそも読めないことが普通なのかだな」
もう吸収されることはないと判断したナギは本を手に取って数ページ開いてみたが表紙と同じく読めず、これから導き出される可能性をナギは口に出して確認していった。
それでも全部がどこかしっくりこなくて首をかしげていた。
『なにか気になることでもあったんですか?』
「気になるというか、ロキとは違ってしっかりした相手のイメージに読めない本っていうのは少し合わなくてな…」
『なるほど、言われてみると確かに不自然ですね』
悪印象の強かったロキとは反対に今回の死神に関しては動機も理解できたし、やられた試練も敵の強さは勝てない難易度ではあったが攻略法がちゃんと用意されていた。
だからこそ一切読めない本を用意するような意地の悪い事をするのはイメージに合わなかった。
その事だけがどうしても腑に落ちなくてナギとソルテの2人は頭を悩ませていたのだ。
すると手に持っていた黒い本が薄っすらと光っていることに気が付いた。
「これ…黒くて見難いけど光ってるな」
『え…あ、本当ですね。すごい見難いですけど、確かに光ってます』
「なんで黒い本に黒い光を纏わせるかな。危うく気が付かないところだったぞ…」
どこかで聞いているだろう相手に向かってわかりにくい仕掛けにナギは文句を言った。
それでも気にしない相手なのはわかっているし、なにより反応があるとも思ってはいなかったが少しくらい文句でも言わないと切り替える気分にならなかったのだ。
これで頭を落ち着けたナギは目の前の本の纏っている光や魔力を注意深く観察した。
「特に害があるわけではなさそうだけど、やっぱり何かヒントと考えるべきかな」
本を観察したナギは他にも似たようなものが無いかと部屋の中を確認してみた。
しかし他には何か特別な物は部屋のどこにもなく、置かれていた机の引き出しの中を調べても見つけられなかった。
「この部屋にはないってことは、他の部屋か…先へと進んだ後のキーアイテムってところか」
『キーアイテムですか』
「この後の場所で進むのに必要とかだろうな。だとすると…一回部屋を出てみるか」
『え⁉』
せっかく安心できる室内にいるのに不気味な通路に出ようとしているナギにソルテは驚いたように声を上げた。
それを見てナギは何か確信めいた表情を浮かべてソルテを掴んでコートの奥に押し込むと鎧達を引きつれて外へとでた。
すると変わらず薄暗く不気味な通路が広がっていたが、そこには待っていたようにデス・フラワーゴーレムがたたずんでいた。
「待っていたってことは合格か不合格か結果が出たのか?」
「やはり鋭いお方ですね。その通りです」
「で、結果は?」
会話するナギとデス・フラワーゴーレムは穏やかそうに見えても言い知れぬ圧があって、感情の希薄な鎧達も恐怖からかカタカタと小刻みに震えていた。
そして不敵に笑みを浮かべて見つめ合う2人はしばらくの沈黙の後に口を開いた。
「もちろん合格です」
「ちなみに今回の条件は『安心感に抗う』ってところか?」
「⁉…正解です。こちらの通路には私と一緒に行動することに対する安心感、部屋にはとどまる事への安心感が増幅されるようになっていました」
「やっぱりか…」
「最後に、何故お客様は影響を受けていないのでしょうか?」
「そのことか…俺にもよくわからん!ただ昔から飽きやすいし、安心感なんてめったに感じたことはないからな。特に今回のような警戒心が前回になっているときはなおさらな」
「っ!そんな理由で突破されるとは…」
さすがにこの答えは予想外だったのかデス・フラワーゴーレムは初めて本心からの感情だと思えるほど分かりやすく唖然としていた。その間抜けな姿にナギは思わず笑いそうになりながら必死に堪えて再起動するまで待つのだった。
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大変かと思いますが頑張って下さい
ありがとうございます!
誤字脱字が結構多いですね。話は面白いですが。
もう少し最初の方から見直したほうが良いのではないでしょうか。
誤字脱字が気になりますがストーリーがとても良い感じで楽しく読ませていただいてます!