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第2章 王様ゲーム

「穏やか」*蓮

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 樹は、優しい。
 大勢で騒がないけれど、直接話せば、優しいし、まっすぐだし、まじめなのも、すぐ分かる。
 おとなしい訳ではないから、突っ込みも入るし、話していて、楽しい。

 大勢でつるんだりするのはあまり見かけないけれど、樹は仲の良い奴が多い気がする。

 オレは、まあ……いつも目立つ連中と居て、楽しそうで、騒がしくて。と、周りから思われているらしいのは、何となく知ってる。

 自分でも、バカ騒ぎしてるのが一番好きな人間だと、思っていたし。


 ――――……樹と話す時みたいに、穏やかに話すのが好きだ、なんて、最近、初認識したばかりで。

 最初に樹と話した時に、何でだか、自分がすごく穏やかで。
 その居心地が良かった。

 一緒に暮らして、さらに、その認識が深まって。

 穏やかに話すのが、楽で。
 樹とは、どれだけ一緒に居ても、疲れない気がする。

 無理をしなくても、楽で、居心地が良くて。
 それがこんなに、穏やかだなんて。
 最近、初めて知った。


「なあ蓮、イメージどんなの? こんなの?」

 樹が深緑の皿を手に持って、見せてくる。

「ん――――……形はこんな感じかなあ… 黒っぽいのがいいかと思ってたんだけど……緑もいいかも……」

「とりあえず黒も探してくるね」

 樹がそう言って、また店内をうろうろし始める。

 渡された皿をじっと見ていると。
 色々作りたいものが浮かんでくる。

 なんかオレ、ほんと料理人みたいになってきたな……。
 ふ、と、苦笑いしつつ。


「蓮ー、ここらへん? 黒いのって」
「ん」

 樹が見ている横に一緒にしゃがんで、2人で選ぶ。

「……じゃ、さっきの樹の持ってきたこれと、あと、この黒いの。買ってこ」
「うん」

 2人でレジに並ぶ。

「いくら? 半分だす」
「いいよ、オレが欲しかったんだし」

「でも……むしろオレが食べさせてもらうんだし」

 クスクス笑いながら、樹が皿の裏側の値段シールを見ようとしてくる。
 見せないように、しているのだけれど。


「一緒に買おうよ、蓮」

 そう言う樹に、多分もう聞かないなと思い、仕方なく頷く。

「蓮、なんか不満?」
 言いながら、樹がオレを見上げて、肩を竦めて笑う。

「…んな事ないけど」
「出すって言ってるんだから、その方が普通良くない?」
「――――……まあ……」

「……それに、2人で一緒に買ったって方が、なんか嬉しくない?」

 そう言う樹が、ふ、と楽しそうに笑っているので、結局そんな気になって、オレも、そうだなと頷いた。包んでもらった紙袋を受け取って、店を出る。

「早く料理したいなーとか、思うの?」
「思う。早く料理、のせてみたい」

「ほんと蓮、料理人みたい」

 クスクス笑って。

「おかげでオレは、めっちゃ毎日幸せだけど」

 178センチのオレより、樹はいくらか背は低い。
 一緒に並んでると、すこし下にある樹の頭。 茶色の髪がふわふわしてる。笑顔で何か言う時、必ず見上げてきて、顔を見ながら話す樹。

 可愛いとしか思えない顔で、そんなような事を言って、微笑む。


「――――……お前が喜ぶから、オレ、プロ化してってるんだけど」
「えー、じゃあもっと喜ぶことにするね」

 そしたらもっと美味しくなるのかー、すごいなー、なんて、楽しそう。


「樹、どーする、集合まであと30分あるけど」
「うーん。蓮はどうしたい?」

「コーヒー飲もっか」
「うん」
「歩きながら探そか」
「うん」

 二人で歩きながら、店を探す。

「そういえばさ」
「ん?」

「蓮のことを好きな子……とか、気になる?」

 珍しい、そういう恋愛話みたいなのを振ってくるの。
 そう思いながら、答える。

「……今は、なんねーかな」
「……今、は?」
「彼女欲しいとか、今あんまり思ってないから」
「……ふうん。そうなんだ。 あ、蓮、このカフェ、美味しそう」
「ん、いいよ、ここで」

 雰囲気の良い、カフェ。
 ドアを開けると、からん、とドアチャイムが鳴り響いた。

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