【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇そばに居る意味

「惚れてる」*玲央

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 照れてる優月と一緒にコンビニに入ると同時に、中に居た店員2人が、パッとこちらを見た。

「優月くん、こんにちは」
「と、こないだのイケメンくん」

 おばちゃん2人が、すごい笑顔になった気がした。

 こないだのイケメンくんって何だ……。
 そんな風に思いながらも、笑顔で軽く会釈すると、優月が笑いながら見上げてくる。

「優月くん、クロのえさ買いにきたの?」
「あ、はい」

 ぱ、と、優月が店員に視線を向けて、また改めて、笑顔。

「缶詰はさっきあげちゃったから、買うならおやつにしたら?」
「うん、じゃあそうしまーす」

 優月が返事をして、売り場に向かうので、その後をついて歩く。
 一番下の棚にあるので、優月が、すとん、と小さくうずくまった。


「今日はこっちにしよっと」

 すぐに味を決めて、優月が立ち上がる。


「買ってくるね」

 言いながらレジに向かおうとする優月に、買おうか、と言いかけて、止まる。多分これは、優月には要らないんだと思ったから。
 正直、いまいちどうしていいかよく分からない。

 今まで、持ってる方が払えばいいと思っていた。
 でも、優月が言っているのは、多分、そういう事じゃない気がする。

 お金持ちだから出してもらおうとか……これっぽっちも、優月の中に無いみたいで。……嫌がられたくないしな。気を使わせるのもな。

 ……って、ほんと、何を考えるべきかよく分かんねえ。

 出しても何も困らないし、オレが優月と居て楽しいから居るんだから、その間に払うものは、全部出すから気にすんな、と宣言でもしてしまうか。

 でもそうしたら、オレと居る時、優月は買い物をしなくなりそうな気がするし。
 
 さっき優月が気にしていた事が、何だか凄く気になってしまって、こんな事を、だらだら考えてる自分が、謎すぎる。

 レジの所で、店員のおばちゃん達と楽しそうに話してる優月を待っていると、買い終わったよー、とニコニコして近寄ってくる優月。

 ん、と頷き、めちゃくちゃこっちを見ている2人に会釈をしてから、自動ドアから外にでる。


「すげえ楽しそうに話すな?」

 思わず感心しながら言うと、優月が「そう?」とクスっと笑った。

「オレ、お店の人とか割とよく話すかな。地元の商店街、通り抜けるのにすごく時間かかるの。昔は毎日学校行くのに通ってたから、挨拶だけで済んだけど、今通るとすごい久しぶりだからさ」
「――――……らしすぎ」

 ぷ、と笑ってしまう。その様子が、目に見えるようで。

「……コンビニのおばちゃん達、玲央の事、超イケメンって、喜んでたね」
「ふーん。ていうか、入った瞬間、ほぼ直で言われた」
「あ、そうだね」

 苦笑いのオレに、優月が笑う。

「オレの地元、玲央と歩いたら、おもしろそう。皆すっごい寄ってくるんじゃないかな」

 ふふ、と笑いながら言って、じっと優月が見つめてくる。


「ん?」
「――――……ほんと、カッコいいよね、玲央」

 あまりにまっすぐに言われて、言葉に詰まる。


 言われ慣れて、生きてきたのに。
 ……何で詰まる、オレ。


「誰に似てるの? お父さん?」
「――――……じいちゃんの若い頃に似てるらしいけど」

「へー。おじいちゃん、今もカッコいい?」
「……あの年にしたらイイほうなんじゃねえかな」

「ふーん。じゃあ、玲央も、おじいちゃんになってもカッコいいんだね」

 そんな風に言った後、少し黙った優月。
 ふと見下ろして、顔を覗き込むと、にこっと優月が笑って見せた。

「どした?」
「ううん。おじいちゃんの写真見たいなーて、思ってただけ」
「じいちゃんの写真?……持ってねーな」
「……だよね。持ってたらびっくりする」

 優月がクスクス笑ってる。

 ……ほんとにその話だったか? 聞こうとした瞬間。

 
 ポケットでスマホが震えた。
 連続して3回。ほぼ同時に。

 スマホを取り出して、メッセージを開くと3件のメッセージ。
 タップして開くと。


「嘘でしょ、惚れてないつもりだつたの?」
「べた惚れの域」
「惚れてるかは自分で判断しろ。でも、過去ないレベルの執着」

 上から、勇紀、甲斐、颯也。
 さらに、勇紀から、爆笑してるキャラのスタンプが届いた。


「――――………っ」


 絶対ぇ、面白がってるな、あいつら。
 ――――……聞くんじゃなかった。


 何となく、返事は分かっていたのに、何で聞いたオレ。
 くそ。


 惚れてる、か。
 過去ない位の執着、か――――……。


 ……分かってたけど。
 思い切り、自覚させられた気がする。





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