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◇「恋人」
「幼馴染と」*優月 1
しおりを挟む「ありがと、智也」
ふ、と笑いながら智也を見上げていると。
智也は、ん、と頷いた。
それから、あーでもなあ、と苦笑い。
「美咲は、まだ会ってないだろ、神月」
「んー。そういえばなんか先週は、美咲とはあんまり会わなかったかなぁ。お昼に喋った時位だったかも。美咲、心配してる?」
「んー。……まあ、やっぱり、ちょっとしてるかな。見守るとか言ってたけどさ、優月といるとこ見てないし、心配なんじゃねえかな」
クスクス笑いながら智也が言う。
ふ、と笑いながら、そだよね、と頷いてしまう。
早く可愛い彼女紹介してね、とか。
美咲がたまに言ってた言葉が、浮かんでくる。
可愛い彼女、じゃなくて、
カッコイイ彼氏、になっちゃったしなあ。
やっぱり、心配、されちゃうのかもな。
――――……まあ。
オレだって今も、男同士でとかは、不思議な位だから。
しかも、あんなにカッコ良すぎる、なんだか別世界の人とだし。
ゆっくり分かってもらえばいいのかなあ。
なんて思いながら、食堂に入り、美咲を探す。
「どこだろ、美咲……奥の方かな」
言って智也を振り返ったその時。
「優月、智也ー」
奥の方で、美咲が手を振ってる。
あ、居た。
すぐ近づいて行って、「おはよ、美咲」と笑いかけると、「おはよ」とすぐ返ってきたのだけれど。そのまま、じーーっと見つめられる。
「美咲?」
どうしたの?と笑顔で見つめ返すと。
少しして美咲は、ぷ、と笑って、良かった、と言った。
「良かったって?」
「――――……週末、なんかちょっと心配になっちゃったの。ほんとにいいのかなあとか。大丈夫なのかなあとかさ。でもなんか、今見たら、優月が超笑顔だから」
「――――……」
「なんか、大丈夫なのかなって、思ったから。 もういいや」
そんな事を言って、美咲は立ち上がった。
「とりあえずごはん買いに行こ。週末も色々あったんでしょ? 話は食べながらしよ」
今日の美咲は、横の髪を後ろにクルクル巻いてとめてる。耳が出てるから、ピアスの青い石がキラキラ光ってて、とっても綺麗。
もう安心した、とか言いながら、キラキラ笑顔の美咲に、横に居た智也と顔を見合わせて、ふ、と笑ってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇
「てことは、もう神月玲央にセフレ居ないの?」
セフレの所だけ超小さく言って、美咲がオレを見つめる。
「うん。連絡して、やりとりしてくれたみたい」
「皆納得したの?」
「それは……どうだろ。本気で玲央を好きな子は、まだ諦めてない、かもだし…… それは分かんないけど」
「――――……でも神月玲央にはもう、その気はないってこと?」
「……ないと思う」
そっか、と美咲が頷く。
ごちそうさま、と手を合わせて、トレイを前から避ける。
「良かったね、優月」
「うん」
「それ、すっごく気になってたの、あたし」
「……うん」
まあ。そう、だよね。うん。
「んー、これで、優月の初恋人が、神月玲央かー……」
「うん。……彼女じゃなかったけど、ね」
「ん? ……あ。 あたしがずっと初彼女紹介してって言ってたから?」
クスクス笑う美咲。
「いいよ、優月が幸せならいいんだし」
「……ありがと」
「あ。そう言えば、蒼さんも神月玲央に会ったんでしょ?」
「うん」
「何て? 良いって?」
智也や美咲は、蒼くんがオレの学園祭とかに来た時に知り合ってるし、その後も何回か会ってる。
美咲は完全に、蒼くんのファンだったりする。
「蒼くんは――――……初恋、頑張れって」
そう言ったら、美咲と智也は顔を見合わせて、ふ、と笑った。
「良かったね。蒼さんに反対されたら、ちょっときつかったでしょ?」
美咲のセリフに、うん、と頷く。
「それはほんとに良かった。 なんか蒼くん、玲央にちょっと優しいんだよ。あいつはこう言うだろ、とか言っちゃうし。 不思議」
「でも蒼さんが言うのはあたってんだろ?」
「そーなんだよねえ。ほんとに不思議で」
頷きながらそう言うと、2人は面白そうに笑う。
「ねえ、優月? 神月玲央って、蒼さんにヤキモチ妬かないの?」
すごく楽しそうにそう言われて。
美咲が、最初に突っ込むのがそこなんだなあ、と思うと。
なんか面白いけど。
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