【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
774 / 856
◇希生さんちへ

「困ってしまう」*優月

しおりを挟む

 玲央と廊下に出て、二人になると、玲央がクスクス笑う。

「優月にちゃんとお風呂の場所教えてないだろ。一人で行くとか」
「そうだけどー」
「だけど?」

 玲央が楽しそうに笑って、オレを見つめる。

「玲央と蒼くんが恥ずかしいんだもん」
 むむ、と眉を寄せて見上げると。

「何で?」
 と聞かれる。

「お風呂でのぼせるようなことするみたいな……」
「何でそれが恥ずかしいの?」
「え」
「ん?」

 じー、と見つめられて、玲央が真顔なので、ふ、と首を傾げてしまう。

「普通にのぼせないようにって言っただけだろ?」
「……ん。まあ……??」
「何? 優月は何考えたんだ?」
「――――……何も考えて、なぃ……」

 だんだん小さくなるオレの声。

 ……あれ?? 変な意味なのかなと思ったんだけど、違った??
 てことはオレってば、普通のセリフに勝手に恥ずかしくなったとか?

「……えっと……」

 ……わーん、すっごい恥ずかしい……。
 オレは玲央から視線を外して、俯いてテクテクひたすら歩いてると。
 横で、玲央がふっと笑う気配。

「……?」
 おそるおそる玲央を見ると。玲央ときたら、向こうを向いて、何だか震えてる。ピン。と来て。

「……もー!」
「ごめんごめん」

 あは、と笑って、玲央がオレを見つめる。

「あってる。蒼さんもそういう意味で言ってたんだろうし、オレもそういう意味で答えたから」

 クスクス笑いながら、玲央はオレの頭をよしよしする。

「もう、玲央……」
 ものすごく、恥ずかしかったせいで、何だか文句すら咄嗟に出てこないし。

「真っ赤だし。……可愛い」

 肩掴まれて、くい、と引かれて、ちゅ、と頬にキスされる。

「ごめん。可愛すぎて」
 クスクス笑いながら、玲央がオレの手を引く。

「お風呂こっち」

 玲央に連れられて、あるドアを入ると。
 ……個人宅のお風呂というよりやっぱり、旅館みたいな。

 中のバスルームへの扉を開けると、めちゃくちゃ湯船おっきい……。

「これ、玲央一緒に入れるよ?」
「入れるけど……絶対触るから、やめとく」
「――――……」

 またしても咄嗟には返せない。

「あれ。優月、下着とかは?」

 そう言われて、何も持たずにここに来たことに気づく。

「あ。忘れた。ていうか、お風呂グッズ何も持ってきてない。何しにきたんだろ……」

 部屋から逃げてきたからなあ、と苦笑いしながら。

「取りに戻らないと」
「いいよ。取ってきてやる……と思ったけど……」

 玲央が、脱衣所に置いてあったかごを見て、「これ着ていいみたいだな。下着も新しそう」と言う。

「まあ、一応聞いてくる」
「うん。ありがと」
「行ってくる――――……あ。忘れてた」
「ん?」

 離れかけた玲央が、戻ってきたと思ったら。
 ぐい、と手を引かれて、ちゅ、と唇が重なる。

「……ん、ん……っ」

 舌が口の中に入ってきて、絡んでくる。

「ん……ふ」

 玲央の腕の中にとらわれるみたいな感じでしばらくキスされて、ゆっくりと離れる。は、と息をつきながら、玲央を見上げると。


「二人になったらキスしないと」
「……」

 くす、と優しく笑う玲央に、きゅ、と、胸が弾む。


「入ってな」
「うん」

 よしよし、と撫でると、玲央はドアを開けて出て行った。
 撫でられた頭に何となく触れてしまう。


「……はー。もう……」


 ほんと、強烈、だなぁ……。
 なんか。熱い、口。


 息も、熱い。

 なんかさ……もっとしてほしく、なっちゃうんだよう……。
 玲央はキスして、けろっとしてオレから離れるけど。

 ……なんか、今日何回か、キスされて。
 はー。

 ……オレの方が、そういうこと、して欲しくなっちゃってるみたいで。
 なんか、困ってしまう。





しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...