【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
775 / 856
◇希生さんちへ

「意識」✳︎優月

しおりを挟む


「……きもちーなぁ……」

 髪の毛と体を洗ってから、めちゃくちゃ広い湯船に浸かる。
 思わず、声が漏れた。背中を湯船に寄っかからせて、そのままぼー、と上を見上げた。

 ……玲央のおじいちゃんのところで、お風呂入ってます、て言ったら、母さんとか双子たち、きっとすごく驚くだろうなあ。父さんはまだ意味分かんないかな。
 しかも、そのおうちが、こんな感じだって知ったら……特に双子たちは、大騒ぎかも。くす、と笑ってしまう。

「優月ー?」
 外から玲央の声が聞こえてきたので、はーい、と答えると。

「服も下着も、優月の用意してたやつだから着ていいって」
「あ、うん。ありがとう」

 そう言うと、バスルームのドアが開いて、玲央が顔をのぞかせた。

「風呂、どう?」
「ん……めちゃくちゃ気持ちいい」
「そっか」

 ふ、と笑って玲央が頷く。

「……玲央も入ったら?」

 そう言うと、玲央は、ふ、と笑ってオレを見つめる。

「……まあ、なんか、一緒に入ってきちゃえば? とは言われた」
「うん」
「頑なに断るのも変かなーとは思ったけど」

 玲央が苦笑い。

「……あーでも、優月がそこでそうやって埋まってくれれば、入れるかも」

 ……確かに今オレ、完全に、全部埋まってる。
 乳白色の入浴剤が入ってるから、顔しか見えないだろうし。
 うんうん、と頷くと。玲央は、ふ、と笑いながら、上を脱ぎ始めた。

「もういいや。気にしないで入ることにする」

 そんなことを言って、クスクス笑う。

 ……ドキ。
 玲央が上半身裸になって、そのままズボンのベルトにも手をかける。
 弾んだ心臓に、オレは玲央から目を逸らして、ぶくぶくと口元まで、お湯に沈んだ。


 ……ていうか、あれだよね。今のオレは、玲央からは見えないから確かに玲央は良いんだろうけど。
 オレから全部見えちゃうじゃんね……。

 ――――……ほんと。カッコイイなあ、玲央。

 特に隠すこともなく。……ていうか、玲央は最初からそうだったけど。
 全然隠すことなく、中に入ってきて、シャワーを浴び始める。

 ぶくぶくぶくぶく……。
 鼻で息をしたまま、なんとなく視界に入ってくる玲央に、ずっとドキドキしてしまう。

 入っていいよーとか言ったけど。
 ……なんだか、へんに、緊張。
 

 なんかこうして考えてると……オレってば……すっごい意識しちゃってるなあ。むむ。
 なんかもう。

 ……玲央がさ。キスとか、すごく上手でさ。
 玲央とするまでは何にもしたこと無かったけど、もう今となっては。

 玲央とくっつくと気持ちいいことを、オレは知ってて。
 ……なんかもう、玲央が意識してないのに意識しちゃうとか。

 わーん、なんか。
 ……オレの方が、やらしい……みたいな気がしてくる……。

 ぶくぶくしてると、ぷっと笑う気配がして、見上げると、玲央がクスクス苦笑している。

「何してンの? 可愛いんだけど」

 のびてきた腕に、よしよし、と頭を撫でられる。

 濡れてる玲央は、もうまた、ほんとに。カッコいいんだよう……。
 カッコいいを、存分にまき散らすの、セーブしてくれないかな。

 ……んー。考えてることは、あんまり可愛くないのだよう、玲央。
 もう、ドキドキしてしまう……。
 




しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...