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入学式7

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「話聞いてた!?・・・もうわかるでしょ?透視、 盗聴、ハッキング」
「ん?あ、あのさ・・・」 
ちょっと考えて思った。
「何?」
「それ、ストーカーって言わない?」
「はぁ!?ぼくの能力だって言ってるでしょ!?」
「いや、覗きは良くないよ」
「ストーカーじゃない!見てただけだよ!」
「みんなそう言って言い訳するんだって知ってる?」
「だから、違うって!」
「でも・・・」
怪しい・・・。ひょっとしたら着替えまで見てたりするんじゃ・・・。年上としてちゃんと注意しなきゃ・・・!
「何その目!見守ってただけだから!」
「ストーカーはみんなそう言って・・・
「わかった!じゃあもう心配しない!」
「え?心配してくれてたの?」
ヤマブキ君は頬をポリポリと人差し指でかく。
「・・・だ、だってきみ、ため息ばっかりついてるし、即刻ヤバい先輩に絡まれてるし・・・」
あーまぁ、確かにイベリスさんはヤバい人だね。君も似たり寄ったりな気がするけど・・・
「そっか・・・。2人とも悪い人じゃないから大丈夫だよ。ありがとね、ヤマブキ君」
なんだかグッタリしてるのが可愛いく思えてフードの頭をナデナデしてみた。
「・・・・・・っ!はぁ・・・やっぱりきみは、ぼくまでタラシ込むつもり?ぼくはそんな光人間の眩しいきみとは住む世界が違うの!」
手は払われなかった。ようやく目が合った蛍光の眩しい黄色だ。
「え?これから同じ寮暮らしだよ?」
ヤマブキ君はうなだれてされるがままだったけどバ ッと移動してドアに隠れた。
「だ!男子と女子の境があるでしょう!?そ、そう いう意味だや!」
「え?今噛んだ?」
「あ、揚げ足取らないでよ!もういいでしょ!?じ ゃ、これきゃらよろしきゅね!」
ドアをバタンと閉めてしまった。ここが彼の部屋みたいだ。
「また、噛んだ?」
「う、うるしゃい!!」
またまた噛んだけど、それっきり反応が無くなっちゃった。

「ふふふっ。よろしく」 
「・・・・・・よろしく・・・」
ヤマブキ君は部屋に閉じ籠ってしまったけど、答えてはくれた。う~ん、可愛いんだけど、ちょっとストーカー気負が怖いな・・・

「顔合わせは終わったか。引きこもり2人ともきちんと会話できたんだな。あの2人が・・・珍しい」 
先生は意味ありげにニコリと笑った。
「先生、もっと優しく・・・」
「俺、優しくないか?」
「・・・!」
もう!この先生が担任だと苦労するよね この人はZクラスの担任で寮監のフクジュ先生。入 学式で頭を抱えてた先生で保健室の先生だ。眼鏡をかけた白衣のイケメンだし、にこやかなんだけどち ょっと、イヤ、かなりのドSだ。

何だろう?先生にじっとり見られてる視線は頭かな?
「・・・・・・先生?なんか近づいてないですか?」
何なの!?私何かした!?
「・・・・・・ん?」
あ、目があった・・・って!かお、顔近い・・・!!
「ふ、フクジュ先生!?」
「・・・なるほどな、それが能力か」
先生はそう言ってすぐ離れた。
「・・・え?何ですか?」
「いや、何でもない」
一体何だったの!?

その時、先生がドタンと音をたてた。
「いたあっ!なんですか?転んじゃいましたぁ!」
「ん?先生の足元、床がそこだけ腐ってる!?」
「ボタンさん、痛いじゃないですかぁ!あ、ケータ イが熱っ!ヤマブキ君ですね!」
「2人を怒らせたからですよ・・・」
先生から小さな汗が見える。年齢も幼くなったようだ。自業自得ってヤツだ。でも、先生って二重人格なの?

「あ、空いた底から失くした水晶のペンダントが!良かったぁ!」
「あ、先生の能力って、ひょっとして・・・」
「はい。ぼくの能力は幸運と不運。ラックなんですよ」
「あははっ!せ、先生!そ、その顔なんで・・・!!」 
眼鏡が外れて目が3になってる!!
「あははははははっ!」
「・・・・・・!笑ってないで眼鏡くださいよ!」
「あははっ!ご、ごめんなさブフっ!」
ダメ、見るたびに笑っちゃう!!

「パパ、眼鏡はここですよ!」
「あ、ありがとうございます。カスミ」
先生はようやく眼鏡を受け取ってかけた。
「うわぁ!可愛い!カスミちゃんて言うの?・・・ってパパ!?」
「はい!フクジュがいつもおせわになっております」
「あ、どうもご丁寧に。こちらこそよろしくお願いします」 
ペコリと頭を下げて合わせてお辞儀してしまった。 しっかりしてるなぁ・・・ ヒヨコみたいなウェーブした柔らかい金髪は肩まででハーフアップにしてる。黄色にも水色にも見える色が薄くてわかりにくい瞳だ。幼稚園かな?妖精さんみたいに可愛い!

「パパはお世話する側だ!」
「って!先生がパパ!?」
確かに、フクジュ先生は首下のサイドで緩く結んでいるからわからなかったけど、ウェーブした金髪はカスミちゃんと髪質が同じだ。先生の金髪は色がシャーベットみたいだったからわかりにくかった。黒なのに白っぽく見える不思議な瞳だ。

眼鏡をかけた先生はやっぱりイケメンだ。かけた方がイケメンなんてぶぷっ!
「はい。カスミ、これ見つけたぞ」
「あ、ありがとパパ」
ん?なんだろこの空気・・・?

「あ、お姉ちゃんだね!」
「え?」
カスミちゃんはパアッとしたような顔で見上げてきた。
「あのね、カスミは占いができるの!きのう占ったらお姉ちゃんね、このがっこうでいっしょうなかよ しなひととあえるよ!」
「いっしょうなかよし?」
「うん、いっしょう!」
「そ、そう・・・?」
え~っと?困っていたらフクジュ先生が得意げだ。
「カスミの占いは百発百中だぞ」
「そう!凄いんだね~」
このくらいの頃っておまじないとか占いとか好きになるんだよね~。ナデナデしちゃう!
「お姉ちゃん信じてないでしょ!じゃあ、お姉ちゃんがだれと一番仲良くなりたいか、カスミに教えて?占ってあげるから!」
「え?」
「あ、でもそのすぐ後にこのペンダントなくしちゃったから、邪魔があるかもね。タオルで拭かなきゃ」
先生はそのタイミングで立ち上がった
「さて、挨拶も済んだしゆっくりしてていいぞ。面倒だから問題起こすなよ!」

「ば、パパ?」
「仕事残してるから学校に戻る・・・」
「うん・・・」
「あ、それと・・・・・・」
フクジュ先生はカスミちゃんに何か伝えた。
「うん、わかった!」
「・・・?」

カスミちゃんは向き直る。
「さて、お姉ちゃん、いちばんなかよくなりたい人は?」
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