記憶喪失から始まる青春 〜目が覚めたらクセが強い女の子たちに絡まれ始めた件〜

Taike

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1年生編

期末テスト大作戦

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-side 田島亮-

「ねえ、1ヶ月後の期末テストで点数勝負しない?勝った方が負けた方の言うことを何でも聞くって条件で」

 岬家を訪れた翌日の朝、俺が登校して席に着くと隣の席の仁科がいきなり勝負をしかけてきた。どこのポ◯モントレーナーだよ。

「急にどうしたんだ?」

「ほら私達って特待生だし、結構バカじゃん?競争したらお互い点数が上がるんじゃないかなって思って」

「いや、お前駅伝で結果残してるらしいし別に点数上げる必要ないんじゃないか? あと俺放課後に毎日補習受けることになってるからお前よりは良い点取れる思うぞ?」  

「うっ...」

 仁科が下を向いて黙り込んでしまった。なぜかめちゃくちゃ動揺しているようだ。なんだ? よくわからんがそんなに俺と勝負したいのか?

「まあいい。受けて立とうじゃないか」

「やったぁ! よし、決まりね! いいわね、負けた方は言うこと何でも聞くんだからね!」

 俺が勝負を受けると仁科は目をキラキラさせて喜んでいた。なんだよ、なんか子供みたいでかわいいじゃねえか。

 それにしても負けた方は言うことを聞くってのを強調するのはなぜなのか。勝負に勝って女の子に言うこと聞かせるのも、勝負に負けて女の子に命令されるのも俺にとってはご褒美でしかないぞ? この勝負俺のリスクゼロじゃん。

 まあ意識してテスト対策しなくても勝てるだろ。あいつは駅伝部の練習で忙しい。それに加え俺は毎日補習を受けている。負ける要素が無い。さあてどんな命令をしてやろうかな、ふっふっふ。

 特にこの勝負のことを深く考えなかった俺は期末テストまでの1ヶ月間を大して勉強することもなく過ごした。


-side  仁科唯-

 田島に勝負を受けさせることができた。計画第1段階は完了ね。でも田島が補習を受けているのは誤算だったわ。今まで田島にだけは点数負けたことなかったから今回も余裕で勝てると思ってたのに...

 まあいいわ。それなら私がいつもより勉強すればいいだけよ。部活は忙しいけど帰ってから家で集中して勉強すればきっと田島にも勝てるはず。

 どうしてもこの勝負に勝ちたかった私はテストまでの1ヶ月間、部活と睡眠以外の時間を全て勉強時間に当てて過ごした。


-side  田島亮-

 仁科の宣戦布告から約1ヶ月後、期末テストの日がやってきた。もう12月だということもあり、教室の中もかなり寒い。正直こんな環境でテスト受けるなんて憂鬱だ。

 しかし隣の席の女はやる気に満ちている。

「ふっふっふ。田島、ついにこの日が来たわね。私絶対負けないから」

「はいはい、分かった分かった。お前のやる気はよく分かったからさ、そろそろ俺と喋るのやめて前向けよ。テスト始まるぞ」

「なによ、スカしちゃって」

 俺に軽くあしらわれた仁科は頰をぷくっと膨らませて前を向いた。

「そろそろ時間だな。では問題冊子と回答用紙を配る。合図をするまで問題冊子は開けないように」

 テスト開始時刻になり、柏木先生の指示が教室に響き渡る。

 こうして期末テストが始まり、俺たちはこの日から3日間テストと戦い続けた。




---------------------------

 


 今日は12月20日。二学期終業式の日であり、同時に期末テストの結果発表の日でもある。

 天明高校は終業式の日に玄関で生徒全員の期末テストの順位を掲示する。つまり俺たち天明高校の学生は登校すると同時に学年全員の期末テストの順位を知ることになるのだ。おい、プライバシーとかないのか。俺みたいなバカにとっては公開処刑以外の何物でもないぞ。

 まあそういうわけで登校した俺は今玄関で必死こいて自分の名前と順位を探しているのである。

 あ、あった。270人中220位か。まあ俺にしては上出来だろ。補習のおかげだな。駅伝部にいるころは学年最下位になったこともあるって柏木ちゃんが言ってたしな。

 朝のHRまで時間あるし他の奴らの順位も見てみるか。まずは翔の順位を見てみよう。新島翔...新島翔...あ、あった。うわ、270人中260位かよ。俺と一緒にバカ仲間やってたのって本当だったんだな...

 次は咲の順位でも見るか。お、あった。すげえな、270人中33位か。今度あいつの家で勉強教えてもらおうかな。
...まあ俺退院以降あいつとまともに会話してないんだけどな。

 次は岬さんの順位を見ようかな。えーと、岬さんは...へ!? 270人中1位!? あの子そんなに頭良かったのか!? ここって進学校だよな? めちゃくちゃすげえじゃん。今度勉強教えてもらおう。岬さんの家に行った後は結構SNSでメッセージのやりとりしてるし頼めば普通に教えてくれそう。

 よし最後は仁科の順位を見てやるぜ。どうせ250位くらいだろ...あれ? おかしいな? 200位台に仁科の名前が無いぞ?

「へっへーん、残念だったな田島! 私は145位。あんたは220位。よって私の勝ちぃ!」

「痛い! 痛い仁科! 離して! お願い!」

 順位表から仁科の名前を探していると、後ろから駆け寄ってきた仁科唯本人から急にヘッドロックを喰らった。やめて、首が超痛い。あとさっきからあなたの豊かな胸が側頭部に当たってるんだが。痛いのと柔らかいのとで俺の感覚が迷子になるわ。お願いだから離れて。

「あ、ごめん。田島に勝ったのが嬉しくてついヘッドロック決めちゃった」

 そんな軽いノリで技決めんなよ。まあちょっと良い思いしたから許すけど。

「とにかくこれで私の勝ちね!」

「ああ、完敗だ。お前すげえわ。どんだけ勉強したんだよ」

「えっへん。もっと褒めてもいいのだぜ?」

 そう言って仁科は得意げに胸を張った。
...おい、目のやり場に困るからそのポーズやめろ。

「ところで俺はお前の言うことを何でも聞くことになったわけだけどさ。お前は俺に何をさせるつもりだ?」

「それは放課後のお楽しみ♪」

「いや全然楽しみじゃないから今言ってくれ」

「別に今じゃなくてもいいじゃん。敗者は勝者に従いなさーい」

「へいへい、じゃあ放課後聞きますわ」

 そして俺たちは2学期最後のHRを受けるべく1年6組の教室へと向かった。



---------------------------



 終業式は特に何の問題もなく終わった。仁科に何されるのかが気になって校長の話は全く頭に入らなかったけどな。まあ俺普段から校長の話聞いてないから別に良いんだけど。

 放課後、俺は仁科と共に体育館裏へと向かった。よくわからんが今回俺に下す命令はそこで実行するそうだ。

 体育館裏に着くと仁科は地面に座り込んだ。

「なあ仁科、こんなとこにまで連れてきて俺にさせたいことって何なんだ?」

「ここで私の話を聞いて。それが私が田島にさせたいこと」

「そんなことでいいのか? もっとエゲツないことやらされると思ってたんだが」

「私をなんだと思ってるのよ。いいからこっちに座りなさい」
 
 仁科は彼女の右隣の地面をポンポンと叩いて俺を招いている。

「じゃあ失礼します」

 俺は仁科に促されるがままに彼女の隣に座った。

 ...この状況冷静に考えなくてもやばくないか?
人目が全然無いところで女の子と隣り合って座ることになるなんて思ってなかったんだが。ちょっと待ってなんか緊張してきた。今から俺どんな話されるんだ!?
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