99 / 328
クイオトコ
第九十八話 根回し2
しおりを挟む
「~という訳でよろしいですね」
「うむ。少し性急すぎないか?」
俺の報告を聞き終えデスクに鎮座する五津府が顎を擦りながら答える。
アポイント無しで朝一に五津府の執務室を訪ねたが、意外にも重役出勤など気取らず在席し、更に意外にも直ぐに話を聞いてくれた。上司を一つ飛び越えたよろしくない行為だが、時間が無く遅れて出勤してくるという如月さんを待てなかったので仕方が無い。それでも、会ってくれたことで、上司を飛び越えるより更にやってはいけない独断専行をしないで済んだ。
「間を空けて準備をすれば情報は漏洩し逃げられます」
これが俺が如月さんを待てなかった理由。更にいえば既に田口に命じて署員に捜査には出ないで署で待機させておくように命じている。
「それでもだ。関係各所からの反発は大きいぞ。特に裁判所の許可は間に合わない」
裁判所の許可は出ても、関係各所というか警察の他部署の反発は大きいだろう。だが今はいちいち根回していく時間は無い。強襲に近いことをするので足を引っ張る時間は与えないが、その後に必ず横槍が入るくらいならまだ良いが、手柄をかっ攫らおうとする奴らも出てくるだろう。そういった後々の面倒ごとを引き受けて貰いたいが為に煩わしいと思いつつも俺は上司に報告するのだ。
「ならば一等退魔官の権限で動きます。
問題有りませんね?」
魔に関する事件においては、捏造すら許されるのが退魔官。全ては社会安定の為、法にすら優先されるのが退魔官の判断。退魔官権限で行うことの是非は、法廷では裁かれない。全ては警察機構の中で内々に処理される。
「なら最初からそうすればいい、なぜ私の所に来た?」
「緊急時なら兎も角、上司に事前に連絡して許可を貰うのが、そんなに不思議ですか?」
ホウレンソウが大事とはどのビジネス書にもある基本。
「君は私が反対すれば大人しく諦めるタイプだとは思わないがな」
「私はそこまで傲慢じゃ有りませんよ。
所詮非力非才の凡人、自分一人の視野で突っ走れば崖にダイブしかねません。勿論信念はありますので簡単には引きませんが、納得する理由があれば引きます」
「君はつくづく官僚が似合うな」
溜息交じりに言われたが、褒め言葉と受け取ろう。
「分かった、仮にも事前に私に報告してきたんだ出来る限りの根回しはするし、後のごたごたも出来るだけ抑えよう。思い切りやり給え」
「ありがとうございます。
そしてもう一つ甘えたいのですが」
「なんだね?」
「如月警視を私のサポートとして付けて欲しいです。無理でしたら他のベテランでも構いません」
朝一でいないことから如月さんは何かの仕事で手が回らない可能性があるが、考えようによっては都合が良い。助言は貰うが手柄は俺が貰う、こんなジャイアニズム溢れることをするつもりなんだ、今後の付き合いもある如月さんじゃない方が色々考慮しないで済む。
「五月蠅い監督役が欲しいとは変わっているな」
「サポートですよ。これでも初めてで震えているんですよ」
よく言うぜ、狸親父が若い退魔官の暴走を懸念しないはずがない。ここで俺が言い出すまでもなく鈴は付けようとするだろう。だったら先手を打って、影で見張られるよりかはサポートとして来て貰い働かせた方が効率が良い。
それにだ。政治的に公安を嚙ませておいた方が、後々の弾除けにも使える。
「ふっはは、君にそんな可愛いところがあるとは思わなかったな。よかろうサポートは付けよう。直接行かせる」
「ありがとうございます」
俺は頭を深々と下げるのであった。
「~という訳で、急で悪いが護衛役として旋律士を今すぐ一人派遣して欲しい」
俺は五津府の執務室を出た足で、そのままアポイント無しで前埜の事務所を訪れていた。
「急すぎる。護衛として旋律士を望むなら、遅らせることは出来ないのか?」
前埜は当然の反応で渋い顔をする。
「それでは逃げられる。間に合わないのなら掻き集められた戦力で実行するまでだ」
「ならなぜキョウや時雨を使わなかった? 彼女達ならそのまま投入できたはずだ」
「学校があるだろ? 彼女達を落第させる気か?」
「今更君がそれを言うか。本音は何だ?」
前埜が俺を睨み付けてくる。俺が彼女達を使わない本当の理由を言うまで引く気はないことが覗える。
言えば過保護と笑われるだろうが、彼女達を関わらせたくない。今回の件、人間の闇が深すぎる。
「今回の件に関してユガミや魔がいる可能性は低い。ならばだ他の旋律士を知ってみる余裕があると言うことだ。
今後の為の人脈作りだよ。
退魔官とは野球でいう監督みたいなもの、数々の手駒を用意し投入できなくてはならない。キョウや時雨しか知らないでは、いずれ手詰まりになる」
これもまた頭の片隅にある本音。本音ではあるので前埜も煙に捲ける。
「それが貴方の覚悟なのですね。
いいでしょう、若き退魔官を育てるという意味で、少々無理をします。なに、前回みたいな特殊条件は無いんですから、一人くらい空いている旋律士がいるでしょう」
「ありがとうございます。
それで今更なんですが」
「何かな?」
「紹介手数料は幾らなんだ?」
「うむ。少し性急すぎないか?」
俺の報告を聞き終えデスクに鎮座する五津府が顎を擦りながら答える。
アポイント無しで朝一に五津府の執務室を訪ねたが、意外にも重役出勤など気取らず在席し、更に意外にも直ぐに話を聞いてくれた。上司を一つ飛び越えたよろしくない行為だが、時間が無く遅れて出勤してくるという如月さんを待てなかったので仕方が無い。それでも、会ってくれたことで、上司を飛び越えるより更にやってはいけない独断専行をしないで済んだ。
「間を空けて準備をすれば情報は漏洩し逃げられます」
これが俺が如月さんを待てなかった理由。更にいえば既に田口に命じて署員に捜査には出ないで署で待機させておくように命じている。
「それでもだ。関係各所からの反発は大きいぞ。特に裁判所の許可は間に合わない」
裁判所の許可は出ても、関係各所というか警察の他部署の反発は大きいだろう。だが今はいちいち根回していく時間は無い。強襲に近いことをするので足を引っ張る時間は与えないが、その後に必ず横槍が入るくらいならまだ良いが、手柄をかっ攫らおうとする奴らも出てくるだろう。そういった後々の面倒ごとを引き受けて貰いたいが為に煩わしいと思いつつも俺は上司に報告するのだ。
「ならば一等退魔官の権限で動きます。
問題有りませんね?」
魔に関する事件においては、捏造すら許されるのが退魔官。全ては社会安定の為、法にすら優先されるのが退魔官の判断。退魔官権限で行うことの是非は、法廷では裁かれない。全ては警察機構の中で内々に処理される。
「なら最初からそうすればいい、なぜ私の所に来た?」
「緊急時なら兎も角、上司に事前に連絡して許可を貰うのが、そんなに不思議ですか?」
ホウレンソウが大事とはどのビジネス書にもある基本。
「君は私が反対すれば大人しく諦めるタイプだとは思わないがな」
「私はそこまで傲慢じゃ有りませんよ。
所詮非力非才の凡人、自分一人の視野で突っ走れば崖にダイブしかねません。勿論信念はありますので簡単には引きませんが、納得する理由があれば引きます」
「君はつくづく官僚が似合うな」
溜息交じりに言われたが、褒め言葉と受け取ろう。
「分かった、仮にも事前に私に報告してきたんだ出来る限りの根回しはするし、後のごたごたも出来るだけ抑えよう。思い切りやり給え」
「ありがとうございます。
そしてもう一つ甘えたいのですが」
「なんだね?」
「如月警視を私のサポートとして付けて欲しいです。無理でしたら他のベテランでも構いません」
朝一でいないことから如月さんは何かの仕事で手が回らない可能性があるが、考えようによっては都合が良い。助言は貰うが手柄は俺が貰う、こんなジャイアニズム溢れることをするつもりなんだ、今後の付き合いもある如月さんじゃない方が色々考慮しないで済む。
「五月蠅い監督役が欲しいとは変わっているな」
「サポートですよ。これでも初めてで震えているんですよ」
よく言うぜ、狸親父が若い退魔官の暴走を懸念しないはずがない。ここで俺が言い出すまでもなく鈴は付けようとするだろう。だったら先手を打って、影で見張られるよりかはサポートとして来て貰い働かせた方が効率が良い。
それにだ。政治的に公安を嚙ませておいた方が、後々の弾除けにも使える。
「ふっはは、君にそんな可愛いところがあるとは思わなかったな。よかろうサポートは付けよう。直接行かせる」
「ありがとうございます」
俺は頭を深々と下げるのであった。
「~という訳で、急で悪いが護衛役として旋律士を今すぐ一人派遣して欲しい」
俺は五津府の執務室を出た足で、そのままアポイント無しで前埜の事務所を訪れていた。
「急すぎる。護衛として旋律士を望むなら、遅らせることは出来ないのか?」
前埜は当然の反応で渋い顔をする。
「それでは逃げられる。間に合わないのなら掻き集められた戦力で実行するまでだ」
「ならなぜキョウや時雨を使わなかった? 彼女達ならそのまま投入できたはずだ」
「学校があるだろ? 彼女達を落第させる気か?」
「今更君がそれを言うか。本音は何だ?」
前埜が俺を睨み付けてくる。俺が彼女達を使わない本当の理由を言うまで引く気はないことが覗える。
言えば過保護と笑われるだろうが、彼女達を関わらせたくない。今回の件、人間の闇が深すぎる。
「今回の件に関してユガミや魔がいる可能性は低い。ならばだ他の旋律士を知ってみる余裕があると言うことだ。
今後の為の人脈作りだよ。
退魔官とは野球でいう監督みたいなもの、数々の手駒を用意し投入できなくてはならない。キョウや時雨しか知らないでは、いずれ手詰まりになる」
これもまた頭の片隅にある本音。本音ではあるので前埜も煙に捲ける。
「それが貴方の覚悟なのですね。
いいでしょう、若き退魔官を育てるという意味で、少々無理をします。なに、前回みたいな特殊条件は無いんですから、一人くらい空いている旋律士がいるでしょう」
「ありがとうございます。
それで今更なんですが」
「何かな?」
「紹介手数料は幾らなんだ?」
0
あなたにおすすめの小説
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
都市街下奇譚
碧
ホラー
とある都市。
人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。
多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか?
多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。
忌憚は忌み嫌い避けて通る事。
奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。
そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる