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パーティー中の来訪者
しおりを挟む今日は自宅でクリスマスパーティー。
来年から寄宿学校に入る息子と夫、そして夫の両親と一緒に、大きなローストチキンにクリスマスプディングを囲んで家族水入らずの時間を楽しんでいた。
そこに聞こえた唐突なベルの音。
「あら、お客様かしら?」
一人で玄関に向かいドアを開けると、身なりの派手な若い女性が立っていた。
少し濃いメイクに身体のラインを強調するようなワンピース。そして、むせるようなパルファムの香り。
時々主人からする、あの匂いだ。
「えっと……貴女は?」
「私はテオの恋人よ。ねぇ、彼は居るの?」
「え?……主人の……?」
玄関に立つ女性を驚いた表情で見ていると、彼女は自信ありげに腕を組みほんの少し胸を反らした。
「ふーん、話に聞いた通り、本当に鈍くて野暮ったいのねぇ。もういい加減テオと別れたら?テオはもう妻になんか愛情は無いって。仕方なく一緒に居るんだって言ってたわよ」
「主人から別れを切り出されたことはありませんが……」
彼女は私を小馬鹿にしたように鼻で嗤う。
「フンっ、知らないのね?息子がいるから貴女と一緒にいるだけよ。ねぇ、本当は知っているけど、気づかないふりしてるだけでしょ?テオの気持ちはもう離れてるって。愛されてもいないのに、いつまでもテオにしがみついてて、惨めにならない?」
「……分かりました。主人を呼んで来ます」
悲しげに目を伏せる私を見て、女性は勝ち誇ったように笑った。
くるりと女性に背を向け今度は私が笑う。
「あなたー、お客様よー!」
私は用意していた物を取りにリビングへと向かった。
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