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第14話
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自室にトランクを置き、その中から自分の荷物を取り出した。それ以外は隣の部屋に通されたクリスに渡す。金銭的なものはとりあえず彼に管理してもらった方が良さそうな気がしたからだ。
「わかった。俺がちゃんと管理しておく」
「お願いします」
服は、クララ様が所有していたドレスを貸してくれる事となった。ソヴィの服とは雰囲気がやや異なる。ソヴィの服は色調がきつめのものが多いが、クララ様が所有しているドレスは淡く儚いパステル風味の色調の服が多い。
(自分はクララ様から貸してくれたドレスの方が、着ていてしっくりくるかもしれない)
早速貸してくれたドレスのうち、1着を明日着てみる事にしたのだった。今日はこのソヴィの服を着ていよう。
(たまにはいっか)
部屋の中には本棚もあった。大体20冊くらいの魔術書が収められている。中にはかなり年季の入っている古書もあった。気になるので読んでみると、火、水、土、風といった元素の魔法や、錬金術等が記されている。
(面白い)
その本を読んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。返事をして部屋の扉を開けるとジュリーが目の前に立っていた。
「マリーナ様。挨拶に来ました。これから家に戻って、早速宮廷に潜入します」
「え、もう行くんですか?」
「はい、夕食は準備しておきましたので。では!」
そう言ってジュリーは私に向けて笑顔で敬礼をした後、杖を振りながら意気揚々と去っていったのだった。彼女とはもう少し語らいたかったが、またの機会としよう。
(無事に帰ってきますように)
夕食はそんな彼女が用意してくれたミートボールとニンジンとカブがごろごろ入ったトマトスープと、ポテトサラダに上に細かく刻んだバジルの乗ったライスだった。私用のデザートとして例の魔力の質を向上させるビスケットも3枚ある。
「マリーナ。ビスケットはこれから1日3回欠かさず食べなさいね」
「はい、クララ様」
「では皆さん、いただきましょう」
「いただきます!」
まずはスープを1口飲んでみる。トマトソースの酸っぱい味が程よく効いている。ミートボールは煮込まれてお昼に食べたものよりもややほろほろとして柔らかくなっていた。勿論ライスとの相性は抜群だ。
それにポテトサラダもほくほくとしたじゃがいもの味が癖になる。薄くスライスされた玉ねぎも思ったよりかは辛くはない。どれも美味しく頂ける。
「美味しいです」
「マリーナ、美味しい?」
「ええ、クリス様!」
「確かに、ミートボールのレシピ聞きたいくらい美味しい」
「どうでしょうね、門外不出とジュリーは言ってたから」
あっという間に夕食を食べ終えてしまった。するとスープを飲んでいるクララ様が私の前にある空になった食器類を見やる。
「マリーナ、食べるの早いのね」
「やはりそうですか? 自分でも少しは思っていて……」
「地下牢で居た時の食事はどうだったの?」
「大体は余りでした」
「それもあるかもしれないわね。テーブルマナーは覚えている? 私から見た感じ、やや怪しい所はあるけど」
「た、多分……」
地下牢にいた時は大体うスプーンか手づかみで食べていたので、長らくテーブルマナーとは接する機会は無かったのだった。
「念のためにそのあたり明日からもう一度復習しておきましょう」
「はい、えと、お願いします」
「ええ。任せて頂戴……ビシバシ行くわよ?」
クララ様の目つきと笑みが一瞬で、悪人らしさが漂ったというか、嫌な予感がほとばしったような、そんな予感がしたのだった。
(なんか、怖い)
「おばあさま。せめて最初は優しくお願い」
「……わかったわクリス」
なんだかクリス様がいなかったらと思っただけで、ぞっと背筋が凍りそうな感覚に襲われたのだった。
(クリス様……)
その後は浴室にてお風呂に入る。浴室も貴族のお屋敷という事でつやつやのバスタブに金色の蛇口と壮麗さが感じられるレイアウトだった。入浴後は自室にてまた本を読み、22時頃に就寝する。
そうして気が付けば、朝を迎えていた。
「ふわあーー……」
天蓋付きのベッドはとてもふわふわとしていて、寝心地はとても良かった。枕も程よい柔らかさで、頭も首も肩も痛くない。起きてクララ様から借りた水色のドレスを着用し、食堂に向かう。
「おはよう、ございます」
食堂には既にクリス様が着席していた。彼は私にまっすぐときらきらした目でおはようと返してくれる。
「よく眠れた?」
「はい、とても」
「それは良かった。やっぱりあの地下牢のベッド硬すぎるって!」
(まあ確かに)
「皆さまおはよう」
クララ様が現れた。紺色のドレスに黒いレース状の羽織を着用している。私とクリス様はその場で席から立ち上がり、クララ様へ頭を下げて挨拶をした。
「おはようございます、おばあさま」
「クララ様おはようございます」
「ええ、おはよう。よく眠れたみたいね。では、朝食といたしましょう」
そのクララ様の掛け声で、厨房にいた中年くらいのコックが朝食をカートに乗せて運んできた。
「わかった。俺がちゃんと管理しておく」
「お願いします」
服は、クララ様が所有していたドレスを貸してくれる事となった。ソヴィの服とは雰囲気がやや異なる。ソヴィの服は色調がきつめのものが多いが、クララ様が所有しているドレスは淡く儚いパステル風味の色調の服が多い。
(自分はクララ様から貸してくれたドレスの方が、着ていてしっくりくるかもしれない)
早速貸してくれたドレスのうち、1着を明日着てみる事にしたのだった。今日はこのソヴィの服を着ていよう。
(たまにはいっか)
部屋の中には本棚もあった。大体20冊くらいの魔術書が収められている。中にはかなり年季の入っている古書もあった。気になるので読んでみると、火、水、土、風といった元素の魔法や、錬金術等が記されている。
(面白い)
その本を読んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。返事をして部屋の扉を開けるとジュリーが目の前に立っていた。
「マリーナ様。挨拶に来ました。これから家に戻って、早速宮廷に潜入します」
「え、もう行くんですか?」
「はい、夕食は準備しておきましたので。では!」
そう言ってジュリーは私に向けて笑顔で敬礼をした後、杖を振りながら意気揚々と去っていったのだった。彼女とはもう少し語らいたかったが、またの機会としよう。
(無事に帰ってきますように)
夕食はそんな彼女が用意してくれたミートボールとニンジンとカブがごろごろ入ったトマトスープと、ポテトサラダに上に細かく刻んだバジルの乗ったライスだった。私用のデザートとして例の魔力の質を向上させるビスケットも3枚ある。
「マリーナ。ビスケットはこれから1日3回欠かさず食べなさいね」
「はい、クララ様」
「では皆さん、いただきましょう」
「いただきます!」
まずはスープを1口飲んでみる。トマトソースの酸っぱい味が程よく効いている。ミートボールは煮込まれてお昼に食べたものよりもややほろほろとして柔らかくなっていた。勿論ライスとの相性は抜群だ。
それにポテトサラダもほくほくとしたじゃがいもの味が癖になる。薄くスライスされた玉ねぎも思ったよりかは辛くはない。どれも美味しく頂ける。
「美味しいです」
「マリーナ、美味しい?」
「ええ、クリス様!」
「確かに、ミートボールのレシピ聞きたいくらい美味しい」
「どうでしょうね、門外不出とジュリーは言ってたから」
あっという間に夕食を食べ終えてしまった。するとスープを飲んでいるクララ様が私の前にある空になった食器類を見やる。
「マリーナ、食べるの早いのね」
「やはりそうですか? 自分でも少しは思っていて……」
「地下牢で居た時の食事はどうだったの?」
「大体は余りでした」
「それもあるかもしれないわね。テーブルマナーは覚えている? 私から見た感じ、やや怪しい所はあるけど」
「た、多分……」
地下牢にいた時は大体うスプーンか手づかみで食べていたので、長らくテーブルマナーとは接する機会は無かったのだった。
「念のためにそのあたり明日からもう一度復習しておきましょう」
「はい、えと、お願いします」
「ええ。任せて頂戴……ビシバシ行くわよ?」
クララ様の目つきと笑みが一瞬で、悪人らしさが漂ったというか、嫌な予感がほとばしったような、そんな予感がしたのだった。
(なんか、怖い)
「おばあさま。せめて最初は優しくお願い」
「……わかったわクリス」
なんだかクリス様がいなかったらと思っただけで、ぞっと背筋が凍りそうな感覚に襲われたのだった。
(クリス様……)
その後は浴室にてお風呂に入る。浴室も貴族のお屋敷という事でつやつやのバスタブに金色の蛇口と壮麗さが感じられるレイアウトだった。入浴後は自室にてまた本を読み、22時頃に就寝する。
そうして気が付けば、朝を迎えていた。
「ふわあーー……」
天蓋付きのベッドはとてもふわふわとしていて、寝心地はとても良かった。枕も程よい柔らかさで、頭も首も肩も痛くない。起きてクララ様から借りた水色のドレスを着用し、食堂に向かう。
「おはよう、ございます」
食堂には既にクリス様が着席していた。彼は私にまっすぐときらきらした目でおはようと返してくれる。
「よく眠れた?」
「はい、とても」
「それは良かった。やっぱりあの地下牢のベッド硬すぎるって!」
(まあ確かに)
「皆さまおはよう」
クララ様が現れた。紺色のドレスに黒いレース状の羽織を着用している。私とクリス様はその場で席から立ち上がり、クララ様へ頭を下げて挨拶をした。
「おはようございます、おばあさま」
「クララ様おはようございます」
「ええ、おはよう。よく眠れたみたいね。では、朝食といたしましょう」
そのクララ様の掛け声で、厨房にいた中年くらいのコックが朝食をカートに乗せて運んできた。
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