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番外編
過保護な彼
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男性オメガは特に悪阻が酷いと聞いていた。
それなのに俺は時たま吐き気がするくらいで、寝込むこともない。
「真樹、何かお腹に入れない? お腹すいたんだ。食べたいものある?」
「んー……トマト食べたい」
「わかった。それと炭酸水好きだよね。それ飲んでいいからね」
「うん。ありがとう」
最近は一日の間に何度か刻んで食べるようになった。
というのも、彼がお腹が空いたからとか喉が渇いたとか、そう言って俺の分も用意してくれるから。
スライスしたトマトを持って隣に座った彼は、ニコニコ笑顔でフォークに刺したトマトを口元まで運んでくれる。
「ん、甘い、美味しい!」
「よかった。前にクラッカーも買ったんだ。クリームチーズもあるし、合わせたら食べる?」
「何それ美味しそう……。あとで小腹が空いた時に食べたいかも……」
「今はトマトだけでいい?」
「うん。ありがとう」
トマトを食べて、彼にもたれ掛かる。
そうしていると異様に眠たくなってきた。
「ねむ……」
「寝ていいよ。横になって……体勢辛くない?」
「大丈夫」
膝枕をしてもらい、目を閉じる。
凪さんが俺の手をとってキュッと握った。
その手からじんわりと彼の体温が移って温かい。
そんな日々を送っている間、凪さんは在宅で仕事をしていた。
どうやらアルファは番が妊娠すると、普段以上に離れたくなくなるらしい。
それが今日、どうしても会社に行かなければならないらしく、渋々家を出ていった。
昼には帰ってくると言っていたけれど……本当、くっつき虫の如く離れなくて大変だった。
朝ご飯を食べ暫く。
いきなり吐き気がしてトイレに走る。
「うぇ……っ」
全部出したあと、ゲホゲホ噎せてリビングに戻り置いてあった炭酸水を飲む。
気持ち悪いのと、なんだか無性に寂しくなったのと、それを少しでも解消できるように寝室に行きクローゼットから凪さんの服を取って着た。
そのままベッドに倒れて目を閉じる。
起きたら彼がいますようにと願いながら眠りに落ちた。
■
「──まき、真樹!」
「……ン」
肩をトントン叩かれる。
うっすらと目を開けると焦った様子の凪さんがいた。
「凪さん……? おかえり……」
「そんなことより! 体調……よくないよね。顔色悪いし、ご飯は食べてない?」
「……今何時?」
「もう二時になるよ」
「えぇ……起きなきゃ」
起き上がろうとして、凪さんに支えられる。
起きてからも気持ち悪くて顔を歪めると、すかさず凪さんがビスケットをくれた。
「食べて。飲み物も飲んで」
「……気持ち悪い」
「うん。これ食べたら治まるかもしれないから。ね、お願い。」
「……うん」
飲み物を持ってきた彼が隣に座り、そっと肩を撫でられる。
それなのに俺は時たま吐き気がするくらいで、寝込むこともない。
「真樹、何かお腹に入れない? お腹すいたんだ。食べたいものある?」
「んー……トマト食べたい」
「わかった。それと炭酸水好きだよね。それ飲んでいいからね」
「うん。ありがとう」
最近は一日の間に何度か刻んで食べるようになった。
というのも、彼がお腹が空いたからとか喉が渇いたとか、そう言って俺の分も用意してくれるから。
スライスしたトマトを持って隣に座った彼は、ニコニコ笑顔でフォークに刺したトマトを口元まで運んでくれる。
「ん、甘い、美味しい!」
「よかった。前にクラッカーも買ったんだ。クリームチーズもあるし、合わせたら食べる?」
「何それ美味しそう……。あとで小腹が空いた時に食べたいかも……」
「今はトマトだけでいい?」
「うん。ありがとう」
トマトを食べて、彼にもたれ掛かる。
そうしていると異様に眠たくなってきた。
「ねむ……」
「寝ていいよ。横になって……体勢辛くない?」
「大丈夫」
膝枕をしてもらい、目を閉じる。
凪さんが俺の手をとってキュッと握った。
その手からじんわりと彼の体温が移って温かい。
そんな日々を送っている間、凪さんは在宅で仕事をしていた。
どうやらアルファは番が妊娠すると、普段以上に離れたくなくなるらしい。
それが今日、どうしても会社に行かなければならないらしく、渋々家を出ていった。
昼には帰ってくると言っていたけれど……本当、くっつき虫の如く離れなくて大変だった。
朝ご飯を食べ暫く。
いきなり吐き気がしてトイレに走る。
「うぇ……っ」
全部出したあと、ゲホゲホ噎せてリビングに戻り置いてあった炭酸水を飲む。
気持ち悪いのと、なんだか無性に寂しくなったのと、それを少しでも解消できるように寝室に行きクローゼットから凪さんの服を取って着た。
そのままベッドに倒れて目を閉じる。
起きたら彼がいますようにと願いながら眠りに落ちた。
■
「──まき、真樹!」
「……ン」
肩をトントン叩かれる。
うっすらと目を開けると焦った様子の凪さんがいた。
「凪さん……? おかえり……」
「そんなことより! 体調……よくないよね。顔色悪いし、ご飯は食べてない?」
「……今何時?」
「もう二時になるよ」
「えぇ……起きなきゃ」
起き上がろうとして、凪さんに支えられる。
起きてからも気持ち悪くて顔を歪めると、すかさず凪さんがビスケットをくれた。
「食べて。飲み物も飲んで」
「……気持ち悪い」
「うん。これ食べたら治まるかもしれないから。ね、お願い。」
「……うん」
飲み物を持ってきた彼が隣に座り、そっと肩を撫でられる。
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