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第39話 久しぶりのコンビ

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 スミス副学園長からの命を受けて、俺とサラはダンジョンの調査へと乗りだした。
 学園に恨みを持つ者の犯行か、或いは何か問題を起こして学園長への責任問題へと発展させるつもりなのか……いずれにせよ、まともな人間のやることじゃないな。

 これ以上、生徒たちが危険目に遭わないよう、犯人特定につながる重要なヒントが見つかればいいのだが。

「あなたとコンビを組むのなんて、いつ以来かしらね」
「もう何年も前の話だろ。それより、あの頃の勘は鈍っていないか?」
「もちろん――と、豪語したいところだけど、つい最近まで現役だったあなたには劣るでしょうね」
「現役といっても、俺は育成係だったからなぁ」

 そんな話をしつつ、ダンジョンの奥へと進んでいく。
 どんな些細な物でもいいから見つかればという淡い期待を抱いていたいのだが……どうやら空振りに終わりそうだな。

「特にこれと言って不審な点はなさそうだな」
「そうね。――あら?」

 ボチボチ引き返そうとしたその時、サラが何かを発見したらしい。

「どうかしたか?」
「いえ……これを」
「うん? 銀貨か?」

 落ちていたのは一枚の銀貨であった。

「もしかして……誰かが落としていったのかしら」
「そうかもしれ――うん?」
「どうしたの?」
「いや、これ……わずかだが、魔力を感じる」
「えっ!?」

 ビックリして目を大きく見開くサラ。確かめるために魔力を使って銀貨を調べると――彼女もそこに微量ながら魔力を感じ取ったようだ。

「これは大きなヒントよ。魔力にある魔紋を調べれば、これの持ち主を特定できる!」

 興奮気味に語るサラ。
 やはり焦点はそこだよな。

 魔力には人それぞれ違った質があり、この世にまったく同じ質を持つ者はいないとされている。そのため、現場に残された魔力から個人を特定することが可能なのだ。

「それにしても、そんな決定的な証拠を残すなんて……マヌケすぎるな。もしかしたら罠かもしれないぞ」
「相手を特定して問い詰めれば、その謎も解決するわ!」

 それもそうか。
 仮にこいつが罠だとしても、この魔紋を持つ者から何か情報を得られるかもしれない。

「やれやれ……思っていた以上に厄介な案件になってきたな」

 当初思い描いていた管理人としての生活とはだいぶズレが生じてしまった。


  ◇◇◇


 学園へと戻ってきた俺とサラはスミス副学園長に調査結果を報告し、例の銀貨を預けた。
 さすがに、この銀貨の持ち主が今回の事件の黒幕――と、安易に結びつけることはできないのだが、根本的な解決に向けた一歩となりそうだと期待していた。

 すべてを終えて管理小屋まで戻ってくる頃にはすっかり夜も更けており、辺りは真っ暗だった。……どうやら、ラドルフは先に寝てしまったようだな。念のため、夕食を用意しておいて正解だったよ。
 
「……さすがに今日は一杯やろうなんて気持ちにはならないわね」
「そうだな……」

 俺もサラも夕食を済ませてはいないが、クタクタに疲れ切っていて食欲もなかった。今すぐにでも、ベッドへダイブしたい……そんな欲求の方が勝っている。
 
 ちなみに、明日は臨時の職員会議を開くらしく、サラも出席するとのこと。
 ただ、事件後の調査などで動き回っていた職員も少なくないため、会議は午後からと学園長が配慮してくれた。その間に、なんとか体力を回復させなくては、とサラは気合を入れ直していた。

「大変だなぁ。頑張れよ」
「えっ?」
「うん?」
「……他人事みたいに言っているけど――あなたも出るのよ?」
「へっ?」

 お、俺が職員会議に出席?
 ただの学生寮管理人だぞ!?

「お、俺が出て大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も、今回の件を一番近い位置から見ていたのはあなたなんだから当然よ。私が駆けつけた時にはすでにモンスターは倒された後だったし」
「い、言われてみれば……」

 サラの言うことは理解できる――が、職員会議って、一体何をすればいいものなんだ?

「そもそも、最近はパーティーのブリーフィングにもろくに出てなかったからなぁ」
「出てないというより、ブリングがあなたに知らせないで勝手に始めちゃっているんじゃないの?」
「まあね」

 育成係の俺には知らせる必要がないって理屈らしいが……まあ、その辺は今となってはどうでもいい話だ。

 それより肝心なのは明日の職員会議。
 ……ヘマをしないように注意しないと。
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