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第42話 敵の狙い
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「学園が狙われる理由……」
サラは強張った声で呟く。
例のダンジョンに出現したモンスター……あれは間違いなく人の手が加えられている。
キュセロ学園長の話によると、どうやら国内でそうした類のモンスターが各地に出現しているらしい。
百歩譲って、国内に自分たちの支配下にあるモンスターを配置するという行為の意図は読める。
モンスターが居座っているという噂が流れれば、他国の要人たちの行き来が減り、やがては産業や経済が成り立たなくなる――つまり、国家としての機能をマヒさせようとする魂胆があるのだろう。
……なら、学園を狙った理由はなんだろうか。
最初はこの学園に対する個人的な恨みが原因かと思ったが……実際はもっと根深い問題のようだ。
黒幕は国家の未来を担う若い人材をめちゃくちゃにしてやろうと企んでいた?
それだって、国家転覆につながる可能性は十分にある。
この王立学園には貴族のご令嬢やご子息も大勢通っているので、もし何かあればあっという間にその話は広がるだろう。
やがて、その手の話題は国外へと持ちだされる。
仮にそのような事態となった場合、国の安全性に対する取り組みが不十分と評価されてしまうかもしれない。
……まあ、この辺はどれだけ考えても確固たる証拠でもない限り憶測の域を出てこないのだろうが。
「この学園を狙ってくるということは……今後も生徒たちに危害が及ぶ可能性があると考えるべきでしょうか」
挙手をしてそう告げたのはサラと同じく二年生を受け持つノリス先生だった。
ノリス先生からの言葉を受けたキュセロ学園長は眉根を寄せながら静かに頷く。
「今、騎士団の方にも動いてもらっているけど……さっきも言ったように、今国中で似たような事件が続発しているらしいの」
「不幸中の幸いというべきか、こちらにはこうして優秀な人材が揃っている。当面の間は我々職員のみでの対応となるだろう」
スミス副学園長の言葉を耳にして、複雑な顔つきになる職員たち。
確かに、ここの職員は皆優秀な人材だ――が、あの銀貨の一件でこの中にも犯人がいる可能性があると浮上している。
そうなると、連携にミスが出る恐れもあった。
或いは、意図してこちらが不利になる動きをするかもしれない。
職員同士でさえも報告には気を遣わなければならないのか……これは思っていたよりもずっと厄介な状況だ。
その後、職員会議は学園の防衛体制について議論が交わされた。
とりあえず、学外で行われる課外活動や実習は当分自粛される方向で話はまとまり、夜の見回りなどを強化すること、さらには使い魔の数を増やし、常時監視の目を行き届かせるようにすることなどが新たに盛り込まれた。
また、ダメもとにはなるが、騎士団への応援要請も今後出し続けていくらしい。
実際に騎士たちが学園の警備につくという事態にはならないだろうが、連絡を密に取って常に最新の情報を手に入れつつ、事態の解決に向けて動いていく流れになるっぽいな。
当初はどこか浮足立っているように見えた職員たちであったが、そこは経験豊富な猛者揃いだけあって、すぐに対処法を立案。見事短時間でまとめ上げたのだった。
「では、早速これから各自で動きだして頂戴」
「報告は細やかにしてくれ」
「「「「「はい!」」」」」
最後は職員たちの威勢のよいかけ声で職員会議は締められた。
終了後、すぐさま職員たちは席を立ち、互いにやるべきことや段取りなどを話し合いながらそれぞれの持ち場へと散っていく。
今日は臨時休校となったが、明日からは平常授業となるため、その準備もしなくちゃいけない……これはかなりの負担になるな。
「大丈夫か、サラ」
「これくらい平気よ。それより……生徒たちの身に何かあった方が、私としてはずっと嫌だから」
「そうだな……」
俺もサラと同意見だ。
もっとも、ただの学生寮管理人である俺には、正規職員であるサラほどの権限はないし、今回の会議だってただの証人として呼ばれだけだ。
それでも、生徒たちを守りたいという気持ちは同じ。
管理人だからこそ気づけることがきっとあるはず――俺も俺で、今回の事件の黒幕を追いかけてみようと思っている。
きっと、それがリゲルたちのためになるだろうからな。
サラは強張った声で呟く。
例のダンジョンに出現したモンスター……あれは間違いなく人の手が加えられている。
キュセロ学園長の話によると、どうやら国内でそうした類のモンスターが各地に出現しているらしい。
百歩譲って、国内に自分たちの支配下にあるモンスターを配置するという行為の意図は読める。
モンスターが居座っているという噂が流れれば、他国の要人たちの行き来が減り、やがては産業や経済が成り立たなくなる――つまり、国家としての機能をマヒさせようとする魂胆があるのだろう。
……なら、学園を狙った理由はなんだろうか。
最初はこの学園に対する個人的な恨みが原因かと思ったが……実際はもっと根深い問題のようだ。
黒幕は国家の未来を担う若い人材をめちゃくちゃにしてやろうと企んでいた?
それだって、国家転覆につながる可能性は十分にある。
この王立学園には貴族のご令嬢やご子息も大勢通っているので、もし何かあればあっという間にその話は広がるだろう。
やがて、その手の話題は国外へと持ちだされる。
仮にそのような事態となった場合、国の安全性に対する取り組みが不十分と評価されてしまうかもしれない。
……まあ、この辺はどれだけ考えても確固たる証拠でもない限り憶測の域を出てこないのだろうが。
「この学園を狙ってくるということは……今後も生徒たちに危害が及ぶ可能性があると考えるべきでしょうか」
挙手をしてそう告げたのはサラと同じく二年生を受け持つノリス先生だった。
ノリス先生からの言葉を受けたキュセロ学園長は眉根を寄せながら静かに頷く。
「今、騎士団の方にも動いてもらっているけど……さっきも言ったように、今国中で似たような事件が続発しているらしいの」
「不幸中の幸いというべきか、こちらにはこうして優秀な人材が揃っている。当面の間は我々職員のみでの対応となるだろう」
スミス副学園長の言葉を耳にして、複雑な顔つきになる職員たち。
確かに、ここの職員は皆優秀な人材だ――が、あの銀貨の一件でこの中にも犯人がいる可能性があると浮上している。
そうなると、連携にミスが出る恐れもあった。
或いは、意図してこちらが不利になる動きをするかもしれない。
職員同士でさえも報告には気を遣わなければならないのか……これは思っていたよりもずっと厄介な状況だ。
その後、職員会議は学園の防衛体制について議論が交わされた。
とりあえず、学外で行われる課外活動や実習は当分自粛される方向で話はまとまり、夜の見回りなどを強化すること、さらには使い魔の数を増やし、常時監視の目を行き届かせるようにすることなどが新たに盛り込まれた。
また、ダメもとにはなるが、騎士団への応援要請も今後出し続けていくらしい。
実際に騎士たちが学園の警備につくという事態にはならないだろうが、連絡を密に取って常に最新の情報を手に入れつつ、事態の解決に向けて動いていく流れになるっぽいな。
当初はどこか浮足立っているように見えた職員たちであったが、そこは経験豊富な猛者揃いだけあって、すぐに対処法を立案。見事短時間でまとめ上げたのだった。
「では、早速これから各自で動きだして頂戴」
「報告は細やかにしてくれ」
「「「「「はい!」」」」」
最後は職員たちの威勢のよいかけ声で職員会議は締められた。
終了後、すぐさま職員たちは席を立ち、互いにやるべきことや段取りなどを話し合いながらそれぞれの持ち場へと散っていく。
今日は臨時休校となったが、明日からは平常授業となるため、その準備もしなくちゃいけない……これはかなりの負担になるな。
「大丈夫か、サラ」
「これくらい平気よ。それより……生徒たちの身に何かあった方が、私としてはずっと嫌だから」
「そうだな……」
俺もサラと同意見だ。
もっとも、ただの学生寮管理人である俺には、正規職員であるサラほどの権限はないし、今回の会議だってただの証人として呼ばれだけだ。
それでも、生徒たちを守りたいという気持ちは同じ。
管理人だからこそ気づけることがきっとあるはず――俺も俺で、今回の事件の黒幕を追いかけてみようと思っている。
きっと、それがリゲルたちのためになるだろうからな。
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