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第78話 休憩

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 魔鉱山の調査についてはマクリード家が声をかけ、騎士団からも何人か応援が派遣されることになっていたのだが、そのメンバーの中にゲイリーがいたのは驚きだった。

「来てくれたのか、ゲイリー」
「最近は大きな争いもないし、同僚の手伝いをしてやろうと思ってな。ミラッカも来たがっていたが、あいつは外交大臣の地方視察に護衛として呼ばれちまってねぇ。めちゃくちゃ悔しがっていたよ」
「その気持ちだけで十分嬉しいよ」

 気にかけてくれている人がいる――今の俺はそれで大満足だ。
 
 早い段階でテント設営を決断らしく、辺りにはもういくつか完成して食事の準備に取りかかる者もいた。
 
「ひと昔前は騎士団の飯というと『とにかく肉!』ってイメージだったが、最近はきちんと栄養のバランスを考えられているな」
「どこぞの国の騎士団食堂が大変評判良いらしいんでね」
「あぁ、聞いたことあるな。確か、ダンジョンに有名な農場がある国だったか」
「そうそう。うちもそれを真似してプロの料理人を雇っているみたいだ。もっとも、真似した相手の国の料理人は冒険者が本職っぽいけど」
「冒険者で料理人か……それは凄いな」
「おまけに可愛らしい女の子って噂もある。羨ましいねぇ。うちの騎士団の厨房はむさ苦しいおっさんだらけだっていうのに」
「だが、腕は確かだぞ」
「まあなぁ……そう贅沢ばかりは言えないか」

 夕食に使う野菜の下ごしらえをしながら、俺とゲイリーはなんでもない世間話に花を咲かせる。
 ふと視線を正面に向ければ、エリナがアミーラを相手に何やら遊んでいる。こうして見ると本当に仲の良い年の離れた姉妹って感じだな。

 騎士団の面々は手際よく野営の準備を整えていく。
 こういうのも訓練の一環としてよくやったから、みんな手順はしっかり頭の中に入っているのだろう。しばらくすると食事の用意ができ、パンとスープ、それからメインディッシュである肉を使った煮込み料理が配れた。

「やっとメシにありつけるぜぇ。これのために騎士をやっていると言って……そりゃちょっと言いすぎだが、そう思えるくらいうまいんだよ」
「まあ、なんとなく分かるよ」

 ゲイリーはウキウキでパンと肉を頬張り、それをスープで胃の奥へと流し込む。それを見ていたアミーラが真似をしようとするが、エリナに「あんな早食いができるのはゲイリー先輩くらいですから」と止められていた。

 美しい星空のもと、騎士団も参加する遠征とは思えないくらい穏やかな時間がすぎていた。
 なんか、アボット地方全体にそうなってしまうような魔法がかけられているようだな。
 世界中がここのような雰囲気なら、きっと戦争なんて起こらないのだろうとついつい思ってしまうよ。
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