2 / 13
その2
AZ−あん、登場!
しおりを挟む
「だ、誰よ、あんた⁉」
驚くゆうむに向かい、妖精のような女の子は優雅に一礼して見せた。
「はじめまして、一成ゆうむさん。わたしはAZーあん。AZーあんのゆうがお」
「あ、AZーあん? ゆうがお?」
「AZーあんって言うのは『機械の精霊』のこと。つまり、エルフやドワーフなんかと同じ種族名ね。『ゆうがお』って言うのが、わたしの個人名」
「き、機械の精霊⁉ 機械に精霊なんているの?」
「もちろんいるわよ。この世のすべてには精霊が宿っているんだから。機械の数だけ精霊もいるわ」
「機械の数だけ……」
ゆうむは呆然とした。世界中の機械の数なんて分かるわけないけど――君、分かる? いくつぐらいだと思う?――とにかく、とんでもない数になるはずだ。そのすべてに精霊が宿っているなんて……。
呆然としたままのゆうむの前で、夕顔は肩をすくめて見せた。
「と言っても、ほとんどのAZーあんは人前に出てくることも、話をすることもできないけどね。機械の性能が上がったおかげで、精霊であるわたしたちもようやく、ここまで進化できたの」
「へ、へえ、そうなんだ。すごいね……」
何がすごいのかよく分からなかったけど、とりあえずそう言ってみた。
ん? まってよ。機械の精霊? 機械、ロボット、と言うことは……。
「四次元ポケット、出して!」
ゆうむの突然の叫びに――。
ゆうがおは盛大にずっこけた。
「何で、いきなりそんなことになるのよ⁉」
「だって、ロボットって言ったら四次元ポケットでしょ。四次元ポケットさえあれば何でもできるじゃない」
「だから、AZーあんは機械の精霊であってロボットじゃないし……って言うか、四次元ポケットなんてもってないわよ」
「……ないの? 四次元ポケット」
「ないわよ。あんな何でもありのチートアイテム」
その言葉に――。
ゆうむはマジマジとゆうがおの顔をのぞき込んだ。そして――。
「チッ」
「何よ、その舌打ちは⁉」
「だって、四次元ポケットのないロボットが何の役に立つのよ」
「だから、AZーあんはロボットじゃなくて……四次元ポケットはないけど、他のことができるのよ」
「どんなこと?」
「こんなことよ!」
そう叫ぶなり――。
ゆうがおはゆうむの頭目がけて突っ込んだ!
「わあっ⁉」
いきなりのことにゆうむは悲鳴をあげた。そして、見た。何を? さあ、想像してみて。ゆうがおに頭のなかに飛び込まれたゆうむが一体、何を見たのかを。
ゆうむの見たもの。それは色とりどりの光の流れ。右を見ても、左を見ても、上を向いても、下を向いても、いたるところ光の粒が流れている。それはまるで無数の輝きに彩られた川のようでもあり、小さな宝石が音楽に乗ってダンスしているようでもあった。
「何よ、ここぉっ!」
ゆうむの叫びにゆうがおの声が答えた。その声はゆうむの頭のなかから響いてくるようだった。
「電脳空間よ」
「で、電脳空間……?」
「厳密にはちがうんだけどね。でも、そう言うのが人間には一番わかりやすいと思う。AZーあんとひとつになった人間は電脳空間のなかに入り込み、あらゆる機械を自在に操れるようになるの。これぞ、四次元ポケットがあってもできないAZーあんの力!」
「ひ、ひとつって……どういう意味よ」
「文字通りの意味よ。いまのゆうむはわたしとひとつになっているの」
「どうしたら、そんなことができるのよ⁉」
「うん、いい質問ね。でも、説明すると長くなるからやめておきましょう。それより、ゆうむ。あなたは知りたいことがあるんでしょう?」
「知りたいこと?」
「『何で、やりたいことだけやってちゃいけないのか』。そう言っていたじゃない」
「そ、それはそうだけど……」
「いまならその答えを得られるわよ。AZーあんとひとつになったあなたは世界中の機械に同時に質問できる。それを見た世界中の人間が答えをくれる。たちまち、何億、何十億って言う答えが返ってくるわ。それだけの答えがあるんだもの。気に入る答えだって必ずあるわよ」
「何十億って……」
ゆうむは途方に暮れた。何十億もの答え。そんな答えをどう確かめればいいって言うわけ? ひとつの答えを見るのに一秒かかったとしても一〇億の答えなら一〇億秒。一〇億秒って言ったら、ざっと三〇年以上……。たったひとつの質問の答えを得るのに三〇年以上。君ならできる?
「できるわけないでしょ!」
と言うのが、ゆうむの答え。
「何十億なんて答え、見られるわけがないじゃない!」
怒鳴るゆうむに対し、ゆうがおは冷静に、そして、得意そうに答えた。
「そうね。人間にそんまな真似ができるわけがない。でも、いまのあなたにはできる」
「どういう意味よ?」
いぶかしがるゆうむに対し、ゆうがおはますます得意そう。
「それこそ、AZーあんの神秘の力! AZーあんとひとつになった人間は機械並の情報処理速度をもつことができる! つまり、何十億という答えも一瞬で検索し、確かめられると言うこと。これぞ、四次元ポケットにもできないAZーあんの力!」
四次元ポケットにもできない。
ゆうがおはがそう言ったのはこれで二度目。ゆうむの舌打ちにそれだけ傷ついたのだ。他人相手にうかつな真似をするとずっと根にもたれるので君も気をつけよう。
「さあ、ゆうむ。あなたの質問を世界中に放って!」
「えっ? ええと……何で、やりたいことだけやってちゃいけないの⁉」
グローバル・アクセス!
答えをちょうだい!
その叫びが世界中の機械に一斉に放たれ、それを見た人間たちが答えを返す。何億、何十億という答えがたちまちゆうむの頭のなかに流れ込む。人間なら確かめることはおろか、見ることすらできないその膨大な答えを、だけど、AZーあんとひとつになったゆうむの脳は一瞬で分析し、確かめる。
何で、やりたいことだけやってちゃいけないの?
ゆうむのその問いに、君なら何て答える?
ゆうむの手にした答えはこれだ。
「やりたいことだけやってちゃいけない理由はただひとつ。稼げないからだ」
世界のどこかにいる見ず知らずの人から返ってきたその答え。それがゆうむの心を何より捉えた。
「逆に言うと、稼げさえすればやりたいことだけやってていいってこと。親の言う『そんなことしてないで勉強しなさい!』は『稼げるようになりなさい!』という意味なんだからな」
「そうかも知れないけど……あたしはまだ小学生よ? 小学生がどうやって稼げばいいの?」
「小学生だってネットビジネスならアイディアひとつで稼げるさ。実はいいアイディアがあるんだ。つまり……」
見ず知らずの誰かから送られてきたそのアイディア。そのアイディアにゆうむは心をときめかせた。
さあ、ここで質問。君ならどんなネットビジネスを展開する? 考えてみて。自分なりの答えが見つかったら次に行こう。
驚くゆうむに向かい、妖精のような女の子は優雅に一礼して見せた。
「はじめまして、一成ゆうむさん。わたしはAZーあん。AZーあんのゆうがお」
「あ、AZーあん? ゆうがお?」
「AZーあんって言うのは『機械の精霊』のこと。つまり、エルフやドワーフなんかと同じ種族名ね。『ゆうがお』って言うのが、わたしの個人名」
「き、機械の精霊⁉ 機械に精霊なんているの?」
「もちろんいるわよ。この世のすべてには精霊が宿っているんだから。機械の数だけ精霊もいるわ」
「機械の数だけ……」
ゆうむは呆然とした。世界中の機械の数なんて分かるわけないけど――君、分かる? いくつぐらいだと思う?――とにかく、とんでもない数になるはずだ。そのすべてに精霊が宿っているなんて……。
呆然としたままのゆうむの前で、夕顔は肩をすくめて見せた。
「と言っても、ほとんどのAZーあんは人前に出てくることも、話をすることもできないけどね。機械の性能が上がったおかげで、精霊であるわたしたちもようやく、ここまで進化できたの」
「へ、へえ、そうなんだ。すごいね……」
何がすごいのかよく分からなかったけど、とりあえずそう言ってみた。
ん? まってよ。機械の精霊? 機械、ロボット、と言うことは……。
「四次元ポケット、出して!」
ゆうむの突然の叫びに――。
ゆうがおは盛大にずっこけた。
「何で、いきなりそんなことになるのよ⁉」
「だって、ロボットって言ったら四次元ポケットでしょ。四次元ポケットさえあれば何でもできるじゃない」
「だから、AZーあんは機械の精霊であってロボットじゃないし……って言うか、四次元ポケットなんてもってないわよ」
「……ないの? 四次元ポケット」
「ないわよ。あんな何でもありのチートアイテム」
その言葉に――。
ゆうむはマジマジとゆうがおの顔をのぞき込んだ。そして――。
「チッ」
「何よ、その舌打ちは⁉」
「だって、四次元ポケットのないロボットが何の役に立つのよ」
「だから、AZーあんはロボットじゃなくて……四次元ポケットはないけど、他のことができるのよ」
「どんなこと?」
「こんなことよ!」
そう叫ぶなり――。
ゆうがおはゆうむの頭目がけて突っ込んだ!
「わあっ⁉」
いきなりのことにゆうむは悲鳴をあげた。そして、見た。何を? さあ、想像してみて。ゆうがおに頭のなかに飛び込まれたゆうむが一体、何を見たのかを。
ゆうむの見たもの。それは色とりどりの光の流れ。右を見ても、左を見ても、上を向いても、下を向いても、いたるところ光の粒が流れている。それはまるで無数の輝きに彩られた川のようでもあり、小さな宝石が音楽に乗ってダンスしているようでもあった。
「何よ、ここぉっ!」
ゆうむの叫びにゆうがおの声が答えた。その声はゆうむの頭のなかから響いてくるようだった。
「電脳空間よ」
「で、電脳空間……?」
「厳密にはちがうんだけどね。でも、そう言うのが人間には一番わかりやすいと思う。AZーあんとひとつになった人間は電脳空間のなかに入り込み、あらゆる機械を自在に操れるようになるの。これぞ、四次元ポケットがあってもできないAZーあんの力!」
「ひ、ひとつって……どういう意味よ」
「文字通りの意味よ。いまのゆうむはわたしとひとつになっているの」
「どうしたら、そんなことができるのよ⁉」
「うん、いい質問ね。でも、説明すると長くなるからやめておきましょう。それより、ゆうむ。あなたは知りたいことがあるんでしょう?」
「知りたいこと?」
「『何で、やりたいことだけやってちゃいけないのか』。そう言っていたじゃない」
「そ、それはそうだけど……」
「いまならその答えを得られるわよ。AZーあんとひとつになったあなたは世界中の機械に同時に質問できる。それを見た世界中の人間が答えをくれる。たちまち、何億、何十億って言う答えが返ってくるわ。それだけの答えがあるんだもの。気に入る答えだって必ずあるわよ」
「何十億って……」
ゆうむは途方に暮れた。何十億もの答え。そんな答えをどう確かめればいいって言うわけ? ひとつの答えを見るのに一秒かかったとしても一〇億の答えなら一〇億秒。一〇億秒って言ったら、ざっと三〇年以上……。たったひとつの質問の答えを得るのに三〇年以上。君ならできる?
「できるわけないでしょ!」
と言うのが、ゆうむの答え。
「何十億なんて答え、見られるわけがないじゃない!」
怒鳴るゆうむに対し、ゆうがおは冷静に、そして、得意そうに答えた。
「そうね。人間にそんまな真似ができるわけがない。でも、いまのあなたにはできる」
「どういう意味よ?」
いぶかしがるゆうむに対し、ゆうがおはますます得意そう。
「それこそ、AZーあんの神秘の力! AZーあんとひとつになった人間は機械並の情報処理速度をもつことができる! つまり、何十億という答えも一瞬で検索し、確かめられると言うこと。これぞ、四次元ポケットにもできないAZーあんの力!」
四次元ポケットにもできない。
ゆうがおはがそう言ったのはこれで二度目。ゆうむの舌打ちにそれだけ傷ついたのだ。他人相手にうかつな真似をするとずっと根にもたれるので君も気をつけよう。
「さあ、ゆうむ。あなたの質問を世界中に放って!」
「えっ? ええと……何で、やりたいことだけやってちゃいけないの⁉」
グローバル・アクセス!
答えをちょうだい!
その叫びが世界中の機械に一斉に放たれ、それを見た人間たちが答えを返す。何億、何十億という答えがたちまちゆうむの頭のなかに流れ込む。人間なら確かめることはおろか、見ることすらできないその膨大な答えを、だけど、AZーあんとひとつになったゆうむの脳は一瞬で分析し、確かめる。
何で、やりたいことだけやってちゃいけないの?
ゆうむのその問いに、君なら何て答える?
ゆうむの手にした答えはこれだ。
「やりたいことだけやってちゃいけない理由はただひとつ。稼げないからだ」
世界のどこかにいる見ず知らずの人から返ってきたその答え。それがゆうむの心を何より捉えた。
「逆に言うと、稼げさえすればやりたいことだけやってていいってこと。親の言う『そんなことしてないで勉強しなさい!』は『稼げるようになりなさい!』という意味なんだからな」
「そうかも知れないけど……あたしはまだ小学生よ? 小学生がどうやって稼げばいいの?」
「小学生だってネットビジネスならアイディアひとつで稼げるさ。実はいいアイディアがあるんだ。つまり……」
見ず知らずの誰かから送られてきたそのアイディア。そのアイディアにゆうむは心をときめかせた。
さあ、ここで質問。君ならどんなネットビジネスを展開する? 考えてみて。自分なりの答えが見つかったら次に行こう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる