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第一章 はじまり

晴れて修道院送りになりました

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「イ、イザベル!? いきなり何を言っているんだ! ネスメ女子修道院だぞ!? その意味を分かっているのか!?」
「はい、存じております」
「イザベル……」

 そのやり取りを聞いていたお義母様はお父様に話しかけた。

「貴方、私はこの子の意見に賛成ですわ」
「し、しかし」
「私は今まで貴方の教育方針についてあまり口を挟んで来ませんでしたが、このままのイザベルではいずれ社交界で恥を掻くことになるでしょう。社交界デビューまではまだ猶予がありますが、あまり悠長に構えていてはあっという間に時間が過ぎてしまいます。一度修道院に行かせた方が、この子のためになると思いますよ」
「う、うーむ」
「貴方もイザベルの行動には手を焼いていたではありませんか。それに、修道院の話は貴方から持ち出したのをお忘れですか?」
「うっ! そ、それは……確かにそうなんだが……」
「愛娘を溺愛する気持ちは分かりますが、それではイザベルの為になりません。例え血が繋がらなくとも、私にとってもイザベルは可愛い娘です。だからこそ、ここはイザベルの為を思って教育をし直すのも親の務めだと思いますよ」
「う、うーん」

 お父様が腕組みをして考え込んでいると、アルフ義兄様が話しかけてきた。

「ベル、いいのかい? このままだと本当にネスメ女子修道院に行くことになってしまうよ?」
「アルフ義兄様。はい、覚悟は出来ています。私、甘ったれた根性を鍛え直して参ります」

 私の発言にアルフ義兄様は目を見開き驚いた様子で話続けた。

「ベル、一体どうしちゃったんだい? 発言がまるで別人のようだよ」

 別人……確かにそうかも知れない。
 前世の記憶がある今の私は、もう以前のイザベルと同じ思考回路ではないはずだ。

「アルフ義兄様にも散々ご迷惑をお掛け致しました。今まで我儘ばかり言ってごめんなさい」
「ベル」

 私とアルフ義兄様が話し込んでいるうちに、お父様はお義母様に説得された様だ。

「イザベル。ネスメ女子修道院には侍女も付けられない上に最低限の荷物しか持ち込めない。それに加えて毎日労働をしなければならない。今まで働いたことのないお前にとっては過酷な環境になるだろう。……それでも行くのか?」

 もちろん、私の決意は変わらない。

「はい、お父様。私の決意は変わりません。ネスメ女子修道院で今までの行いを反省して参ります」
「そうか、分かった。では、気持ちの整理が付いたら声を掛けてくれ」
「いえ、その時間は必要ございません」
「………は?」
「これから荷物を纏めますので、終わり次第出ていきます。今までありがとうございました」

 そう、何事も最初が肝心。
 このままダラダラしていると決心が鈍りそうだし、早く行動に移しましょう。
 ベッドから勢い良く身を起こすと、そのままスタスタと部屋のドアまで歩き、家族に向かって一礼をした。
 家族はあんぐりと口を開けたままその場に突っ立っていたが、そのまま扉をパタンと閉じて自身の部屋へと歩き出した。
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