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第一章 はじまり
呼んでいないのに増えました 2
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「はい。ヘンリー殿下の仰るとおり、私がネスメ女子修道院に馬で行こうとしていたところをヘンリー殿下がいらっしゃいまして。そのまま馬に相乗りで連れて行って貰いました」
「馬で!? ベルは乗馬なんてほとんどしたことないはずなのに、なぜそんな無謀な事を」
「え!? し、書物に乗馬のコツが載っていたものですから、試してみたくなったのです」
我ながら苦しい言い訳だが「前世で乗馬経験があるから乗れると思った」とは口が裂けても言えない。
アルフ義兄様は、はぁと深いため息を吐くと真剣な表情で私を嗜めた。
「ベル、頼むからそんな無茶な事しないでくれ。落馬して怪我でもしたらどうする。もっと自分の身体を大事にしてくれ」
「アルフ義兄様、ごめんなさい」
するとアルフ義兄様の顔は途端に真っ赤になり、パッと目を逸らし、何かブツブツと呟いた。
「……その顔は反則……」
「アルフ義兄様?」
「い、いや、何でもない。反省しているならもういいよ。それより、あまり長居をして外が暗くなると危険も増える。今なら道も明るいし、早めに帰ろう」
アルフ義兄様が私を連れ出そうと私の手を引いたその時だ。何者かにガシッと空いていた片手を掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。
「きゃっ!」
うわわ、倒れる!
バランスを崩した身体はポスッと硬い何かに支えられた。
「イザベル嬢は私が連れて来たんだ。私が責任を持って送り届けよう」
頭上からはヘンリー殿下の声。
どうやら私はヘンリー殿下の硬い胸板に支えられたようで、そのまま優しく抱き込まれてしまった。
「ヘンリー殿下!?」
「ベルに触れるな!」
「イザベル嬢は私の婚約者なんだから触れても問題はないはずだが? お前こそ、年上とはいえ私に向かって命令出来る立場ではないだろう。今日はイザベル嬢との初対面の日なのだから邪魔しないでくれないか」
「ぐっ……」
アルフ義兄様はヘンリー殿下の言葉に口を噤んだ。
「イザベル嬢、急に引き寄せて悪かったね」
「い、いえ」
だ、抱き締められてしまった。
先程から顔が熱い。
それにさっきからバクバク早鐘を打つ心臓の音が、ヘンリー殿下にも聞こえてしまいそうだ。
「もう少し楽しみたかったのだが、このままだとアルフの血管が切れそうだし、今日のところはこれくらいにしておこう。さ、アルフが随分騒がしくしてしまったし皆にも謝ってこよう」
「は、はい」
ヘンリー殿下は私を抱き締める腕を解くと、怒りでプルプル震えるアルフ義兄様を無視して私をエスコートした。
アルフ義兄様の様子が気になったが、まずはヘンリー殿下と共に隅にいる子供達や修道女に謝り、またすぐに訪問をすると約束した。
「ベル、絶対来てね! 約束だよ!」
「イザベルさん、また来てくださいね」
「はい、必ず来ます。それまでリリアちゃんのおもちゃは預かりますね」
「ママ、ちゃんと返しに来てね、約束!」
「もちろん。約束します」
私は子どもや修道女達に別れを告げると、ヘンリー殿下とアルフ義兄様の後に続いた。
アルフ義兄様が怖くて話しかけられないため黙って歩いていたが、ヘンリー殿下は殺気立ったオーラを放つアルフ義兄様に呑気に話しかけた。
「アルフ、扉を壊したんだからヴァレリー院長にちゃんと謝っておけよ。私はイザベル嬢と先にアルノー家に向かう」
「分かっている」
アルフ義兄様はいったん私達から離れ、ヴァレリー院長のいる応接室へ向かって歩き出した。
「さ、暗くなる前に帰ろうか」
ヘンリー殿下は門前で待機していた従者に声を掛け、自身の愛馬を用意して貰うと私を馬の背に乗せた。
そして来た時同様に、ヘンリー殿下は私と相乗りでアルノー家まで馬を走らせた。
「馬で!? ベルは乗馬なんてほとんどしたことないはずなのに、なぜそんな無謀な事を」
「え!? し、書物に乗馬のコツが載っていたものですから、試してみたくなったのです」
我ながら苦しい言い訳だが「前世で乗馬経験があるから乗れると思った」とは口が裂けても言えない。
アルフ義兄様は、はぁと深いため息を吐くと真剣な表情で私を嗜めた。
「ベル、頼むからそんな無茶な事しないでくれ。落馬して怪我でもしたらどうする。もっと自分の身体を大事にしてくれ」
「アルフ義兄様、ごめんなさい」
するとアルフ義兄様の顔は途端に真っ赤になり、パッと目を逸らし、何かブツブツと呟いた。
「……その顔は反則……」
「アルフ義兄様?」
「い、いや、何でもない。反省しているならもういいよ。それより、あまり長居をして外が暗くなると危険も増える。今なら道も明るいし、早めに帰ろう」
アルフ義兄様が私を連れ出そうと私の手を引いたその時だ。何者かにガシッと空いていた片手を掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。
「きゃっ!」
うわわ、倒れる!
バランスを崩した身体はポスッと硬い何かに支えられた。
「イザベル嬢は私が連れて来たんだ。私が責任を持って送り届けよう」
頭上からはヘンリー殿下の声。
どうやら私はヘンリー殿下の硬い胸板に支えられたようで、そのまま優しく抱き込まれてしまった。
「ヘンリー殿下!?」
「ベルに触れるな!」
「イザベル嬢は私の婚約者なんだから触れても問題はないはずだが? お前こそ、年上とはいえ私に向かって命令出来る立場ではないだろう。今日はイザベル嬢との初対面の日なのだから邪魔しないでくれないか」
「ぐっ……」
アルフ義兄様はヘンリー殿下の言葉に口を噤んだ。
「イザベル嬢、急に引き寄せて悪かったね」
「い、いえ」
だ、抱き締められてしまった。
先程から顔が熱い。
それにさっきからバクバク早鐘を打つ心臓の音が、ヘンリー殿下にも聞こえてしまいそうだ。
「もう少し楽しみたかったのだが、このままだとアルフの血管が切れそうだし、今日のところはこれくらいにしておこう。さ、アルフが随分騒がしくしてしまったし皆にも謝ってこよう」
「は、はい」
ヘンリー殿下は私を抱き締める腕を解くと、怒りでプルプル震えるアルフ義兄様を無視して私をエスコートした。
アルフ義兄様の様子が気になったが、まずはヘンリー殿下と共に隅にいる子供達や修道女に謝り、またすぐに訪問をすると約束した。
「ベル、絶対来てね! 約束だよ!」
「イザベルさん、また来てくださいね」
「はい、必ず来ます。それまでリリアちゃんのおもちゃは預かりますね」
「ママ、ちゃんと返しに来てね、約束!」
「もちろん。約束します」
私は子どもや修道女達に別れを告げると、ヘンリー殿下とアルフ義兄様の後に続いた。
アルフ義兄様が怖くて話しかけられないため黙って歩いていたが、ヘンリー殿下は殺気立ったオーラを放つアルフ義兄様に呑気に話しかけた。
「アルフ、扉を壊したんだからヴァレリー院長にちゃんと謝っておけよ。私はイザベル嬢と先にアルノー家に向かう」
「分かっている」
アルフ義兄様はいったん私達から離れ、ヴァレリー院長のいる応接室へ向かって歩き出した。
「さ、暗くなる前に帰ろうか」
ヘンリー殿下は門前で待機していた従者に声を掛け、自身の愛馬を用意して貰うと私を馬の背に乗せた。
そして来た時同様に、ヘンリー殿下は私と相乗りでアルノー家まで馬を走らせた。
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