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第二章 学園編
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そのままぼんやりと扉を眺めていると、マリア様が声を掛けてきた。
「イザベル様、ヘンリー殿下との結婚のことですが、私……ってイザベル様、大丈夫ですか!?」
「え?」
ふと下を見ると点々とドレスに出来た小さなシミ。
頬には濡れた感覚がある。
手でそっと撫でてみると指先に水滴が付いた。
え!? まさか、私泣いているの!?
「め、目にゴミでも入ったようですわ。鏡で確認をしたいので、私はこのまま退出致しますね。マリア様はどうぞ、私にお気遣いなくお過ごし下さい」
「イザベル様……」
こんな姿を見られたらマリア様の決断に影響を及ぼしてしまう。今日のところはマリア様と別れて落ち着こう。
さっと席を立ち、応接間を出る。
そして、人目のつかない場所まで行きそっと涙を拭っていると、足音と共に聞き覚えのある声がした。
「ん? イザベル嬢か?」
「ヘ、ヘンリー殿下?」
げっ! タイミング悪っ!
「……! イザベル嬢、どうした!? 何があった」
あちゃー、泣いているのがバレてしまった。
「ヘンリー殿下、あの、その」
「怪我でもしたのか!? それとも誰かに何か言われたのか!?」
「えっと」
「イザベル嬢、今まで誰といたか教えてくれないか」
「こ、国王陛下とマリア様でございます」
国王陛下と聞いた途端、ヘンリー殿下の顔が険しくなった。
「くそっ! 父上め、先手を打ってきたな!」
「? あの、ヘンリー殿下」
「父上から婚約解消の話を聞いたのだろう? イザベル嬢、私はイザベル嬢との婚約を解消する気はない」
「え? でも、それじゃあ……」
「確かにマリア嬢の意向次第では結婚が難しくなるのは事実だ。しかし、私は最後までイザベル嬢との結婚を諦めるつもりはない」
ヘンリー殿下は指先でそっと私の目元に残った涙を掬った。
「マリア嬢には折を見て説得するつもりだ。そう簡単に婚約解消などさせるものか」
ヘンリー殿下はそのまま私を引き寄せると、力強く抱き締めた。
「イザベル嬢、不安な思いをさせてすまない。私の想いは変わらない。貴女を愛している」
温かい……
いつもなら慌てて離れるところなのに、今日は抵抗する気が起きない。
私はそのままヘンリー殿下に身を委ねてぬくもりを感じていると、ヘンリー殿下はそっと身を離した。
「このまま貴女の側にいたいのだが……まだ公務が残っている。すまない、一旦戻らなければ」
「そうだったのですね。引き留めてしまって、ごめんなさい」
「いや、私が勝手にしたことだ。謝らないでくれ。今日は馬車で来ているのか?」
「はい」
「そうか。では、門前まで送ろう」
「ヘンリー殿下は公務があるのですから、私に気にせずお戻り下さいませ」
「うむ……すまない。では、私は持ち場に戻るが、何かあれば近くの者に声を掛けるように」
「ふふ。私は幼子ではないのですからそんなに心配しなくても大丈夫ですわ。では、ごきげんよう、ヘンリー殿下」
ヘンリー殿下は名残惜しむかのように再度ぎゅっと抱き締めた。
そして、そっと手を離すとその場を後にした。
「イザベル様、ヘンリー殿下との結婚のことですが、私……ってイザベル様、大丈夫ですか!?」
「え?」
ふと下を見ると点々とドレスに出来た小さなシミ。
頬には濡れた感覚がある。
手でそっと撫でてみると指先に水滴が付いた。
え!? まさか、私泣いているの!?
「め、目にゴミでも入ったようですわ。鏡で確認をしたいので、私はこのまま退出致しますね。マリア様はどうぞ、私にお気遣いなくお過ごし下さい」
「イザベル様……」
こんな姿を見られたらマリア様の決断に影響を及ぼしてしまう。今日のところはマリア様と別れて落ち着こう。
さっと席を立ち、応接間を出る。
そして、人目のつかない場所まで行きそっと涙を拭っていると、足音と共に聞き覚えのある声がした。
「ん? イザベル嬢か?」
「ヘ、ヘンリー殿下?」
げっ! タイミング悪っ!
「……! イザベル嬢、どうした!? 何があった」
あちゃー、泣いているのがバレてしまった。
「ヘンリー殿下、あの、その」
「怪我でもしたのか!? それとも誰かに何か言われたのか!?」
「えっと」
「イザベル嬢、今まで誰といたか教えてくれないか」
「こ、国王陛下とマリア様でございます」
国王陛下と聞いた途端、ヘンリー殿下の顔が険しくなった。
「くそっ! 父上め、先手を打ってきたな!」
「? あの、ヘンリー殿下」
「父上から婚約解消の話を聞いたのだろう? イザベル嬢、私はイザベル嬢との婚約を解消する気はない」
「え? でも、それじゃあ……」
「確かにマリア嬢の意向次第では結婚が難しくなるのは事実だ。しかし、私は最後までイザベル嬢との結婚を諦めるつもりはない」
ヘンリー殿下は指先でそっと私の目元に残った涙を掬った。
「マリア嬢には折を見て説得するつもりだ。そう簡単に婚約解消などさせるものか」
ヘンリー殿下はそのまま私を引き寄せると、力強く抱き締めた。
「イザベル嬢、不安な思いをさせてすまない。私の想いは変わらない。貴女を愛している」
温かい……
いつもなら慌てて離れるところなのに、今日は抵抗する気が起きない。
私はそのままヘンリー殿下に身を委ねてぬくもりを感じていると、ヘンリー殿下はそっと身を離した。
「このまま貴女の側にいたいのだが……まだ公務が残っている。すまない、一旦戻らなければ」
「そうだったのですね。引き留めてしまって、ごめんなさい」
「いや、私が勝手にしたことだ。謝らないでくれ。今日は馬車で来ているのか?」
「はい」
「そうか。では、門前まで送ろう」
「ヘンリー殿下は公務があるのですから、私に気にせずお戻り下さいませ」
「うむ……すまない。では、私は持ち場に戻るが、何かあれば近くの者に声を掛けるように」
「ふふ。私は幼子ではないのですからそんなに心配しなくても大丈夫ですわ。では、ごきげんよう、ヘンリー殿下」
ヘンリー殿下は名残惜しむかのように再度ぎゅっと抱き締めた。
そして、そっと手を離すとその場を後にした。
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