あなたが、もういないということ

人は平等じゃない。ましてや、愛される重さなど、天秤にはかけられない。わたしにとっての「唯一の証明」が、彼だった。

◆◆◆

伯爵家の長女として生まれた令嬢アデルは、両親に愛されず、妹ソフィばかり可愛がられていた。

社交界でも浮き、婚約者まで妹に奪われるが、それでも彼女は悲しまなかった。ただ一匹の飼い猫・グリが居たからだ。

灰色の長い毛並みと、静かなまなざし。

誰にも理解されないアデルの心の奥を、グリだけがそっと受けとめてくれた。

だが歳月とともに、グリは老い、ある日陽だまりの中で静かに逝く。

アデルはそのときはじめて、言葉にできない深い「喪失」を知るのだった。
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