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第11話 狡猾さと性質が、やがて仇となる リナス視点(1)
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「…………今日で、あの日からちょうど1か月。まだまだ暇な時間は続きそうね」
もうここで暮らす事はないと思っていた、かつての自分の部屋。ソコでわたしはローズマリーを飲みながら、室内にあるカレンダーを眺めていた。
――今の私は、リナス・ファスル――。
――優しい元夫の配慮で、離婚をした子爵家令嬢――。
そんな人がすぐ社交界に復帰したら、恥知らずな女として見られてしまうもの。今は元夫の優しさに感謝しつつも別れを悲しみ、落ち込んだふりをする期間。
半年くらい続けていれば他の貴族たちはそう思い込んで、その後復帰しても、『立ち直ることができたんだ』と感じる――歓迎されるようになるんだもの。
今は、我慢の時なのよね。
「ほぼずっと家の中にいる毎日は、本当につまらない。楽しいことなんて、何もない」
だってウチには欲しいものを何でも買える財力なんてないし、他貴族令嬢がペコペコすることもないんだもの。最悪の毎日。
「でも――。さなぎから蝶へと成長するように、我慢の後には幸せが待っている」
わたしの容姿とキャラクターを使えば、男なんて簡単に転がせる。
上級貴族は再婚を嫌うから、侯爵家や公爵家クラスとはお近づきになれないだろうけど――。それ以下の、伯爵家クラスなら可能。
伯爵夫人でも、今よりは遥かに良い暮らしができる。わたしにとっては分不相応だけど、この際仕方がないものね。
その日のことを考えながら、暇を潰しましょ。
「伯爵家の嫡男の中で、有望なのは…………。確か…………西のリドリク・アーチェナ様と、南のサグラス・ヴィオン様と、東のグエザ・ハイネイル様だったわよね」
リドリク様は知的な美少年で、サグラス様は温厚な美男子、グエザ様はオレ様系の美男子。容姿的にも財力的にも、伯爵家ではこの3人がトップクラスだった。
「とはいえ。オレ様系は、却下よね」
わたしはコントロールされる側ではなくて、コントロールする側だもん。我が強めでグイグイ引っ張る男は、ダメ。
「あと、リドリク様も除外ね」
あの人は聡明で、一緒に暮らしていると本性を見抜かれる可能性がある。そういう人とも、関わってはいけない。
「となれば、サグラス様ね。あの人は操りやすそうだから、サグラス様が参加するパーティーで復帰するようにして――あら?」
廊下が、急に騒がしくなったわね? どうしたのかしら……?
「ねえサレナ、ここに来て頂戴っ。貴方に聞きたいことが――え…………?」
手をパンパンと打ち鳴らして侍女を呼び寄せて、外の状況を確認しようとしていた時だった。突然部屋の扉が開いて、わたしの許可なく3人の男が入り込んできた。
もうここで暮らす事はないと思っていた、かつての自分の部屋。ソコでわたしはローズマリーを飲みながら、室内にあるカレンダーを眺めていた。
――今の私は、リナス・ファスル――。
――優しい元夫の配慮で、離婚をした子爵家令嬢――。
そんな人がすぐ社交界に復帰したら、恥知らずな女として見られてしまうもの。今は元夫の優しさに感謝しつつも別れを悲しみ、落ち込んだふりをする期間。
半年くらい続けていれば他の貴族たちはそう思い込んで、その後復帰しても、『立ち直ることができたんだ』と感じる――歓迎されるようになるんだもの。
今は、我慢の時なのよね。
「ほぼずっと家の中にいる毎日は、本当につまらない。楽しいことなんて、何もない」
だってウチには欲しいものを何でも買える財力なんてないし、他貴族令嬢がペコペコすることもないんだもの。最悪の毎日。
「でも――。さなぎから蝶へと成長するように、我慢の後には幸せが待っている」
わたしの容姿とキャラクターを使えば、男なんて簡単に転がせる。
上級貴族は再婚を嫌うから、侯爵家や公爵家クラスとはお近づきになれないだろうけど――。それ以下の、伯爵家クラスなら可能。
伯爵夫人でも、今よりは遥かに良い暮らしができる。わたしにとっては分不相応だけど、この際仕方がないものね。
その日のことを考えながら、暇を潰しましょ。
「伯爵家の嫡男の中で、有望なのは…………。確か…………西のリドリク・アーチェナ様と、南のサグラス・ヴィオン様と、東のグエザ・ハイネイル様だったわよね」
リドリク様は知的な美少年で、サグラス様は温厚な美男子、グエザ様はオレ様系の美男子。容姿的にも財力的にも、伯爵家ではこの3人がトップクラスだった。
「とはいえ。オレ様系は、却下よね」
わたしはコントロールされる側ではなくて、コントロールする側だもん。我が強めでグイグイ引っ張る男は、ダメ。
「あと、リドリク様も除外ね」
あの人は聡明で、一緒に暮らしていると本性を見抜かれる可能性がある。そういう人とも、関わってはいけない。
「となれば、サグラス様ね。あの人は操りやすそうだから、サグラス様が参加するパーティーで復帰するようにして――あら?」
廊下が、急に騒がしくなったわね? どうしたのかしら……?
「ねえサレナ、ここに来て頂戴っ。貴方に聞きたいことが――え…………?」
手をパンパンと打ち鳴らして侍女を呼び寄せて、外の状況を確認しようとしていた時だった。突然部屋の扉が開いて、わたしの許可なく3人の男が入り込んできた。
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