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第4話 接触開始 ニネット視点(3)

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「俺は灯台のように、多くを照らすことのできる大きな力を持つ男。だから灯台のように、近すぎる存在は見えていなかったんだろうな」

 漆黒の下に広がる、ムーディーな場所。パーティーの参加者は立ち入りが許可されている、美しい中庭。
 そんな場所に着くや否や、エドモン様は大仰に肩を竦められた。

「これまでもニネットの姿は、何度も目にしていた。だが魅力的だと感じたことは、今まで一度もなかったんだ」
「……はい。エドモン様」
「だが今夜ようやく、見えていなかった部分に光が当たり、真実に気が付いた。ニネット、お前は魅力的な女だ。周囲に居る者の、誰よりもな」

 頭からつま先まで。エドモン様はゆっくりと視線を下げて、上げ、再びわたくしの顔で止まった。

「その顔、その体、その心。どれもが、完璧だった」
「っっ。エドモン様……っ」

 外面が先で、内面があと。他の男にそんなことを言われたら、不愉快で即座に平手打ちをしていたでしょうね。
 けれどココも、その人がエドモン様なら話は別。大好きな方に褒めていただけるのであれば、なんだって嬉しい。非常に大きな幸せと、なってしまうのですわ。

「ニネット・ネズレント。パーフェクトなお前は、パーフェクトなこの俺に相応しい女だ。……欲しい物は、なんでも買ってやろう。お前に、最高の幸せ与えてやろう。だから――この男のものとなれ」

 おもわずうっとりしていたら、大きな右手がわたくしへと伸びてきました。
 エドモン・ダーファルズ様。この方は今、好きでたまらない御方。そして、


 ――自分自身をパーフェクトと明言する――。
 ――自分に相応しい女だと口にする――。
 大きな自信を持つ御方。

 ――買ってやろう――。
 ――俺のものになれ――。
 力強く引っ張っていってくださる御方。


 接触してみれば更に美点が見えてきて、ますます好きになった御方なんですもの。
 その答えは、決まっていますわ……!

「はい……っ。喜んで……!」

 迷わずその手に手を重ね、わたくしはエドモン様の恋人になったのでした――。

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