私は、忠告を致しましたよ？

第１話 捏造と自演の理由 ロマーヌ・ジュリアルス視点（２）

（（破局すると思っていたのに、それどころか発展して婚約しただなんて……。…………こうなったら、静観は中止。動くしかありませんわね））

　わたくしの辞書に、諦めるという文字はありませんわ。

（（二人の仲が自然に解消されないのなら……。わたくしが、すっぱりと絶ってあげますわ……！））

　あんなにも完璧な男性にはもう出会えないでしょうし、なにより――。ジョルジュ様も美人で優秀な生徒会長であり、名家の血が流れる侯爵令嬢と交際した方が幸せですものね。わたくしは大急ぎでそのための計画を練り始め、日夜頭を捻って――昨日１か月後、ようやく全ての策が練り上がりましたの。

（（まずはマリエスを加害者にして婚約を白紙にし、この件を使って学院から追い出す。そして――うふふ。次はそれを利用して、ジョルジュ様との関係を深める））

　自分の婚約者が怪我を負わせてしまった、などなど。そういった罪悪感たちを活かして距離を詰め、ゆくゆくは婚約を交わす。
　こういった二段構えになっていて、もちろん、勝算はありますわ。
　３００回以上シミュレーションを行い、成功確実となっている『恋のシナリオ』。そちらを早く実行実践したいところだけれど――。そのためには、第一段階を最後まで進めて成功させないといけませんものね。

「いっ、今の悲鳴はなんだ――なっ!!　たっ、大変だ!!　ジュリアルス様が階段の下で倒れているぞっ!!」
「だっ、大丈夫ですかっ!?　なっ、なにがあったのですかっ!?」
「う…………。ま……り、えすさまに……。せなか、を……。おさ、れ……。まし、たの…………」

　あの悲鳴を聞きつけた男性生徒に説明したあと、気絶したフリをする。そうしてわたくしは先生方によって、保健室へと運ばれ………………そろそろ、ですわね。
　３時間ほど経ったら閉じていた目をゆっくりと開け、作戦第一段階の『締め』を行うことにしたのでした――。