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第7話 映し出された理由 アルマ視点(1)
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「アルマ。この人間達は必死になって地位を守ろうとしていて、同時に貴女への復讐を目論んでいるのよ」
わたし達が驚きの声を上げて、すぐだった。女性は鏡を眺めながら、たっぷりと嘲りが籠ったため息を吐いた。
「このままだともうすぐ国中に自ら事情を説明しないといけなくて、あっという間に悪評が広まってしまう。それは嫌だし、たかだか男爵令嬢風情にあんな風に振る舞われて血の涙が出るくらい悔しかった。そこで貴女達が去ったあとその全てをどうにかする方法を考え始め、タデウスは気付いたのよ。貴女の身に起きた聖力喪失と復活の真実にね」
「……しん、じつ……。それは、なんなんですか……?」
「あの出来事は、人為的に引き起こされていたもの。キュメット・ハーザックが仕掛けた、呪いが原因だということよ」
『純白姫』と呼ばれている、美しい容姿と清らかな心を持つ公爵令嬢。それは偽りの姿。
本性は欲望の底なし沼で、公爵令嬢という枠では我慢できなくなった。すべての人々に崇められる存在になりたくなっていた。そこでずっと野望を叶える手段を探していて、その結果――
聖女の力を奪い取る呪い
――を見つけ、実行していた……。
「まさか、封印されている古のものを見つけるとは思わなかったわ。ただその呪いは、かつて邪神が聖力を奪うべく創造した『特別な呪』。発動には大量の邪悪な感情が必要で、さしもの強欲令嬢でも量が足りなかった。1日程度で貴女に戻ったのは、それが理由なの」
「そんな、ことが……」
「『一時的に聖女の力がなくなるだなんて、聞いたことがない』『人の手によるものなのでは?』『キュメットに一時的に宿ったということは、キュメットの仕業か?』『キュメットに方法を聞いて俺達の力を総動員すれば、ずっと奪えるかもしれない』。そんな推理予想をして、藁にも縋る思いでハーザック公爵邸に押しかけた」
そして会うや『利害が一致している』と告げ、キュメット様は仲間だと判断したため打ち明けた。
それがさっきまで起きていたことで――。今は次のステップへと進み、改めて呪いをかける準備をしているらしい。
「あの呪いの発動には、13種類の素材と邪悪な感情を含む者の血液が要るの。鏡の右端をごらんなさい。深紅の魔法陣とその上に置かれている瓶(かめ)が見えるでしょ?」
「……はい。見えますね」「……ええ、見えます」
円の外径に沿うように、等間隔で合わせて9つの瓶が設置されている。
「あの中には今そこに居る全員の血液が入っていて、あれだけあれば呪いは完全に発動する。アルマに宿っている聖力は今度こそ完全に奪われて、キュメットが聖女になってしまうわ。……さっきまでの状態なら、ね」
全員が陣の中で手を繋ぎながら呪文を詠唱し、それによってどす黒く輝き始めた魔法陣。禍々しいものを指差し、また、クスリと嗤った。
「うふふ、残念だったわね。今回はワタシが出しゃばったから、そうはいかないわよ。……貴男たちを待っているのは、成功でも希望でもなくて――」
わたし達が驚きの声を上げて、すぐだった。女性は鏡を眺めながら、たっぷりと嘲りが籠ったため息を吐いた。
「このままだともうすぐ国中に自ら事情を説明しないといけなくて、あっという間に悪評が広まってしまう。それは嫌だし、たかだか男爵令嬢風情にあんな風に振る舞われて血の涙が出るくらい悔しかった。そこで貴女達が去ったあとその全てをどうにかする方法を考え始め、タデウスは気付いたのよ。貴女の身に起きた聖力喪失と復活の真実にね」
「……しん、じつ……。それは、なんなんですか……?」
「あの出来事は、人為的に引き起こされていたもの。キュメット・ハーザックが仕掛けた、呪いが原因だということよ」
『純白姫』と呼ばれている、美しい容姿と清らかな心を持つ公爵令嬢。それは偽りの姿。
本性は欲望の底なし沼で、公爵令嬢という枠では我慢できなくなった。すべての人々に崇められる存在になりたくなっていた。そこでずっと野望を叶える手段を探していて、その結果――
聖女の力を奪い取る呪い
――を見つけ、実行していた……。
「まさか、封印されている古のものを見つけるとは思わなかったわ。ただその呪いは、かつて邪神が聖力を奪うべく創造した『特別な呪』。発動には大量の邪悪な感情が必要で、さしもの強欲令嬢でも量が足りなかった。1日程度で貴女に戻ったのは、それが理由なの」
「そんな、ことが……」
「『一時的に聖女の力がなくなるだなんて、聞いたことがない』『人の手によるものなのでは?』『キュメットに一時的に宿ったということは、キュメットの仕業か?』『キュメットに方法を聞いて俺達の力を総動員すれば、ずっと奪えるかもしれない』。そんな推理予想をして、藁にも縋る思いでハーザック公爵邸に押しかけた」
そして会うや『利害が一致している』と告げ、キュメット様は仲間だと判断したため打ち明けた。
それがさっきまで起きていたことで――。今は次のステップへと進み、改めて呪いをかける準備をしているらしい。
「あの呪いの発動には、13種類の素材と邪悪な感情を含む者の血液が要るの。鏡の右端をごらんなさい。深紅の魔法陣とその上に置かれている瓶(かめ)が見えるでしょ?」
「……はい。見えますね」「……ええ、見えます」
円の外径に沿うように、等間隔で合わせて9つの瓶が設置されている。
「あの中には今そこに居る全員の血液が入っていて、あれだけあれば呪いは完全に発動する。アルマに宿っている聖力は今度こそ完全に奪われて、キュメットが聖女になってしまうわ。……さっきまでの状態なら、ね」
全員が陣の中で手を繋ぎながら呪文を詠唱し、それによってどす黒く輝き始めた魔法陣。禍々しいものを指差し、また、クスリと嗤った。
「うふふ、残念だったわね。今回はワタシが出しゃばったから、そうはいかないわよ。……貴男たちを待っているのは、成功でも希望でもなくて――」
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