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第11話 ??? マイユール視点

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「マイユール。わたしは今、とっても幸せです」

 ………………。え……?
 気がついたら僕は教会内にある祭壇の前にいて、ウェディングドレス姿のアルマと微笑み合っていた。

「……………………。……………………」
「マイユール? 急にどうしたの?」
「……僕は――僕達は、さっきまでソル神殿にいたのに……。どうなっているんだ……?」

 不思議な鏡を通して殿下達の変化を見届けたあと、謎の女性と共に彼女が創り出した扉を潜った。僕はそのまま真っ白な部屋に入って、アルマは外で待ってくれているはずなのに……。
 なぜこんな場所に立っていて、タキシードを着ているんだ……?

「どうなってるって、??? 忘れちゃったの? 今日はわたし達の結婚式で、一緒に『ファリーフ教会』に来たじゃない」
「結婚式!? ファリーフ教会!? なにを言っているんだい!? 僕達はさっきまでソルしん――あれ……? いや……。そ、そうだね。そうだ。そうだったよ」

 ソレは『さっき』ではなくて、一年前の出来事だ。あのあと僕達は婚約を結び直して、今日やっと結婚できるようになったんじゃないか。

「あまりに嬉しすぎて、記憶が混乱していたみたいだ。ごめんねアルマ」
「ううん。わたしも幸せ過ぎて、おかしくなっちゃいそうだもの。……じゃあ、マイユール」
「うん。……アルマ」

 僕達はこれから最後の儀式、誓いのキスを交わすところだった。なので僕は一歩前に進んで手を取り合い、ゆっくりと口づけを交わす。
 こうして僕達は夫婦となって新しい人生が始まり、輝きに満ちた明るく幸せな日々が――始まることには、ならなかった……。

『聖女様の相手が男爵かぁ~。全然釣り合ってないよな』
『国の最重要人物のお相手が、貴族の中でも下の下な方だなんて。逆タマね』
『どうせこれから、聖女様のおかげで色々得してくんだろうなぁ。あ~あ、オレも他力本願な人生を歩みたかったぜ』

 などなど。貴族平民問わず様々な人間が様々な場所で、僕の悪口陰口を口にするようになった。
 そして――

「ごめんね、マイユルール……。わたしのせいで、嫌な思いをさせちゃって……」

 それによってアルマの顔は頻繁に曇るようになり、涙を零すことも多くなってしまったのだった。
 その結果……。やがて僕は……。
 僕達は……――
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