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第1話 理由~妹・ザラside~ ザラ視点(1)
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((古臭くてセンスがないと思っていたけれど、それは大間違いでしたわ。コレもいいけれど、アレの方が断然いいですわね))
ピンク色を基調とした、わたくしにぴったりな可愛らしいお部屋。特注のドレッサーの前で、昨日もらったお父様とお母様からのプレゼント――イヤリングをつけてみていたわたくしは、昨夜の姉の耳元を思い出していた。
『まぁ……っ、よくお似合いよ。あの人の若い頃にそっくりだわ』
ええと……。理由は…………主催者がおばあ様の旧友で、懐かしいものを見たいと仰ったから、だったはず。そんな理由でお姉様は形見のイヤリングをファレナード侯爵夫人にお見せしていて、その際にお願いをされて身につけた。
そんな姿を、偶然見掛けて――わたくしの中での評価が、一変。ずっと欲しくてやっと買ってもらったイヤリングが霞んで、どうしてもソレをつけたくなりましたの。
((レナエルのおばあ様は、わたくしにとっても一応はおばあ様。形見をわたくしがつけていても、不思議には思われませんわよね))
あの人はお姉様への対応が云々と、わたくし達にいつも面倒なことを言う人で嫌いだった。死んだ時は3人で大笑いしてパーティーを開くくらいに、大嫌いだった。
だから殆ど話したことはなかったけれど、そんな内情を知る人はいませんものね。
『実はわたくしの方がおばあ様っ子で、お姉様が譲ってくれた』。とでも言っておけば、問題なく社交界につけていけますわね。
((…………何も、問題はなし。なら、我慢する必要はありませんわ。もらいにいきましょう))
そうしてわたくしは移動を始め、同じ階の端っこにある狭い部屋――レナエルの部屋を訪れてみたら、あら? 居ない。そこで偶々近くに居た使用人に居場所を聞いてみると、ガーテンテーブルで花を眺めているみたい。
((綺麗な肌が焼けてしまうから、外には行きたくありませんわね。すぐここへと呼び寄せ――るのは、やめておきましょうか))
もちろん、あの女のためではありませんわ。
さっき話した使用人によると、東の空に虹が出ているらしい。この地域では珍しいものをしっかり見るため外に出て、お父様達と一緒に鮮明な虹を楽しんだ後、ガーテンテーブルが設置されている場所へと進んでゆく。
そうして目的地に着くと――
「…………すぅ、すぅ、すぅ……」
レナエルはイスに座ったまま、気持ちよさそうに眠っていた。
((はぁ、手間のかかる人間ですわね。わざわざ起こさないといけないなんて――そうですわ。折角だし、楽しい方法で起こしてあげましょう))
確か先週お父様宛に、シュールストなんとかというすごく臭い食べ物が届いていた。その方にとってはご馳走みたいだけれど、わたくし達にとってゴミ同然ですものね。
あれをレナエルの鼻の前で開け、悪臭を思い切り嗅がせましょう。
((臭(くさ)いは、ブス姉様にピッタリ。名案ですわね。一旦邸内に戻り――あら? なにかしら?))
一旦邸内に戻り、準備をしましょう。そう思っていたら、レナエルの口がもごもごと動き出しました。
そして――あらあらまあまあ。こんな面白い寝言が、飛び出しましたの。
「…………オーガスティン・テデファリゼ様……。……………………す、き……。………………だい、すき…………。…………あしたは、たのしみ……」
ピンク色を基調とした、わたくしにぴったりな可愛らしいお部屋。特注のドレッサーの前で、昨日もらったお父様とお母様からのプレゼント――イヤリングをつけてみていたわたくしは、昨夜の姉の耳元を思い出していた。
『まぁ……っ、よくお似合いよ。あの人の若い頃にそっくりだわ』
ええと……。理由は…………主催者がおばあ様の旧友で、懐かしいものを見たいと仰ったから、だったはず。そんな理由でお姉様は形見のイヤリングをファレナード侯爵夫人にお見せしていて、その際にお願いをされて身につけた。
そんな姿を、偶然見掛けて――わたくしの中での評価が、一変。ずっと欲しくてやっと買ってもらったイヤリングが霞んで、どうしてもソレをつけたくなりましたの。
((レナエルのおばあ様は、わたくしにとっても一応はおばあ様。形見をわたくしがつけていても、不思議には思われませんわよね))
あの人はお姉様への対応が云々と、わたくし達にいつも面倒なことを言う人で嫌いだった。死んだ時は3人で大笑いしてパーティーを開くくらいに、大嫌いだった。
だから殆ど話したことはなかったけれど、そんな内情を知る人はいませんものね。
『実はわたくしの方がおばあ様っ子で、お姉様が譲ってくれた』。とでも言っておけば、問題なく社交界につけていけますわね。
((…………何も、問題はなし。なら、我慢する必要はありませんわ。もらいにいきましょう))
そうしてわたくしは移動を始め、同じ階の端っこにある狭い部屋――レナエルの部屋を訪れてみたら、あら? 居ない。そこで偶々近くに居た使用人に居場所を聞いてみると、ガーテンテーブルで花を眺めているみたい。
((綺麗な肌が焼けてしまうから、外には行きたくありませんわね。すぐここへと呼び寄せ――るのは、やめておきましょうか))
もちろん、あの女のためではありませんわ。
さっき話した使用人によると、東の空に虹が出ているらしい。この地域では珍しいものをしっかり見るため外に出て、お父様達と一緒に鮮明な虹を楽しんだ後、ガーテンテーブルが設置されている場所へと進んでゆく。
そうして目的地に着くと――
「…………すぅ、すぅ、すぅ……」
レナエルはイスに座ったまま、気持ちよさそうに眠っていた。
((はぁ、手間のかかる人間ですわね。わざわざ起こさないといけないなんて――そうですわ。折角だし、楽しい方法で起こしてあげましょう))
確か先週お父様宛に、シュールストなんとかというすごく臭い食べ物が届いていた。その方にとってはご馳走みたいだけれど、わたくし達にとってゴミ同然ですものね。
あれをレナエルの鼻の前で開け、悪臭を思い切り嗅がせましょう。
((臭(くさ)いは、ブス姉様にピッタリ。名案ですわね。一旦邸内に戻り――あら? なにかしら?))
一旦邸内に戻り、準備をしましょう。そう思っていたら、レナエルの口がもごもごと動き出しました。
そして――あらあらまあまあ。こんな面白い寝言が、飛び出しましたの。
「…………オーガスティン・テデファリゼ様……。……………………す、き……。………………だい、すき…………。…………あしたは、たのしみ……」
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