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第1話 理由~妹・ザラside~ ザラ視点(2)

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((へぇ、へぇ~。うふふふふ。昨夜のアレは、そうことだったんですのねぇ))

 オーガスティン・テデファリゼ様。好き。大好き。そんなレナエルの寝言を聞いたわたくしは、夜会での出来事を思い出していた。

((あら? あれは、レナエルと……。テデファリゼ家の、オーガスティン様……?))

 昨夜は姉妹で招待されていて、とある公爵家の嫡男様とお喋りをしている時だった。偶々出入口を見た際に、手を繋いで会場から出ていく2人の姿が見えた。

((珍しい組み合わせ、ですわね。なんなのかしら……?))

 二人は学院で同学年な上揃って現生徒会メンバーだけど、特別親しくはしていなかったし――。ウチことニーザリア家は子爵家で、あちらは侯爵家。
 身分も大きく違っているため二人に大した接点がなく、わたくしは何度も何度も首を傾げていた。

((二人で抜け出すということは、二人きりで話をしたいということで……。そういうこと、になりますわよね))

 男女の話をする。こういったケースではそれが常識、なのだけれど……。

((レナエルとオーガスティン様。二人のそういう噂が流れたことは、一度もなかった))

 ソレは二学年下だから気付かなかったということではないし、実際に、二人はそのあと十数分で戻っても来た。なので少なくとも恋に関するものじゃないと感じ、その日の夜会ではわたくし好みの男性が居たこともあって、そのことはどうでもよくなっていた。


 ――でも、それは大きな間違いだった――。


「…………オーガスティン・テデファリゼ様……。……………………す、き……。………………だい、すき…………。…………あしたは、たのしみ……」


 多分――ううん、きっとそう。二人はデートの約束をしていて、レナエルはオーガスティン様を、オーガスティン様はレナエルを愛していた。
 でも関係を明らかにしてしまったら、わたくしが興味を持つと――わたくしに奪われると思っていた。だから誰にも悟られないよう秘密裏に交際を行っていて、おそらくは奪われないような状態を作った上で――お父様とお母様も口出しをできない状態にした上で、公表するつもりだったのでしょうね。

((けれど……。昨日の夜と今、大きなミスをしてしまった))

 わたくしが嫡男様に夢中になっていて、これなら大丈夫と思ったはず。どうしても二人きりで会いたくなった二人はコッソリと抜け出して、そこを偶然わたくしに見られてしまった。
 会えることがと~っても嬉しくって、つい寝言で零してしまった。

((……学院の人達だけではなく、わたくしの目も欺くだなんて。レナエルにくせに、やりますわね))

 だ・け・ど。貴方の作戦は、ここで終わってしまう。

((うふふふ。レナエルお姉様・・・・・・・、お姉様の読みは大正解よ))

 戦の神アレースのような、雄々しい顔。まるで大樹のような、大きく屈強な肉体。常に自信に満ちた雰囲気。
 なぜか・・・今までは気になっていなかったのだけれど、今はすごく素敵に思えていてね――。

 交際して、婚約して、結婚をしたいと思っていますの。

 だからね、レナエル。イヤリングをもらおうと思っていたけど、それはやめる。これからわたくしは、貴方が大好きな人をもらいますわぁ。
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