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第2話 理由~姉レナエルside~ レナエル視点(1)

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「はぁ……。どうしてこんなことになってしまうの……」

 気分転換に、お庭に向かう前のこと。私は昨夜の出来事を思い出し、ゆうべからすっかり癖となってしまったため息をついていました。

『レナエル・ニーザリア。俺はお前を気に入った。欲しいものはなんでも買ってやるから俺の妻となれ』

 夜会の最中に突然声をかけられ、手を引っ張られて中庭に連れてこられた私を待っていたのは、そんなお言葉。テデファリゼ侯爵家のオーガスティン様は生徒会活動以前から私が気になっていらしゃったらしく、ついには『どうしても欲しい』と思うようになられたそうです。

『高級なネックレスやリング、イヤリング、なんだって与えてやる。おまけに侯爵夫人になって、伯爵以下の人間に威張れるようになるんだぞ? 最高だよな? 断るはずがないよな?』
『……申し訳ございません。私は現在どなたとも交際を行う予定はなく、オーガスティン様は大変魅力的な男性であらせられるのですが、お断りをさせて――』
『その感情は、プライベートの俺しっかりと理解すればあっという間に変わる。だからとりあえず、明日――は父上と行う用事があるから、無理だな。明後日の日曜の正午にお前の屋敷を訪ねるから、デートをしようじゃないか』
『お、オーガスティン様。申し訳ありませんが――』
『乗り気じゃないその気持ちは、瞬く間に変化することになる。それを俺は分かっているから、お前のためにも・・・・・・・やめるつもりはない。明後日の正午、だからな』

 オーガスティン様は、聞く耳をまったくお持ちではありませんでした。そのため何を言っても無駄で、一方的に約束が結ばれてしまったのです。

「オーガスティン様は、非常に強引な面を持つ方だった……。あの様子なら、明日断っても諦めることはありませんよね……」

 そうすればきっとあの方は、お家の力を使って強制的に関係を結ぼうとしてきます。これでは進めている計画を実行した際に、大きな支障が出かねません。
 それに……。

「問題は、こちらだけではないのですよね……」

 この出来事によって、別の――これ以上の問題が、発生することが確定してしまいました。
 オーガスティン様の幼馴染であらせられる、ハートネル侯爵家のマリー様。清楚で穏やかな方ではあるのですが、この方はオーガスティン様が関わると――









 ※本日はあと2回(現在の予定では午後5時前後と午後7時前後に)、投稿をさせていただきます。
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