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第2話 理由~姉レナエルside~ レナエル視点(2)
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「ねえ貴方。もしかして、オーガスティンを狙っているのかしら?」
それは、半年前――新生徒会が発足して、1か月ほどが経った頃でした。ある日マリー様によって音楽室に呼び出され、いきなりギロリと睨みつけられたのです。
「オーガスティンは生徒会副会長で、貴方は会計。同じ生徒会だからまあ、一緒に活動をするのは当たり前なのだけれど――。わたしが彼の姿を目にした時はいつも、貴方が隣に居るの。……オーガスティンの気を引きたくて、適当な理由付けをしてベタベタくっついているんじゃないでしょうね?」
「……い、いえ、そんな気持ちはございません。そちらは私の意思ではなく、先生方からのご要望によるものでございます」
その頃は偶々二人で行うお仕事が多くあって、仕事をこなすためによく行動をしているだけ。その証拠に来週になれば、私は生徒会長と行動を共にすることが多くなります――。
マリー様といえば、穏やかでお優しい方として有名でした。ですのであまりも違う言動に戸惑いながらも説明を行い、
「本当にそうなのね? 嘘じゃないのね?」
「は、はい。嘘ではございませ――」
「本当なのね? 嘘じゃないのね?」
「え、ええ、本当でございます。嘘ではなく――」
「あのね、わたしはオーガスティンが好きなの。大好きなの。運命の相手だって分かっているの。だから長所も短所もぜ~んぶが大好きなの。愛おしくって仕方がなくって、彼と結婚することが人生最大の夢なの。というかね、それもまた運命なのよ」
「そ、そう、なのですね……。そ――」
「だからねわたしはね? オーガスティンの周りでメスがウロチョロするのが許せないの。もしもそのメスにその気があるのなら、全力で排除するつもりなの」
「ぁ、は、はい……。い、いえ、ございません……。私にそのような内心はなく――」
「信じていいのね? 貴方は害のあるメスではないのね? 彼には微塵も興味がないというのね? オーガスティンは沢山の魅力あふれる男の子なんだけどその魅力に気付いていなくって異性としてはまったく見てはいないという認識でいいのかしら?」
「……は、はい……。全く、ございません。交際などを考えたことは、一度もございません……」
「……………………そう。ふぅ~、よかったわぁ。ごめんなさいね、レナエル様。わたしったら、酷い勘違いをしてしまっていましたわ」
夥しい量の狂気を放っていたマリー様は途端に笑顔になり、様子は再度一変。あっという間にいつも通りのご様子になり、お詫びとして沢山の甘いものを――カフェテリアでシフォンケーキとショートケーキとモンブランとプディングとアールグレーを御馳走していただき、上機嫌で去られたのでした。
「……幼馴染のマリー様は……。オーガスティン様が関わると、別人のようになってしまう御方……」
一点だけを見続ける異様な目と異常な雰囲気を、間近で経験した私には分かります。
オーガスティン様が望んだ、そんなものは関係ありません。オーガスティン様に好意を持たれていると知られてしまえば…………。私は間違いなく、消されてしまいます……。
「……オーガスティン様に諦めてくださる気配はなく、マリー様が察するのは時間の問題……」
あの方と再びお会いできるのは――あの作戦の決行日は、次の金曜日。5日間経てば心配は要らなくなりますが、このままでは間違いなく、その日まで生きてはいられません。
仮に逃げたとしても、探されて…………。殺されてしまうでしょう……。
「あとちょっと、なのに……。どうすればいいのでしょうか……? 何か、打つ手はないのでしょうか……?」
そうして私はその問題の対応策を考え始め、問題が問題ですのでなかなか浮かびません。ですのでやがて気分転換にガーデンテーブルへと移動し、そうしていると――
「お姉様。わたくしも急に、あの御方を好きになってしまいましたの。だから、うふふ。お姉様には手を引いてもらって、隣のお席はわたくしがもらいますわよ」
――妹のザラが、こんなことを言い出したのでした。
それは、半年前――新生徒会が発足して、1か月ほどが経った頃でした。ある日マリー様によって音楽室に呼び出され、いきなりギロリと睨みつけられたのです。
「オーガスティンは生徒会副会長で、貴方は会計。同じ生徒会だからまあ、一緒に活動をするのは当たり前なのだけれど――。わたしが彼の姿を目にした時はいつも、貴方が隣に居るの。……オーガスティンの気を引きたくて、適当な理由付けをしてベタベタくっついているんじゃないでしょうね?」
「……い、いえ、そんな気持ちはございません。そちらは私の意思ではなく、先生方からのご要望によるものでございます」
その頃は偶々二人で行うお仕事が多くあって、仕事をこなすためによく行動をしているだけ。その証拠に来週になれば、私は生徒会長と行動を共にすることが多くなります――。
マリー様といえば、穏やかでお優しい方として有名でした。ですのであまりも違う言動に戸惑いながらも説明を行い、
「本当にそうなのね? 嘘じゃないのね?」
「は、はい。嘘ではございませ――」
「本当なのね? 嘘じゃないのね?」
「え、ええ、本当でございます。嘘ではなく――」
「あのね、わたしはオーガスティンが好きなの。大好きなの。運命の相手だって分かっているの。だから長所も短所もぜ~んぶが大好きなの。愛おしくって仕方がなくって、彼と結婚することが人生最大の夢なの。というかね、それもまた運命なのよ」
「そ、そう、なのですね……。そ――」
「だからねわたしはね? オーガスティンの周りでメスがウロチョロするのが許せないの。もしもそのメスにその気があるのなら、全力で排除するつもりなの」
「ぁ、は、はい……。い、いえ、ございません……。私にそのような内心はなく――」
「信じていいのね? 貴方は害のあるメスではないのね? 彼には微塵も興味がないというのね? オーガスティンは沢山の魅力あふれる男の子なんだけどその魅力に気付いていなくって異性としてはまったく見てはいないという認識でいいのかしら?」
「……は、はい……。全く、ございません。交際などを考えたことは、一度もございません……」
「……………………そう。ふぅ~、よかったわぁ。ごめんなさいね、レナエル様。わたしったら、酷い勘違いをしてしまっていましたわ」
夥しい量の狂気を放っていたマリー様は途端に笑顔になり、様子は再度一変。あっという間にいつも通りのご様子になり、お詫びとして沢山の甘いものを――カフェテリアでシフォンケーキとショートケーキとモンブランとプディングとアールグレーを御馳走していただき、上機嫌で去られたのでした。
「……幼馴染のマリー様は……。オーガスティン様が関わると、別人のようになってしまう御方……」
一点だけを見続ける異様な目と異常な雰囲気を、間近で経験した私には分かります。
オーガスティン様が望んだ、そんなものは関係ありません。オーガスティン様に好意を持たれていると知られてしまえば…………。私は間違いなく、消されてしまいます……。
「……オーガスティン様に諦めてくださる気配はなく、マリー様が察するのは時間の問題……」
あの方と再びお会いできるのは――あの作戦の決行日は、次の金曜日。5日間経てば心配は要らなくなりますが、このままでは間違いなく、その日まで生きてはいられません。
仮に逃げたとしても、探されて…………。殺されてしまうでしょう……。
「あとちょっと、なのに……。どうすればいいのでしょうか……? 何か、打つ手はないのでしょうか……?」
そうして私はその問題の対応策を考え始め、問題が問題ですのでなかなか浮かびません。ですのでやがて気分転換にガーデンテーブルへと移動し、そうしていると――
「お姉様。わたくしも急に、あの御方を好きになってしまいましたの。だから、うふふ。お姉様には手を引いてもらって、隣のお席はわたくしがもらいますわよ」
――妹のザラが、こんなことを言い出したのでした。
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