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第2話 俺と彼女の出会い シブリアン視点
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俺が『地上の女神』と出会ったのは、今から1か月前。ロバートに連れられて、ヤツ行きつけのリストランテ・ファルーラスを訪れた時だった。
「…………………………」
「? シブリアン? ボーっとしてどうしたんだ?」
「…………………………」
「おーい、シブリアン? オレの声が聞こえてるか? おーいっ、おーいっ! ボーっとしてどうしたんだ?」
「…………………………えっ? な、なんでもない。なんでもない」
――かわいい――。
心の底からそう感じたのは、生まれて初めてだった。
ファルーラスで給仕をしていたクロエ。その姿はまるで、美の女神アフロディーテの子ども。神が戯れで地上に降り、人間に成りすまし人間界を楽しんでいると感じるほどだった。
((…………なんて可愛らしいんだ。彼女と話しがしたい。彼女を知りたい))
そう思うのは当然で、だからその後コッソリ声をかけるのも必然だった。
仕事が終わる時間を確認し、彼女が自由になると俺が贔屓にしているリストランテに招待し、そのまま2人きりでディナーをしながら2時間程度お喋りをする。
その間に俺はクロエという人間を詳しく知り、
『趣味ですか? 趣味はボランティアです。困っている人を助けるのが好きなんです』
『今日のお誘いを受けた理由、ですか? わたし、人を見る目には自信があるんです』
『そ、そうなんだ』
『シブリアン様の瞳は澄んでいて、真面目でお優しい方だと一目で分かりました。わたしが嫌な思いをするようなことはなさらない方だと確信があって、今この場にいます』
などなど。
明るく元気がある、思い遣りに溢れた性格。外見と同じく中身も良い点ばかりしかない人なのだと知り、ますます好きになる。LIKEはあっという間にLOVEとなり、あっという間にクロエを『女性』として見るようになってしまったのだった。
((クロエと婚約したい。クロエと結婚したい。……でも、無理だ……))
彼女は平民ではあるものの零落した名家の血を引いていて、外見中身だけでなく血統も素晴らしいものを持っている。しかしながら俺は当主命令でアドリエンヌと婚約を結んでしまっていて、『家』と『家』が絡むものなため個人的な都合で解消なんてできやしない。
この恋は始まった瞬間から、成就しないと決まっていたのだ。
((…………本当に好きな人と人生を歩んでいけないなんて……。なんて人生なんだ……))
あの時、俺はあらゆるものを恨んだ。
勝手に婚約を決めた父上とアドリエンヌの父、女に生まれたせいで婚約をする羽目になってしまった幼馴染のアドエアンヌ。
望まない婚約に関わる人間全てを恨み、憎み、絶望し――。
けど。
そんな時だった。
俺の女神クロエが、暗闇の中うな垂れる俺に光をもたらしてくれたのだった。
『わたしもシブリアン様も惹かれておりまして……もっと……これからもずっと、お話しをさせていただきたいと思っています。……ご迷惑をおかけしないと、誓います。今後も、わたしと会ってくださりませんか? 二人きりの時だけは…………わたしを、あなた様の恋人にしてはくださいませんか……?』
そうだ。そうだった! その手があった!
婚約しなくても関係は持てる。結婚しなくても愛を注ぐことだってできる!!
「クロエ……! ああっ、ああ!! 今後も会おう!! こうして会っている時は、恋人で居よう……!!」
そうして俺達は、その日――。
この広い世界でたった二人しか知らない、秘密の関係を結んだのだった――。
「…………………………」
「? シブリアン? ボーっとしてどうしたんだ?」
「…………………………」
「おーい、シブリアン? オレの声が聞こえてるか? おーいっ、おーいっ! ボーっとしてどうしたんだ?」
「…………………………えっ? な、なんでもない。なんでもない」
――かわいい――。
心の底からそう感じたのは、生まれて初めてだった。
ファルーラスで給仕をしていたクロエ。その姿はまるで、美の女神アフロディーテの子ども。神が戯れで地上に降り、人間に成りすまし人間界を楽しんでいると感じるほどだった。
((…………なんて可愛らしいんだ。彼女と話しがしたい。彼女を知りたい))
そう思うのは当然で、だからその後コッソリ声をかけるのも必然だった。
仕事が終わる時間を確認し、彼女が自由になると俺が贔屓にしているリストランテに招待し、そのまま2人きりでディナーをしながら2時間程度お喋りをする。
その間に俺はクロエという人間を詳しく知り、
『趣味ですか? 趣味はボランティアです。困っている人を助けるのが好きなんです』
『今日のお誘いを受けた理由、ですか? わたし、人を見る目には自信があるんです』
『そ、そうなんだ』
『シブリアン様の瞳は澄んでいて、真面目でお優しい方だと一目で分かりました。わたしが嫌な思いをするようなことはなさらない方だと確信があって、今この場にいます』
などなど。
明るく元気がある、思い遣りに溢れた性格。外見と同じく中身も良い点ばかりしかない人なのだと知り、ますます好きになる。LIKEはあっという間にLOVEとなり、あっという間にクロエを『女性』として見るようになってしまったのだった。
((クロエと婚約したい。クロエと結婚したい。……でも、無理だ……))
彼女は平民ではあるものの零落した名家の血を引いていて、外見中身だけでなく血統も素晴らしいものを持っている。しかしながら俺は当主命令でアドリエンヌと婚約を結んでしまっていて、『家』と『家』が絡むものなため個人的な都合で解消なんてできやしない。
この恋は始まった瞬間から、成就しないと決まっていたのだ。
((…………本当に好きな人と人生を歩んでいけないなんて……。なんて人生なんだ……))
あの時、俺はあらゆるものを恨んだ。
勝手に婚約を決めた父上とアドリエンヌの父、女に生まれたせいで婚約をする羽目になってしまった幼馴染のアドエアンヌ。
望まない婚約に関わる人間全てを恨み、憎み、絶望し――。
けど。
そんな時だった。
俺の女神クロエが、暗闇の中うな垂れる俺に光をもたらしてくれたのだった。
『わたしもシブリアン様も惹かれておりまして……もっと……これからもずっと、お話しをさせていただきたいと思っています。……ご迷惑をおかけしないと、誓います。今後も、わたしと会ってくださりませんか? 二人きりの時だけは…………わたしを、あなた様の恋人にしてはくださいませんか……?』
そうだ。そうだった! その手があった!
婚約しなくても関係は持てる。結婚しなくても愛を注ぐことだってできる!!
「クロエ……! ああっ、ああ!! 今後も会おう!! こうして会っている時は、恋人で居よう……!!」
そうして俺達は、その日――。
この広い世界でたった二人しか知らない、秘密の関係を結んだのだった――。
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