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第4話 出発と、再会 アニエス視点(1)

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「ねえエリス。やっぱり僕も、一緒に行かせてくれないかな?」
 あの日から数日後の、早朝のことでした。お部屋で出発のための準備を整えていたら、ノックと共にクリストフ様がいらっしゃりました。

 ――一緒に行かせて欲しい――。

 今日は幼い頃からお世話になっていた、おば様の――元婚約者の母親の、12回目の命日。家族や近しい人々が集まって、お墓にお祈りを捧げる日。以前の婚約者かつ幼馴染である男性と自分抜きで会うのが不安で、以前から何度も同行を希望されていたのです。

「ほら、僕は君の婚約者。もうすぐエリスの夫となる人間でしょう? 君自身もう一人の母親と慕っていた方なのだから、婚約のご報告などを含めた挨拶をさせてもらいたいと思っているんだよ」
「ありがとうございます、クリストフ様。ですが……先日お伝えしましたように、お断りをさせざるを得ないのですよ」

 命日のお墓参りは、おじ様が――シルスアルズ子爵家の当主が開くもの。即ちおじ様が招待した人間しか出席できないのです。

「うん、それは理解している。だからエリスに頼んで欲しいんだ。その行事に僕も加えて欲しいと」
「……申し訳ございません。おじ様の希望に背くことは出来かねます」

 こちらは深い関係にある人しか参加できないものですし、なによりおじ様は今回の件に立腹されている――わたし達のために反故を怒ってくれていて、お父様を永久に出席禁止にされているほどなのです。
 そんな場にこの人が参加できるはずがありませんし、なにより、クリストフ様が近くに居たら動けなくなってしまう。もしおじ様が『今回は誰でも自由に参加していい』という条件を出していたとしても、その要求は呑みません。

「……なんとか、ならないかな?」
「すみません。わたしでもどうにもならない問題でございます」
「……………………………………………分かったよ。気を付けて」

 シルスアルズ家と直接話しをして、どうにか参加の許可を得たい。そんな雰囲気が漏れだしていますが、もしもクリストフ様がそんな要求をしてしまったら大変なことになってしまう。
 そのお話を――あまりにも無礼な話を貴族界で広められてしまうとあちこちから白眼視を向けられることになってしまうため、しぶしぶ、本当にしぶしぶ引き下がりました。

「ありがとうございます。明日の夕方には戻ってまいります」

 そうしてようやく邪魔をするものはなくなり、それからおよそ20分後に出発。今日はアリズランド家のものではなく、お母様が手配してくださったウチの馬車に乗り込んで、おば様が眠る場所を目指したのでした。

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