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幕間 過去の記憶 俯瞰視点

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「フィアナ、ごめんね……。僕は先に、あっちの世界に行くよ……」
「ルシアンさん……。ルシアンさん……っ」

 とある家の中。そこには、一組の男女がいました。
 ベッドにいる衰弱した男性は、画家のルシアン・エル。そんな彼の手を強く握り締めている女性は、薬師見習いのフィアナ・エル。
 二人は仲睦まじい夫婦であり、もうじき離別してしまう者達。
 ルシアンは嫉妬に狂った同業者によって少しずつ毒物を盛られており、薬師やフィアナが必死に看病したものの効果はなし。その結果今日、ついに悲しみの時が訪れてしまったのです。

「…………わたしに、もっと実力があれば……。世界で一番の薬師になれていたら、きっとルシアンさんを助けられたのに……。ごめん、なさい……」
「ううん……。フィアナは沢山頑張ってくれて、だからこそここまで生きていられたんだよ……。ありがとう、ね」

 ルシアンはゆっくりと穏やかに笑い、その後同じくゆっくりと、もう片方の手にある小指を立てました。

「君を幸せにすると約束したのに、殆どできなかった。だから僕に、チャンスをくれないかな?」
「…………え…………? ちゃん、す……?」
「生まれ変わっても恋人、夫婦になって、今度こそ約束を守りたいんだ。……フィアナ。こんな僕ですが……次も、結婚をしてくれませんか?」
「もっ、もちろんですっ! 結婚しますっ! させてくださいっ! ルシアンさんっ! わたしをまたっ、あなたのお嫁さんにしてくださいっ!」

 フィアナは涙混じりで何度も何度も頷き、もう残された時間がないから。ルシアンの小指に――お揃いの結婚指輪が光る隣の指に、自身の小指を絡めました。

「ルシアンさんっ! 約束、しましたからねっ! 絶対に絶対に、次もわたしと結婚してくださいね……っ!」
「二度も約束を破ったら、今度こそ、この指輪をはめる資格がなくなっちゃう。次もちゃんと結婚を申し込ませてもらって、次は必ず、キミを幸せにするよ」
「はい……っ。はい……っっ。楽しみに、待って、ます……っ」
「あはは、ありがとう……。それじゃあ、僕は……。上で、見守ってるよ……。フィアナ……。憧れの薬師になれる、ように……。あっちで、おうえん、してる、から、ね………………」




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