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第14話 実行 エレーヌ視点(2)
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「リュドヴィック様っ! 意識などに異常はございませんかっ!?」
「………………ええ、エレーヌ様。それらは、大丈夫のようです。ただ……」
「た、ただ……? なん、でしょうか……?」
「貴方様の状況を再現した、その結果は………………成功、ではあるのですが……。失敗をしたようです……」
目を覚まし、ゆっくりと上体を起こされたリュドヴィック様。そうして出たお声は、歯切れの悪いものでした。
「僕が、リアムだった頃の記憶――貴方様の前世であるノエル様と過ごした記憶は、蘇りました。ですが思い出したのは、どんなことがあったのか、という断片的なものだけ。まるで歴史年表を眺めているような感覚でして、リアムの心を共有することはできず、『拒絶』の手がかりは掴めませんでした」
「そう、なのですね。ですが、リュドヴィック様。確実に前進しています。特定に近づいていますよっ」
「……それも、そうですね。ありがとうございます、エレーヌ様」
きっと、私のためにそうしてくださっているのだと思います。頷かれたリュドヴィック様は、明るく微笑んでくださいました。
「ニック、みんなもありがとう。処置、助かったよ」
「しっかりとコブができておりますので、問題はないでしょうな。とはいえ、リュドヴィック様」
「分かっているよ。二度目の挑戦は、決してしないと約束するよ」
打撲に慣れていても、ああいったことを続けてしまえば大変なことになります。ですのですぐにお顔が左右に動き、「それに……。エレーヌ様」と胸元に手が添えられました。
「リアムの『心』に関する部分には、鍵のようなものがかかっているように思えるんですよ。なのできっと、このやり方ではいくらやっても駄目。その鍵をどうにかしないと、その部分を理解できるようにはならないのだと感じます」
「…………。心に鍵のようなもの、ですか……」
「恐らく僕がこれまで感じていたリアムの感情は、そこから漏れ出していたもの。だから色々と訴えているものの、曖昧な部分が多かったんだと思います」
「そう、ですね。それでしたら、納得がいきますね。……鍵……。私には――ノエルには、なかったもの……」
「まるで僕にさえも、心を知られるのを嫌がっているような……。自ら殻に入ったような感覚でして。きっとリアムに、何かしらの理由原因があるのだと思います。……そしてそれを理解して『鍵』を解錠するには、貴方様と過ごす時間が必要、そうも感じるのですよ」
私の近くにいると、心の奥が――鍵が、カタカタと動いている。今のリュドヴィック様の中では、そんなことが発生しているようです。
「ですのでこれから、そのあとも――。貴方様のお時間をいただいても、構いませんでしょうか?」
「もちろんです。お傍に居させてくださいっ」
この方は、前世で愛した方。それに――お優しくて、一緒にいて楽しいと思う方ですので。即答をさせていただきました。
ですので私達は時間を共有してゆくことになって、ハーラント侯爵家のお屋敷に招待していただいたり、この国の観光地を訪れたり。リュドヴィック様に公務がある時以外は、二人きりで過ごすことが当たり前になりました。
そしてその結果、やがて――。
とある変化が、起き始めるのでした。
「………………ええ、エレーヌ様。それらは、大丈夫のようです。ただ……」
「た、ただ……? なん、でしょうか……?」
「貴方様の状況を再現した、その結果は………………成功、ではあるのですが……。失敗をしたようです……」
目を覚まし、ゆっくりと上体を起こされたリュドヴィック様。そうして出たお声は、歯切れの悪いものでした。
「僕が、リアムだった頃の記憶――貴方様の前世であるノエル様と過ごした記憶は、蘇りました。ですが思い出したのは、どんなことがあったのか、という断片的なものだけ。まるで歴史年表を眺めているような感覚でして、リアムの心を共有することはできず、『拒絶』の手がかりは掴めませんでした」
「そう、なのですね。ですが、リュドヴィック様。確実に前進しています。特定に近づいていますよっ」
「……それも、そうですね。ありがとうございます、エレーヌ様」
きっと、私のためにそうしてくださっているのだと思います。頷かれたリュドヴィック様は、明るく微笑んでくださいました。
「ニック、みんなもありがとう。処置、助かったよ」
「しっかりとコブができておりますので、問題はないでしょうな。とはいえ、リュドヴィック様」
「分かっているよ。二度目の挑戦は、決してしないと約束するよ」
打撲に慣れていても、ああいったことを続けてしまえば大変なことになります。ですのですぐにお顔が左右に動き、「それに……。エレーヌ様」と胸元に手が添えられました。
「リアムの『心』に関する部分には、鍵のようなものがかかっているように思えるんですよ。なのできっと、このやり方ではいくらやっても駄目。その鍵をどうにかしないと、その部分を理解できるようにはならないのだと感じます」
「…………。心に鍵のようなもの、ですか……」
「恐らく僕がこれまで感じていたリアムの感情は、そこから漏れ出していたもの。だから色々と訴えているものの、曖昧な部分が多かったんだと思います」
「そう、ですね。それでしたら、納得がいきますね。……鍵……。私には――ノエルには、なかったもの……」
「まるで僕にさえも、心を知られるのを嫌がっているような……。自ら殻に入ったような感覚でして。きっとリアムに、何かしらの理由原因があるのだと思います。……そしてそれを理解して『鍵』を解錠するには、貴方様と過ごす時間が必要、そうも感じるのですよ」
私の近くにいると、心の奥が――鍵が、カタカタと動いている。今のリュドヴィック様の中では、そんなことが発生しているようです。
「ですのでこれから、そのあとも――。貴方様のお時間をいただいても、構いませんでしょうか?」
「もちろんです。お傍に居させてくださいっ」
この方は、前世で愛した方。それに――お優しくて、一緒にいて楽しいと思う方ですので。即答をさせていただきました。
ですので私達は時間を共有してゆくことになって、ハーラント侯爵家のお屋敷に招待していただいたり、この国の観光地を訪れたり。リュドヴィック様に公務がある時以外は、二人きりで過ごすことが当たり前になりました。
そしてその結果、やがて――。
とある変化が、起き始めるのでした。
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