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6話(7)

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「お、お二人は、こ、これからどうっ。どう、なされる、おつもりなのですか……?」

 ティルとハイタッチをしていたら、眼前にいる国王が盛大にどもった。

「お二人には忠誠を誓います。ですのでどうか、どうか命までは……っ。せめて息子の命で、お怒りをお鎮めください……!」
「息子を犠牲にしての、保身って。コイツ、どこまでも最低なヤツね……」
「どいつもこいつも、常人の常識を軽々と超えてくるな。何度呆れてもきりがない」

 私達は一緒に肩を竦め、私は腕組みをする。
 命云々は無視していいけど、『これから』についてはちゃんと考えないといけない。『とりあえず潰さないと』で動いたから、王関連のその後は何も決めてないのよね。

「こういう問題は、ティルにお任せするのが一番だと思う。どうするべきかしら?」
「そうだな……。まずは、政権について。この者達の地位を全て剥奪し、新たな王を用意しなければならない」

 そのために、こうしたんだもん。これは最優先事項よね。

「で、だ。それについてなのだが、新たな王は俺達以外がなるべきだと考えている。理由はミファの最終目標が『ノルスへ復讐をするために英雄となる』で、活躍するため各地を動き回らないといけないからな」
「王になったら居場所が固定されちゃうから、それがいいわね。ティル的には誰が適役だと思う?」
「ギルドマスターの、レノン・アルジェ殿だな。彼は第一王子の発言に異を唱え、損得勘定抜きで俺達への協力を申し出てくださった。アルジェ殿であれば職権乱用の心配はなく、職務も適切にこなしてくださる事だろう」
「確かに、一番の人材ね。でも、兼任できるのかしら――ああそっか。できるわね」

 実は王の仕事の9割以上は、優秀な側近がやってくれている。そのためぶっちゃけ、3歳児が務めても左程悪影響はないのよね。

「有事の際の指揮など、大事な部分だけをお任せすれば問題はない。それに、表向きは現政権を維持している事にする――クーデターは公表せず王族は健在だとしておくから、更に負担は減るはずだ」
「??? 表向きは、こいつらが王なの? それはどうして?」
「ミファや俺やギルド関係者が国を倒したとなると、周りの国は警戒する。警戒されると不必要な牽制等が起こり、余計な手間を取られる。更にそうなると他国に行き来しにくくなるから、他の国や国民に対してもこの変化は隠しておいた方がいいんだ」

 これから魔物の侵攻第2弾があるなどまだまだ色々な面で忙しいし、他国に移動できなくなったら復讐が円滑に進まなくなっちゃう。私もティルも元々権力には興味ないんだし、これがベストね。

「要するに俺達は引き続き新人冒険者として活動し、当面は魔物の再侵攻に備える。少なくとも第2波が来るまでは、クーデター前と同じという事だ」
「はじめっから国税を利用するつもりはなかったし、オッケー分かったわ。じゃあ騎士団の人達にはこの件を伝えて、そのあとアルジェさんに打診して――っと、その前にやることがあったわ」

 いけない、いけない。大事なアレを、忘れてた。

「各国の王は、王冠――王の証を代々所有してる。もしも何かの隙に私達を裏切らないように、一番の貴重品を預かっておきましょうか」
「ぁ、貴方様は……。どうして、王族しか知りえない情報を……?」
「そこは、どうでもいいのよ。はい、出して」

 元王族というのは内緒なので、詳しく話さず王冠をゲット。これで絶対に裏切りの心配はなくなったので、私達は彼を連れて説明に回り、それから乗ってきた馬車を使ってギルドに戻ったのでした。
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