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6話(1)
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「昨日一昨日と、ノルベルト会長と何があったかって? 他には、何もないよ。会長が言ってた通りのことがあっただけだよ」
学舎に着いてお会いした後、人目があるため中庭に移動。お互い従者抜きでお話を行い、その結果想像していたお返事がありました。
「会長があたしを好きになって、あたしはシャルロッテ様がいるから断って、そうしたら権力を使って恋人を強制された。これが、三か月の間にあった出来事なんだよ」
「いえ、それは違っています。なぜならノルベルト様は、貴方様に恋をしてはいなかったのですから」
夢を見て思い出した生徒会での会話を、事細かにお伝えさせてもらいました。
これは、今し方ご自分が口にした内容が否定されるもの。こうして偽りを認めざるを得ない状況を作り出すために、この瞬間まで内緒にしていたのです。
「…………………………」
「貴方様達は学校以外では会わない間柄で、告白も拒絶も強制も発生してはいません。モリワール様。昨日一昨日と、あんな時間に何を話されていたのですか?」
「…………………………だーかーらー、説明したような話しかしてないってば。『覚悟を決めたよ』とか『これで僕が本気だと理解してもらえたよね』とか、そんな内容。あんなことがあった直後だから見つかりにくい時間に会うようにしただけで、特別な会話は一切してないよ」
十八秒間眉を寄せたあと、大きく息を吐きつつ肩を竦めました。
……なるほど……。知らんぷりを続けるつもり、なのですね。
「シャルロッテ様、あのやり取りはウソ。あの時すでにあたし達は恋人で、会長は怪しまれないように知らないフリをしてただけだよ」
「でしたらノルベルト様は、私より大切な人が欠席しているのに、私を優先したことになります。矛盾してしまいますよ?」
「それは…………風邪が大したことないと、前日に分かってたからだよ。実を言うと会長は、公務の帰りに――その日のうちにお見舞いに来てくれていて、あたしの状態を知ってたの。浮気を疑われないように、しぶしぶ大事な約束を守ってただけだよ」
「そう、なのですか。けれどそれは、絶対に有り得ない事ですよ。なぜならその日の公務は、お城で行うものだったのですから」
他国の王族がいらっしゃる大事な日で、その時のお仕事はしっかりと覚えています。私が夢で言っていたように『公務で大忙し』で、そんな暇はありませんでした。
「モリワール様、もうお止めください。正直に、お教えください」
「……………………。……………………」
「このままではノルベルト様が、無実の罪を背負う羽目になってしまいます。ですのでどうか、真実をお教えください……っ」
「……………………あっ、予冷が鳴ったね。席に着いとかないと遅刻扱いで、副会長の立場がなくなっちゃうよ!」
黒目をしきりに動かしていた彼女はパチンと指を鳴らし、私から逃げるように身を翻しました。
「副会長として、遅刻は見逃せないっ。このお話はお仕舞いで、暫くは忙しいから会いに来ないでね」
「…………モリワール様、お願いです。貴方しか頼れる人は、いないんです」
「そう言われても、ないものは話しようがないんだってばっ。じゃあねっ! 教室に戻るよ――ひゃっ!?」
慌て走り去ろうとしたため右足が左足に引っかかり、バランスを崩して転倒。前のめりになって思い切り転んでしまいました。
「だっ、大丈夫ですかっ!? お怪我はありませんかっ!?」
「草がクッションになってくれて、擦り剥いてもないよ。ご心配をおかけしまし――あれ……?」
立ち上がってスカートを払っていると不意に動きが止まり、不思議そうに「え?」「あれ?」「なんで?」と呟くようになりました。
これは……? 一体、どうされたのでしょうか……?
学舎に着いてお会いした後、人目があるため中庭に移動。お互い従者抜きでお話を行い、その結果想像していたお返事がありました。
「会長があたしを好きになって、あたしはシャルロッテ様がいるから断って、そうしたら権力を使って恋人を強制された。これが、三か月の間にあった出来事なんだよ」
「いえ、それは違っています。なぜならノルベルト様は、貴方様に恋をしてはいなかったのですから」
夢を見て思い出した生徒会での会話を、事細かにお伝えさせてもらいました。
これは、今し方ご自分が口にした内容が否定されるもの。こうして偽りを認めざるを得ない状況を作り出すために、この瞬間まで内緒にしていたのです。
「…………………………」
「貴方様達は学校以外では会わない間柄で、告白も拒絶も強制も発生してはいません。モリワール様。昨日一昨日と、あんな時間に何を話されていたのですか?」
「…………………………だーかーらー、説明したような話しかしてないってば。『覚悟を決めたよ』とか『これで僕が本気だと理解してもらえたよね』とか、そんな内容。あんなことがあった直後だから見つかりにくい時間に会うようにしただけで、特別な会話は一切してないよ」
十八秒間眉を寄せたあと、大きく息を吐きつつ肩を竦めました。
……なるほど……。知らんぷりを続けるつもり、なのですね。
「シャルロッテ様、あのやり取りはウソ。あの時すでにあたし達は恋人で、会長は怪しまれないように知らないフリをしてただけだよ」
「でしたらノルベルト様は、私より大切な人が欠席しているのに、私を優先したことになります。矛盾してしまいますよ?」
「それは…………風邪が大したことないと、前日に分かってたからだよ。実を言うと会長は、公務の帰りに――その日のうちにお見舞いに来てくれていて、あたしの状態を知ってたの。浮気を疑われないように、しぶしぶ大事な約束を守ってただけだよ」
「そう、なのですか。けれどそれは、絶対に有り得ない事ですよ。なぜならその日の公務は、お城で行うものだったのですから」
他国の王族がいらっしゃる大事な日で、その時のお仕事はしっかりと覚えています。私が夢で言っていたように『公務で大忙し』で、そんな暇はありませんでした。
「モリワール様、もうお止めください。正直に、お教えください」
「……………………。……………………」
「このままではノルベルト様が、無実の罪を背負う羽目になってしまいます。ですのでどうか、真実をお教えください……っ」
「……………………あっ、予冷が鳴ったね。席に着いとかないと遅刻扱いで、副会長の立場がなくなっちゃうよ!」
黒目をしきりに動かしていた彼女はパチンと指を鳴らし、私から逃げるように身を翻しました。
「副会長として、遅刻は見逃せないっ。このお話はお仕舞いで、暫くは忙しいから会いに来ないでね」
「…………モリワール様、お願いです。貴方しか頼れる人は、いないんです」
「そう言われても、ないものは話しようがないんだってばっ。じゃあねっ! 教室に戻るよ――ひゃっ!?」
慌て走り去ろうとしたため右足が左足に引っかかり、バランスを崩して転倒。前のめりになって思い切り転んでしまいました。
「だっ、大丈夫ですかっ!? お怪我はありませんかっ!?」
「草がクッションになってくれて、擦り剥いてもないよ。ご心配をおかけしまし――あれ……?」
立ち上がってスカートを払っていると不意に動きが止まり、不思議そうに「え?」「あれ?」「なんで?」と呟くようになりました。
これは……? 一体、どうされたのでしょうか……?
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