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第6話 理由 俯瞰視点

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((ソフィア姉さんのような人に、なりたい))

 ソフィアへの、特別な感情。それが生まれる切っ掛けとなったのは、今から十年以上も前――オリヴァーが6歳の頃に抱いた、『尊敬』と『憧れ』でした。


 自分が貴族であることを自覚し、家や民の未来について考えていた。自分と1歳と半分くらいしか違わないのに、しっかりしていること。

 力や財を持つ者は、それらを弱き者のために使わなければならないと考えていた。他の貴族のように口だけではなく、寄付や慰問など実際に行動を起こしていたこと。

 そんな寄付や慰問などは、決して自己の欲を満たす邪なものではない。孤児や病人の幸せを心から願い、彼らが笑うと顔が綻ぶこと。


 などなど。幼馴染であるが故にずっと傍でソフィアを見てきており、それによって感銘を受け、感化されて。オリヴァーにとってソフィアは、『お手本』であり『人生の目標』となっていたのです。

((まずは……。ソフィア姉さんの真似をしていこう))

 幼いため、スタートは『模倣』から。オリヴァーはこれまでよりも更に注意深くソフィアを観察し、様々なことを学んできました。
 そうして、ソフィアの素敵な点を沢山理解してきました。

 ですので、そうなるのは必然的でした。

((……僕は……。ソフィア姉さんが、好きなんだ。姉としてだけではなく、女性としても))

 そういった行動を始めてから、およそ9年後。15歳の頃、自分の中にはもう一つの『好き』があると気付きました。
 けれど――

((……でも、残念だけど……。その恋が叶うことは…………伝えることも、できないんだね))

 その頃にはすでに、ソフィアとイーサンの婚約の話が持ち上がっていました。
 このタイミングで言い出したら、おかしなことになってしまう。大勢に迷惑がかかってしまう。そんな状況となっていました。
 ですのでオリヴァーはその気持ちに蓋をし、本心を誰にも打ち明けることなく過ごしていました。


「実を言いますと、僕はずっと姉さんに恋をしていました。……大切な『姉』であり大好きな『女性』がこんな目に遭っていることが、どうしても許せないのですよ」


 ですが今日、オリバーは秘めていた感情をソフィア本人に伝えました。
 どうしてこの場で、打ち明けたのか? ただでさえあちこち騒がしい時なのに、どうして余計に混乱してしまう内容を告げたのか?
 その理由は――

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