上 下
11 / 34

第8話 はじまり 俯瞰視点

しおりを挟む
「おはよう、アヴリーヌ。……空を見て。ゆうべは大雨が降ってたのに、今は雲一つない青空が広がってる」
「おはよう、イーサン。……ふふ。きっと空は、わたくし達の成功を祝福してくれているんですわ」

 オリヴァーがソフィアのもとを去ってから、およそ20時間後の正午過ぎ。ペトニッザ伯爵邸の前。そこでは怪しまれないように・・・・・・・・・・一旦別れていた二人が合流し、満面の笑みを浮かべ合っていました。

 昨日無事に専用の毒が完成し、中和可能な粉末も手に入れた。

 計画の成功を確信しているため、揃ってこのような表情を作っていたのです。

「…………さあ、行こうか。俺達の幸せを、掴み取りに」
「…………ええ、行きましょう。わたくし達の幸せを、掴み取りに」

 そうして二人はアヴリーヌが乗ってきた馬車に乗り込み、ソフィアがいるマーフェット邸を目指します。


「まずは俺が用意した台詞を言って、飲む。飲んだら喉を押さえて苦しんで、その場に倒れる」
「わたくしはそれを見届けたあと、用意した台詞を口にしながら飲む。飲んだら同じように喉を押さえて、涙を流しながら寄り添うように倒れる」

「ずっと一緒にいた幼馴染が、目の前でそんなことになるんだ」
「ソフィアは頭の中が真っ白になって、自分の判断を後悔する」
「なら――。間違いないね」
「時間を巻き戻したい、と強く思ったばかりなんですもの。致死量に足りていないと判明しても――わたくし達が比較的早く意識を取り戻しても、素直に言うことを聞きますわ」


 馬車内で、シナリオと成功率を再確認。それによってどこにも隙はないと改めて感じた二人はキスを交わし、愛情を送り合っている間に目的地に到着しました。

「イーサン様。どうぞ」「アヴリーヌ様。どうぞ」
「ああ」「ええ」

 到着しても、すぐには降りません。二人は同乗していた従者と侍女から協力者から渡された中和に必要な粉末を飲み、持たせていた毒入りの小瓶を受け取ってから降ります。
 そして――

((さあ。最高のショーの始まりだ))
((さあっ。最高のショーの始まりですわっ))

 イーサンとアヴリーヌは、嬉々としながらお屋敷へと足を踏み入れて――

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:62,359pt お気に入り:3,675

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:212pt お気に入り:22

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,031pt お気に入り:247

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:575pt お気に入り:358

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:89,500pt お気に入り:2,106

処理中です...