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第13話 逆監視5日目 監視前(リュシアンの発表) (2)
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「んん? どうしたんスか?」
「確認させていただきますね。午前3時に出発で、午前5時40分前後に現地に到着。そこで40分ほど滞在して、8時40分ごろ神殿に到着。以上で、間違いありませんよね?」
「うっすっス。何か、気になるっスか?」
「こちらの計画ですと行きは2時間40分で、帰りは2時間20分で計算されてますよね? 近道を使っても、もっと多く時間がかかると思うのですが……?」
お馬さんの調子が絶好調だったとしても、少なくとも各40分以上は増えるはずです。
けれど現地民であるお父様とお母様から、疑問の声は出ていません。なぜなのでしょう?
《あのね、エリー。移動は、馬車ではなく馬なんだよ》
《明日はラズフさんが操る馬に乗って、2人だけで移動をするの。だからスムーズに動けて、短縮できるのよ》
「えっ!? 私達だけですか!?」
街を外れると野盗などが出没しやすくなって、非常に危険です。そんな人達は大金と引き換えに、他国の人間に――『聖女を監禁して国を滅ぼしてやろう』と企む人間に売り飛ばす危険性があるため、街中でも移動の際は手練れの方が10名ついてくれています。
それに勿論、ラズフ様の身も危険です。
この計画は、考え直すべきですよね……。
「聖女エリーナ、心配は御無用でございます。ラズフ殿がいらっしゃれば、安心ですからね」
「俺はこう見えて、結構強いんスよ。一昨日は野盗4人を懲らしめましたし、その気になれば100対1になってもミウヴァ様を守り切れますっスよ」
「ひゃ、百!? 百倍の戦力差でも、勝ててしまうのですか……!?」
「200倍、300倍になったとしても余裕っスね。相手がどんなに強くても、強力な武器を山ほど持ってきても、全員が360度から一斉に襲ってきたとしても、意味はないんスよ」
ラズフ様は信じられない数字が入った台詞を、あっけらかんとして紡がれました。
何から何まで荒唐無稽なのですが、私以外の4人は誰も驚いてはいません。それにそもそもこの方は、こんな状況で見栄を張る人ではありません。
どうやってそんな人数を相手に出来るのか、皆目見当がつきませんが……。嘘みたいな、本当のお話なのですね。
「というワケなんで、ぜーんぶノープロブレムっス。ミウヴァ様は安心して、その時を楽しみにしててくださいっスよ」
「しょ、承知致しました。ラズフ様、明日はよろしくお願い致します」
「はいっス。他には――あちゃ~、そろそろお時間っスね。持参して欲しいものを書いた紙をお2人にお渡ししとくんで、暇な時…………例えば職務の移動中にでも、確認を頼みますっスよ」
「畏まりました。それではお父様、お母様、ミーシャ様、サニア様、ラズフ様、行ってまいります」
そうして私は足取り軽く日課に取り掛かり、終始笑顔でその時間は過ぎてゆきました。
すっかり慣れたとはいえ、大変だということに変わりはないお仕事。
けれど今日は今迄以上に、皆さんを守れることへの喜びが溢れてきたのでした。
「確認させていただきますね。午前3時に出発で、午前5時40分前後に現地に到着。そこで40分ほど滞在して、8時40分ごろ神殿に到着。以上で、間違いありませんよね?」
「うっすっス。何か、気になるっスか?」
「こちらの計画ですと行きは2時間40分で、帰りは2時間20分で計算されてますよね? 近道を使っても、もっと多く時間がかかると思うのですが……?」
お馬さんの調子が絶好調だったとしても、少なくとも各40分以上は増えるはずです。
けれど現地民であるお父様とお母様から、疑問の声は出ていません。なぜなのでしょう?
《あのね、エリー。移動は、馬車ではなく馬なんだよ》
《明日はラズフさんが操る馬に乗って、2人だけで移動をするの。だからスムーズに動けて、短縮できるのよ》
「えっ!? 私達だけですか!?」
街を外れると野盗などが出没しやすくなって、非常に危険です。そんな人達は大金と引き換えに、他国の人間に――『聖女を監禁して国を滅ぼしてやろう』と企む人間に売り飛ばす危険性があるため、街中でも移動の際は手練れの方が10名ついてくれています。
それに勿論、ラズフ様の身も危険です。
この計画は、考え直すべきですよね……。
「聖女エリーナ、心配は御無用でございます。ラズフ殿がいらっしゃれば、安心ですからね」
「俺はこう見えて、結構強いんスよ。一昨日は野盗4人を懲らしめましたし、その気になれば100対1になってもミウヴァ様を守り切れますっスよ」
「ひゃ、百!? 百倍の戦力差でも、勝ててしまうのですか……!?」
「200倍、300倍になったとしても余裕っスね。相手がどんなに強くても、強力な武器を山ほど持ってきても、全員が360度から一斉に襲ってきたとしても、意味はないんスよ」
ラズフ様は信じられない数字が入った台詞を、あっけらかんとして紡がれました。
何から何まで荒唐無稽なのですが、私以外の4人は誰も驚いてはいません。それにそもそもこの方は、こんな状況で見栄を張る人ではありません。
どうやってそんな人数を相手に出来るのか、皆目見当がつきませんが……。嘘みたいな、本当のお話なのですね。
「というワケなんで、ぜーんぶノープロブレムっス。ミウヴァ様は安心して、その時を楽しみにしててくださいっスよ」
「しょ、承知致しました。ラズフ様、明日はよろしくお願い致します」
「はいっス。他には――あちゃ~、そろそろお時間っスね。持参して欲しいものを書いた紙をお2人にお渡ししとくんで、暇な時…………例えば職務の移動中にでも、確認を頼みますっスよ」
「畏まりました。それではお父様、お母様、ミーシャ様、サニア様、ラズフ様、行ってまいります」
そうして私は足取り軽く日課に取り掛かり、終始笑顔でその時間は過ぎてゆきました。
すっかり慣れたとはいえ、大変だということに変わりはないお仕事。
けれど今日は今迄以上に、皆さんを守れることへの喜びが溢れてきたのでした。
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