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エピローグその1(下)
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「俺は見る目だけはあるんで、少し前から『想ってくださってるのかな?』と思ってたっス。だけど生憎そう思われた経験がないもんで、半信半疑だったんスよ」
キョトンとしているとお顔が上がり、左頬をポリポリと掻きました。
「でも今日は更に意識が強く出ていて、流石に確信できたっス。でもでもミウヴァ様が勇気を振り絞ってくださってるから、遮るのは野暮と思ってたんスよ」
「…………そ、そうだったのですね…………」
「だから最後までお聞きするようにして、それだとなんだか不公平っスからね。俺からも告白をさせてもらおうと思ったんスよ」
ラズフ様は微苦笑を浮かべて、自分を指さします。
「実を言いますと、俺も知らない間に惹かれてたんスよ。ひまわり畑で追いかけっこや食事やお喋りをしていると、ホントに楽しくって。その時に『もっとこうしてたいな』『これが好きってことなんだ』『知らない間に好きになってたんだ』って感じたっス」
「…………そ、そうだったのですね…………」
驚きが多くて、同じ反応しかできません。
この方も……。こちらを向いていてくださっていたのですね……。
「けどココだけの話っス。かなり悩んだんスよ。謝って、黙っておくべきじゃないかって」
「え……? どうして、謝られるのですか……?」
「『あれっ? じゃあまさか、俺は気を引くために色々と動いてたの!?』『知らず知らず、親切にするフリをしてたんスか!?』。そう思い始めたからっスね」
ラズフ様はワンピースやリボンを一瞥して、大きく肩を竦めました。
「他意があるなら、卑怯で反則、ルール違反っス。だからジックリと自分を見つめ直して、その結果がコレっス。『アレは、ミウヴァ様の人間性に惹かれてたから』『あの時は間違いなく、気を引くためにはやっていなかった』と自信を持てたので、動くようにしたんスよ」
「………そこまで、考えてくださったのですね。ありがとうございます」
ここまでしてもらえる方は、そうそういません。私は、本当に幸せ者です。
「いーやいや、当然のことっスよ。んで、お話を戻しますっとス。ゆうべ寝る前にお伝えしようと決めて、そしたら相手もそんな雰囲気になってた。ビックリ仰天っスよ」
「私も、ビックリです……っ。私もゆうべ寝る前に、お伝えしようと決めたんですよ……っ」
「あははっ、俺達息ピッタリっスね。相性バッチリっス」
「はいっ。そうですよねっ」
クスっと笑い合って、これも相性がなせる事なのでしょう。私達は示し合わせたかのように改めて向かい合い、それぞれが姿勢を正します。
そして。そこに至る過程を楽しみながらゆっくりと、首を上から下へと動かして――
「「喜んでっ!」」
そのあとも、息ピッタリ。
私達は満面の笑みを浮かべ、声を弾ませてユニゾンしました。
「応えてくださり、ありがとうございますっ。リュシアンさん」「応えくれてありがとうございますっスっ。エリーナさん」
お礼を言うタイミングも、勇気を出して呼び方を変えるのもおんなじ。
私達はもう一度心から微笑み合って、幸せの余韻に――長く浸る余裕は、ありませんでした。私はお祈りの時間、リュシアンさんは出発の時間が、近づいたからです。
「ザンネンっスけど、仕方がないっスね。一か月ほど各国を回ってきますっスよ」
「はい、いってらっしゃいませ。私も、いってきますね」
「俺らのために、よろしくお願いしますっスよ。暫くは映鏡越しで、また一か月後に会いましょうっスっ」
リュシアンさんは笑顔で手を振って自室をあとにして、私も笑顔で見送って準備を始めます。
無事恋人になれた直後に離れ離れになる私達ですが、お互いに暗さはありません。
なぜなら私達にはどんな時でも頼りになる鏡がありますし、なにより――。
お互いが正しく向き合っていたら、関係は絶対に変わらない。それを、よく知っていますから。
※本編完結いたしました。いったん完結表示となりますが、明日からは???に関するお話(王太子たちのその後のお話)を投稿させていただきます。
キョトンとしているとお顔が上がり、左頬をポリポリと掻きました。
「でも今日は更に意識が強く出ていて、流石に確信できたっス。でもでもミウヴァ様が勇気を振り絞ってくださってるから、遮るのは野暮と思ってたんスよ」
「…………そ、そうだったのですね…………」
「だから最後までお聞きするようにして、それだとなんだか不公平っスからね。俺からも告白をさせてもらおうと思ったんスよ」
ラズフ様は微苦笑を浮かべて、自分を指さします。
「実を言いますと、俺も知らない間に惹かれてたんスよ。ひまわり畑で追いかけっこや食事やお喋りをしていると、ホントに楽しくって。その時に『もっとこうしてたいな』『これが好きってことなんだ』『知らない間に好きになってたんだ』って感じたっス」
「…………そ、そうだったのですね…………」
驚きが多くて、同じ反応しかできません。
この方も……。こちらを向いていてくださっていたのですね……。
「けどココだけの話っス。かなり悩んだんスよ。謝って、黙っておくべきじゃないかって」
「え……? どうして、謝られるのですか……?」
「『あれっ? じゃあまさか、俺は気を引くために色々と動いてたの!?』『知らず知らず、親切にするフリをしてたんスか!?』。そう思い始めたからっスね」
ラズフ様はワンピースやリボンを一瞥して、大きく肩を竦めました。
「他意があるなら、卑怯で反則、ルール違反っス。だからジックリと自分を見つめ直して、その結果がコレっス。『アレは、ミウヴァ様の人間性に惹かれてたから』『あの時は間違いなく、気を引くためにはやっていなかった』と自信を持てたので、動くようにしたんスよ」
「………そこまで、考えてくださったのですね。ありがとうございます」
ここまでしてもらえる方は、そうそういません。私は、本当に幸せ者です。
「いーやいや、当然のことっスよ。んで、お話を戻しますっとス。ゆうべ寝る前にお伝えしようと決めて、そしたら相手もそんな雰囲気になってた。ビックリ仰天っスよ」
「私も、ビックリです……っ。私もゆうべ寝る前に、お伝えしようと決めたんですよ……っ」
「あははっ、俺達息ピッタリっスね。相性バッチリっス」
「はいっ。そうですよねっ」
クスっと笑い合って、これも相性がなせる事なのでしょう。私達は示し合わせたかのように改めて向かい合い、それぞれが姿勢を正します。
そして。そこに至る過程を楽しみながらゆっくりと、首を上から下へと動かして――
「「喜んでっ!」」
そのあとも、息ピッタリ。
私達は満面の笑みを浮かべ、声を弾ませてユニゾンしました。
「応えてくださり、ありがとうございますっ。リュシアンさん」「応えくれてありがとうございますっスっ。エリーナさん」
お礼を言うタイミングも、勇気を出して呼び方を変えるのもおんなじ。
私達はもう一度心から微笑み合って、幸せの余韻に――長く浸る余裕は、ありませんでした。私はお祈りの時間、リュシアンさんは出発の時間が、近づいたからです。
「ザンネンっスけど、仕方がないっスね。一か月ほど各国を回ってきますっスよ」
「はい、いってらっしゃいませ。私も、いってきますね」
「俺らのために、よろしくお願いしますっスよ。暫くは映鏡越しで、また一か月後に会いましょうっスっ」
リュシアンさんは笑顔で手を振って自室をあとにして、私も笑顔で見送って準備を始めます。
無事恋人になれた直後に離れ離れになる私達ですが、お互いに暗さはありません。
なぜなら私達にはどんな時でも頼りになる鏡がありますし、なにより――。
お互いが正しく向き合っていたら、関係は絶対に変わらない。それを、よく知っていますから。
※本編完結いたしました。いったん完結表示となりますが、明日からは???に関するお話(王太子たちのその後のお話)を投稿させていただきます。
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