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「あ、兄上!兄上が何故ここに!?」

「あ、ノースン嬢、社交的な挨拶は省いてくれて構わないよ。勿論、お茶会中の令嬢たちもだ。」

席をたち、服の裾を摘もうとしていた私たちに王太子殿下は直ぐに指示をくださった。お茶会中のご令嬢方は王太子殿下の登場にカチコチに固まっていらっしゃいましたが彼の笑顔で緊張が少し和らいだようで良かったですわ。

「兄上、何故そのような者達に優しくなさるのです!その者達はヒロナに陰湿ないじめをし、彼女を追い込んでいたのに!」

なるほど、ピンクブロンドがお似合いの可愛らしい令嬢様はヒロナ様というのですね。今の状況少々理解が追いついていないのですが、それだけは理解することができましたわ。けど、ちょっと意外です。アイリとかミーナとかが似合いそうなお顔ですのに。案外さっぱりとしたお名前ですのね。

「愚弟、そろそろ黙ってくれるかな?これ以上恥をかかせないでくれ。あと、そこの愚弟の隣にいるご令嬢その首にかけている物をこちらにわたしてくれるかな?」

王太子殿下の普段とは比べ物にならない表情、凍度100%の笑顔に第二王子殿下と宰相補佐様、副騎士団長様は青い顔で静かになされたのですが、どうやらヒロナ様はあの笑顔を諸共しない心をお持ちのようですわね。

「わたす理由が分かりません!そんなことより、キース様。私キース様と話してみたかったの!あっちで2人で話しません??」

あぁ、おやめなさいな。王太子殿下をお名前で呼んだ挙句、2人でお話などと、婚約者様がおられる王太子殿下に対して一緒に不貞を働きません?と言ってるようなものなのに...!王太子殿下の凍度100%の笑顔が120%へと上がっていく。いや、この場合は下がっていくという方が正しいのかもしれませんね。シュラ様にキアナ様、他のご令嬢方も困ってらっしゃるし、ここは止めないとですよね。

「お取り込み中申し訳ありませんが、元々の、私がしてもいない婚約を破棄されたことについてのお話からズレているような気がするので戻してもよろしいでしょうか?」

「あぁ、そうだったね。それについてしっかりと話そうか。」

どうやら、ヒロナ様にとっては私の提案は不服だったようですわね。そんなに王太子殿下と2人で話したかったのかしら。けれど、それで王太子殿下が不貞を疑われるようなことになれば、王太子殿下の婚約者であるヒューベルト王国の第一王女様との婚約が破棄される。そうすると、この国の信頼も失われるに等しいことになりますからお二人だけにするわけにはいかないんですよ。
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