上 下
34 / 35

34話

しおりを挟む
 とんとん拍子で話が進み、私は数日でハミルトン伯爵になっていた。
 働く予定だった宮殿の担当の方に詫びの手紙を書き、新たにアシュリー・J・ハミルトン伯爵としての生活が始まる。

 元家族たちは、衛兵に見守られて街を出たらしい。

 でも幸いなことに、屋敷や家財道具はそのまま残ってるし、メイドと執事たちは数名を残して入れ替えが出来た。
 悪いとは思うけど、両親の言いなりだった人には出て行ってもらった。
 今残っているのはずっと私の事を気にかけてくれた人だけ。

 少ししてから知ったけど、学園でジャネットと一緒になって私のウワサを流してた人達、その子たちは家から絶縁されて、国から居なくなったそうだ。
 バート様から聞いた話しだと、かなり多くの貴族の子供が関わっていて、大公の孫娘までが居たんだとか。

 多分裏で調整を繰り返して、子供を絶縁する事で妥協したんだろう。
 絶縁した家は、しばらく王家に服従するしかないでしょうね。

 何度かお茶会やパーティーに参加したけど、まーみんな私にすり寄るすり寄る。
 バート様と仲が良い事と、これ以上は家の立場を悪くしたくないからでしょうけどね。

 一番大変だったのは、元婚約者のエリックの父親、マイヤー公爵への謝罪だった。
 もう関係がないとはいえ、私の家族が迷惑をかけてしまったから、誠心誠意謝っておかないと。

「がっはっはっは! 気にするなアシュリー嬢、いやハミルトン伯爵。なんならワシの3番めの息子はどうだ? あれはまだ若いが、中々に聡明だぞ!」

 なんだか婚約の話が出てきたけど、実は公表していない事がある。
 バート様から結婚の申し込みが来ているのだ。

 伯爵という立場なら、第2王子とは立場が離れすぎている訳でもないし、王位継承は第1王子で決定しているからお家騒動もない。
 そういえばナンシーも助けてもらったみたいだし、ずっと裏で私を助けてくれてたみたい。

 バート様とお茶をするのは楽しいし、学園で毎日一声かけてくれたのは励みになった。
 ずっと気にかけてくれてたし、本人は言わないけど学園に掛け合ってくれたのは間違いなくバート様だろう。
 あれ? 思い返してみたら私もずっとバート様を見ていたわ。

 よし! バート様の申し出を受けよう!



「バート様、時間を割いていただき感謝いたします」

「構わないよ。それよりどうしたんだい今日は」

 お城での面会を申し込んだら、当日のうちに返事が返ってきたもんだから、そのまま面会をする事になった。
 バート様の執務室でというのは色気が無いけど、こういうのは早い方がいいわよね?

「バート様、本日は――」

「待て。場所を変えよう」

 そうして連れてこられたのは中庭にある、お茶などを飲むための休憩所。
 今日は天気もいいし、周りの花もキレイだわ。

「アシュリー・J・ハミルトン伯爵」

「は、はい」

 私の前で片膝をつき、バート様は私の手を取った。

「僕と結婚して欲しい」

 どこに置いてあったのか花束を差し出し、プロポーズをしてくれた。
 あ……これはエリックの時には叶えられなかったシチュエーションだ……。

「はい……お受けします。幸せに、して、くださいね」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたが1から始める2度目の恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:901pt お気に入り:1,653

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,662pt お気に入り:54

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,487pt お気に入り:1,465

夫の愛人が訪ねてきました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:20,025pt お気に入り:751

『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,018pt お気に入り:309

処理中です...