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ジュリアン

懺悔と氷解

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俺は父親ルーク、国王の部屋を訪れた。

ノックをする手がものすごーくためらわれる。

会いたくない。父は好きではない。
幼い頃から父に慣れなくて、リアンがいないと近づけなかった。
リアンと相当な恋愛結婚で結ばれた二人はいつも仲良くて俺は父に嫉妬していた。リアンは俺にものすごく沢山の愛をくれたけど、父ルークからはもらった覚えがあまりない。

実は、リアンにも会いたくない。
でも、会わなければいけない。

俺はノックをした。しばらくして国王の部屋の大きな豪華な扉がガチャリと開く。

「おかえりなさい!ジュリアン!」

リアンが満面の笑顔で出迎えてくれた。
長く伸ばした紫の髪を後ろに束ねた、五年前と同じ美貌の俺の産みの親。大好きなリアン。



五年前と違うのは。

片目につけられた黒い眼帯。

俺のせいで。

「あ…。」

話には聞いていたけれど、実際にその顔を目の当たりにするのは初めてで、俺は凍りついたように動けなくなった。

五年前の戦争。

若さのあまり、はやる気持ちを抑えられなかった俺は騎士を連れて戦場に向かった。それを知ったリアンが慌てて止めようとして追ってきたけれど、その時既に前線近くまで行ってしまい、敵兵に襲われた俺を庇ってリアンは正面から斬られた。

即、王宮に担ぎ込まれたリアンは、命はとりとめたものの片目を失ってしまっていた。

俺は父ルークに殴り飛ばされ、一切リアンに会うことを禁じられてしまった。
戦争は終結し、我が国は敗北、条約会議で父は相手国への人質として俺を指名する。

リアンが面会謝絶のまま、俺は即座に相手国へ送られた。

まるで犯罪者のように。


リアンが俺に抱きついてきた。

「大きくなったね!俺より背が高いんじゃないの?同じくらいかな?」

無邪気に笑うリアンが眩しい。久しぶりに会うリアンが好きすぎて。でも俺は抱き返せなかった。

リアンの肩の向こうの書斎机に、真顔の国王ルークがいたからだ。

その顔は決して俺を許していない。

「ジュリアン、お父様に挨拶して?」

リアンが俺の手を引いて父のもとへと連れていった。俺の心臓が跳ね上がった。

「た、ただいま戻りました…。父上。」
「ご苦労だった。向こうでの報告はガリアスから逐一聞いている。グリンの王子としての勤めは果たしたようだな。よくやった。」

俺は驚いて父の顔を見た。目を見開いてものすごいアホ顔をしたのかもしれない。

「どういう表情だ?それは。」

父ルークが訝しげに俺を睨む。

俺の頬から涙が一筋落ちた。

「ルークは知ってたんだよ。あの時ジュリアンが、王族の誰かが戦場に行って戦わないと、民だけに押し付けちゃいけないって思って行ったこと。」

え…?

「ルークだって、王子の身分だったらそうしてたよ。きっと。だからジュリアンの気持ちはわかるんだ。敗北の責任もジュリアンにとってもらったのは、ルークがジュリアンを信用してるからだよ。つらい思いをさせてごめんね。でも、もう一緒にいられるね。」

リアンが俺の腕を抱き締める。

え…?

俺は父を見た。

大きな椅子にもたれてデカい態度で座る父。でも、俺を見つめる瞳は険しくはなかった。

「ジュリアン…。おかえり。」

父、ルークがぽそりと俺に言ってくれた。

















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