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第九話 エルフ村の少年達の賑やかな暮らし ~セリオンとマグリスが投げかける疑問~

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 エルフ達の隠れ里、このドミネ村で一番大きな建物に招待された少年達にエルフ達の心尽くしの料理が振舞われる。

 「お、美味しそう・・・」

 「・・・ゴクッ・・・い、いただきますっ!」

 数日間にわたりほとんど食物を口にしていなかった少年達は歓声を上げると、大広間の中央の大きな木製のテーブルに駆け寄り、湯気の立っている温かい食事を頬張り始める。


 ・・・ヒト族のものよりは少々硬く酸っぱめではあるが風味の良い黒パンに、野菜と鹿肉の入った香草の香りが食欲をそそるシチュー。
 これらはみな、エルフ族伝統の家庭料理なのだろうが、ヒト族の料理とほとんど変わることがなく非常に美味だった。

 大皿には、少年達が見たことのない数種の木の実が山盛りになっていた。
 森の民であるエルフ達のお気に入りの副食なのだろう・・・小さな実は茶色の皮を剥いで食べてみるとアーモンドのような香ばしい味がした、白い丸い実は非常に甘く菓子のようだった。

 「・・・シセラさん、ゾラさん・・・そして村の方々、敵である僕達を助けてくれて、しかもこんなによくしてくださって・・・・なんとお礼を言っていいのか」

 セリオンが皆を代表して礼を言うと、マグリスも口いっぱいにパンを頬張りながら彼に続く。

 「僕達は国でエルフ族は凶暴で悪い奴だって・・・そう教えられていたのに・・・」

 世話係のゾラが、日焼けした精悍な顔に複雑な表情を浮かべて話すマグリスに笑いながら答える。

 「ウフフッ・・・いいのよ、そんなこと、だって困っている人を見て助けてあげるのにエルフ族もヒト族もないでしょう?」

 「・・・でも、シセラさんやゾラさんに助けて貰わなかったら、僕達はあの森の中で全滅していました・・・皆さんは僕達の命の恩人です!」

 ゾラは長い金髪をサラリとなびかせて族長のシセラにニコリと視線を送る。

  「お礼ならば族長のシセラ様に言ってちょうだい・・・君達を助けようとおっしゃったのはシセラ様なんだから!」

 少年達が一斉にシセラの方を向いて思い思いに頭を下げると、シセラはニコニコとしながら応える。

 「・・・い、いいのよそんなこと!・・・今はお互い不幸な現状だけど、ヒト族とエルフ族はずっと仲良くやってきたんだもの!よかったら当分の間、この村で過ごしてちょうだい・・・村人達全員で歓迎するわ!」

 ・・・・まるで慈母のような笑み、少年達は改めてエルフ族の女性達に感謝するのだった。


 数日間の休養とお腹いっぱいの美味しい料理で早くも元気を取り戻した30人の少年達は、村のエルフ族の女性達ともすっかり打ち解け、今までのお礼とばかりに農作業や家の手伝いに精を出し始める。
 パン職人の丁稚や仕立屋の弟子、家具職人からマグリスのような漁師の息子まで、少年達は様々な職を持っていた。
 彼らはそれぞれ、自分の得意とする分野でエルフ村の女性達と一緒になって笑顔で働くのである。

 彼らの仮の住まいとなった、族長のシセラの居宅も兼ねている村の集会所の大きな建物の中には、少年達が森から伐ってきた木を組み合わせ自分達の寝床をこしらえた。
 ヒト族の幅が狭く床から高く作られるベッドとは違い、エルフ族の寝床は床からは低く、その代り2、3人が一緒に寝られるほどの幅のあるものだった。

 少年達はこの「エルフ調」のベッドを賑やかな笑い声と共に造り上げるのだった。


 ・・・エルフの村の生活にもすっかり慣れた少年達のリーダー、セリオンとマグリスは、ある日の夕食の際に、思い切って今までずっと心に引っかかったままだった「ある事」を族長のシセラに尋ねてみた。

 「シセラさん・・・あのぉ、ずっと聞こうと思っていたんですけど、ブルータル・デス・エルフっていうのは・・・一体どんな者達なんですか?僕達はヤツらを成敗するためにこの森にやってきたんです」

 ・・・もしかしからエルフ達の気を悪くするかもしれないその質問をセリオンが切り出すと、マグリスも真面目な顔で続ける。

 「僕達の国では、そのブルータル・デス・エルフがヒト族の村を襲って、村人を皆殺しにしていると・・・皆が信じているんです」

 二人の問いにシセラは美しい顔を曇らせる、彼女の隣にいる世話係のゾラも同じだ。

 「・・・ブルータル・デス・エルフなんて・・・そんなものは存在しないのよ・・・」

 ・・・シセラの口から発せられる衝撃的な言葉!




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