農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第三章 農民が動かす物語

我出会う、識らぬ存在と

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《コンside》

 それはとある春の日のことである。
 竜の里は基本的にいつも平和で実にノンビリとした時間が過ぎるのだが、中にはドンちゃん騒ぎを好む者もいるものの、それはそれで楽しい日々である。
 我自身は竜の里の最奥にある洞窟の中でジッとしている事が殆どで、たまに訪れる客人と子孫と対話をすることが幸せであった。

 だが、そんな時間は1人の人間が訪れた事によって騒がしくなる。

 その日もいつもと同じく住処である洞窟の奥でノンビリと過ごしていると何故だか外が騒がしくなっていた。
「こ、ここ混沌竜様!!」
 そこに慌てた様子で1人の若い竜人が駆け込んできた。
「ふむ、何があった?」

「それが、混沌竜に会いたいから会わせろという人間が急に現れまして、その態度に喧嘩っ早い竜が怒り、襲ったら返り討ちに!それに触発されて他の竜や竜人も含めての乱闘騒ぎとなりまして」

 その報告は少々予想外のことであった。
「もしかせんでもヴァラクが発端か、アヤツは後でお仕置きせねばの。事情はわかったが、いくらヴァラクがすぐ冷静さを欠いて直線的に突っ込む癖があるとはいえ、返り討ちか……中々に強いようだな」
 それに他の皆まで我に報告を怠り応戦を始めるなど、その人間がヴァラクを軽く捻った感じなのだろうな。
 でなければここまですぐに騒ぎが大きくなるはずがあるまい。

「それでは私も助力に向かいます」
「ふむ、気をつけるのだぞ」
 我に報告しに来た竜人も、徐々に近づいてくる騒ぎの元凶へ向けて駆け出した。

「ふむ、これは本当に人間なのか?まさかこうも簡単に無力化するとは……」

 魔法で外の状況を把握してみると全ての子孫が殺されずに、それも重症はあれど致命傷も後遺症すら残らないように倒されていたのに驚きを隠せない。
 幾ら竜が決して無敵の存在では無いとはいえ、こうも簡単にあしらうような戦いを出来る者などそうは居ない。

 そうこうしている内にその人間に襲い掛かった竜族は皆倒れていた。
 一体この人間は何者なのであろうか?
 そう首をひねるとほぼ同時に、我が住処の入り口に辿り着いた人間は何の緊張感も感じられない軽い足取りで、あろうことか鼻歌まで歌いながら侵入する。



「よ!確か混沌竜だったか?俺はスウェーレン・セーゼントだ!……にしても埃臭い所だな、もっと風通しの良いとこに住まねぇのか?」



 そうして我が前に現れた人間は、本当に礼儀知らずな30代の男であった。
「今の発言は我に喧嘩を売っている、と判断してよいのか?」
 幾ら温厚な我とはいえ、流石に万年単位で暮らしている住処をバカにされれば腹も立つ。
 埃臭い等と言われたが、日々汚れが溜まらぬよう掃除くらいはしておるのだ。
「まっさか、んなわけ無い無い!」
 しかしその人間、セーゼントとやらは何が面白いのか腹を抱えて笑う。

 その間にジックリと姿を観察する。
 まずその髪は焦げ茶色の短髪、服は麻の薄茶色のシャツに焦げ茶のズボン、ローブは薄茶色を基調に真っ赤な糸で蔦を模したのであろう模様があしらわれていた。
 そしてその左肩には飛び兎という、耳がニホンとやらで言う団扇程の耳をした白い毛に体の端の毛が茶色い兎が乗っていた。

「いやさぁ、ほら、竜って有名だしさ?その産みの親であるっつう混沌竜って奴がどんな奴か気になってな、旅のついでに寄ってみたのさ」

 暫く笑い続けた後、セーゼントは大袈裟に両腕を広げてそう言った。
 本当に馴れ馴れしい男だ。
 我としては変に畏まられるよりは好ましいのだが、これは些か過ぎるのでは無いのだろうか?

「ふむ、であるならばもう用は済んだか?」
「えー、そりゃねぇよ混沌竜さんよ~。俺はお前がどんな奴なのか、見るのもそうだけど話してどんな奴なのか内面も知ってみてぇのさ」
「ふむ、話と言っても何を話すつもりだ?」
「何をか……あー、そういやなーんも考えてなかったな!」

 セーゼントはそう言うと、また唐突に腹を抱えて笑いはじめた。
「本当にお主は何をしに来たのだ……」
 一体何がしたいのか理解が出来ない。
 腹の内に何かを隠して話す人間であればそれなりに対応出来るのだが、こうもなにも考えなしな人間は初めてで、どう対応すればいいのかわかず戸惑うばかりだ。

「あー笑った笑った!そーだな、それじゃあ俺の昔話をしよう」

 まだお腹を抱えたままそんなことを言いだすセーゼントに、我は呆れる他なかった。

「我の話を聞きたいのではないのか?」
「いやそうだけどよ、ほらよく言うじゃん?名前を聞くならまず自分から名乗れって。なら昔話を聞くなら俺の話からってなんねぇか?」

 訳がわからない。
 いや、何となく理屈がわからなくも……いや、どうなのだ?
 セーゼントが現れてからまだ数分しか経っていないにも関わらず、我はそのあまりにも読めない発言に大きく動揺していたようだ。



「それじゃあまずは俺が生まれたのは……」


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