短編集「めおと」

あおみなみ

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迷いスワン

スワンシュークリーム

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結婚2年目の穏やかに暮らす夫婦の生活スケッチ。

***


 小菅こすげ夫婦は結婚2年目の、若くて物静かな2人である。

 夫・喜朗よしろうはリアリストで仕事熱心。そして観戦専門だがスポーツ好きである。

 妻・はなはロマンチストで、映画や幻想小説が好きなインドア派。週に4回、ファミリーレストランでアルバイトをしている。

 2人とも子供は好きでも嫌いでもなかったが、いつかはできるだろうと何となく思っていたし、それぞれに子育ての理想のようなものを思い描いていた。

 ただ、具体的にこうしたいという意見を出し合ったことはない。

◇◇◇

 華はここのところ、お菓子作りに凝っていた。

 はにかみながら、「カスタードクリームって、結構難しいんだけど、どうかな?」と言いながら、喜朗に試食を頼んできたところをみると、「うまいよ」という言葉を期待しているのだろう。喜朗は一さじ食べ、「素朴でいい味だね」と言った。

 ただ、最終的につくりたいのはシュークリームのようで、肝心のシュー生地がうまく膨らまないのが悩みの種だった。
 さらに言えば、本当はシュー生地で細い首をつくり、「スワン」と呼ばれる白鳥の形をしたお菓子をつくりたかったのだが、そもそも“胴体”がうまくいかないので、夢のまた夢だった。

 菓子作りの本やWebサイトを参考にして、本人なりに工夫はしてみるが、何が原因か分からない。
 もともとそう器用ではなく、現実が理想に追いつかないタイプではあったので、今までなら割と早く見切りをつけることも多かったのだが、今回はよくも悪くも随分と頑張っていた。

 喜朗は甘いものが駄目というわけでもないが、そう好物でもない。
 今までも華がつくったものは、本心とお世辞が半分ずつで「おいしい」と言って少しだけ食べていたが、「これは比較的うまくいったわ」と言いながらシュークリームを週2回出されるようになると、さすがに飽きを感じていた。

「どうしてこんなにシュークリームばかりつくるんだ?」
「シュークリームっていうか――スワンをつくりたいのよ」
「スワンねえ…ま、いいけどさ」

 喜朗は、華がなぜスワンを作りたいと思っているかには興味を持たず、聞くこともなかったし、華も自分からは話さなかった。
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