異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

世界樹の異変

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 その後のセーラの話を要約すると、こうなる。


 少し前からセーラは、世界樹が何かを求めているのを感じた。

 だが、何を求めているのかが分からない。

 頭のキレる人にそれを推測して貰おう。


 要約する必要も無いくらいに単純で厄介な話だった。

 ちなみに、魔物は現れないので戦闘力は必要ないとのこと。


 レファイスの人選ミスを疑うクロトであった。



「普段なら、何を言いたいのか分かりますが、今回は、抽象的過ぎて・・・。」

「ハッキリ言いますが、上手くいく保障なんてありませんよ?」

「分かっています。僅かな希望に縋ってでも、望みを叶えてあげたいのですよ。」

「報酬については?」

「そうですね、宝物庫から何か一つずつ。それと、世界樹の葉を差し上げます。」

「・・・分かりました。お引き受けします。」


 クロトは長期戦を予感しながら、依頼を受けた。


「ありがとうございます。世界樹周辺への立ち入り許可は出しておきます。」

「長期戦になりそうですので、泊まれる場所の紹介もお願い出来ますか?」

「でしたら、この家をお使いください。部屋は沢山空いていますので。」


 そうして全ての話が終わり、再びセーラがレファイスに尋ねる。


「では、レフィ・・・もういいですよね?」

「はぁ・・・。もういいですよ、言葉を崩しても。無礼講ということで。」

「ここから先は、無礼講なのです!」


 ここまで黙っていたユフィも、無礼講ということで話し始めた。


「堅苦しくて済まなかったな、クロト。一応、決まり故に、な。」

「全くよね・・・堅苦しい言葉なんて、私には似合わないのに・・・。」

「母さんはもう少し堅苦しいくらいが丁度いいのでは?」

「レフィ、酷い!もう少し母親を労わって!」

「・・・無いな。」

「ユフィ・・・!レフィが虐めるの・・・!」

「よしよし、なのです。」


 レフィとセーラが軽い調子のやりとりを交わし、ユフィがなぐさめる。

 先程までの雰囲気はどこかへ投げ捨てたようだ。


 同時に、クロトたちの緊張も抜けて行った。

 クロトは始めから緊張などしていないが、それは置いておく。


「あっ、そろそろ昼食にしよっか。」

「そうだな、支度をしよう。クロトたちも含めて、七人か。」

「私も手伝うのです!」


 セーラ達三人は、そのまま軽い相談をした後、献立を決めたようだ。


「そういう訳で、しばらく部屋でゆっくり寛いでいてね?」

「ゆっくり休んでおくのです!」


 クロトは三人に目配せをした後、その申し出を受けたのだった。






 クロトたちがユフィの案内で部屋へ向かって居る頃、セーラの部屋で。

 セーラは椅子に座り込んでいた。

 心配したレフィが、声を掛ける。


「母さん、どうかしたのか?凄い汗だが・・・。」

「・・・大丈夫よ。少し、あの子の気配に集中し過ぎただけだから。」

「あの子、というのは?」

「クロト君のことよ。少しでも気を抜いたら、見失いそうだったから。」


 レフィことレファイスは、首を傾げた。

 そんな印象をクロトに持っていなかったのだ。


「レフィでは、まだ分からないわよね・・・あの感覚は。」

「・・・どういうことだ?」


 セーラはレフィに説明していく。


「勘みたいなものなんだけど、いつでも気配を消せるように準備していたの。」

「気配を消す準備?」

「ええ。その準備の先にあるものを少しだけ感じ取ったのよ。」

「それが、見失いそう、ということに繋がる訳か。」

「ええ。同じ超越者だから、分かる感覚ね。」


 セーラのレベルは119。

 レベル100以降は10刻みに壁がある。

 セーラは長き時を生きて来たが、二つ目の壁を越えられていない。


 だというのに、クロトはすでに自分と同じ領域に居る。

 まだ十九歳だというのに、だ。


「末恐ろしいはずなのに・・・妙に安心できるのよね・・・?」


 見失いそうな感覚に対して警戒心は持ち続けていた。

 一度見失ったらお終いなような気がしたからだ、

 しかし、もう不要だろうとも感じていた。


 その理由までは分からないが。


「・・・さて、昼食の準備をしましょう!」

「そうだな。クロトへの警戒など、するだけ無駄だろう。」


 そして、戻って来たユフィも交えて、仲良く支度を始めたのだった。






(流石、レベル100越えの超越者。あそこまで隠密し辛い感覚は初めて、かも。)


 同時刻、クロトも似たようなことを考えていた。


(とはいえ、もう警戒の必要は無さそうだね。)


 そして、こちらもセーラと同じ結論に辿り着いた。





 ちなみに、昼食はとても美味しく、クロトたちは大満足だった。

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