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2章

30 社会科見学パート1-2

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カグリア 視点


リリスはガタガタと震えていた。

「死んじゃったの?」

絞り出すようにあたしに聞いてくる。

おそらく、リリスは命を奪ったことに後悔と罪悪感が生まれているだろう…

あたしは無言のまま、刃を返して剣を横たわるブラックフォックスの首を挟むように突き立てた。

そして、ガタガタと震えるリリスに優しく抱き着いた。

「大丈夫よ、今回は峰打ちだから…」

「え?」

「今回は素材採集でしょ?素材採集は基本的に何度も採集が必要になるから素材を取って治療して逃すのよ。」

「そうなの?」

「命を奪うのは害を成す魔獣と食用の魔物だけよ。今回は採集だから殺したらダメなのよ。」

冒険者ギルドの依頼で討伐と採集が大半である。
採集ついでに魔物を討伐して絶滅してしまった種類がいる。その為、種の保存の為に無意味な討伐は禁止になった。
もちろん、命の危険がありやむない場合や、増えすぎて迷惑な場合は討伐は行われる。
あと、例外として認められているのは食す目的の場合だ。

今回は食べる訳でも、命の危険がある場合…襲われたけど、今回はリリスの為に見逃そう。
殺したらリリスが絶対に落ち込む。

「今回は生きているから安心しなさい。
でも、いずれ命を奪う覚悟は決めなさい。」

「う、うん。よかった…」

「さっ!採集するわよ。」

「え?」

ついて行けてないみたいだけど時間がないから急ごう。

「まず、今みたいに獲物を倒したら頭を固定するの。
これは逃げないためよ。
次にお腹を蹴って気絶か演技か判断するの。」

ゲシッ!

しーん…

「良し、次に蹴られる可能があるから、この先を輪っかにした紐を全ての足と口にかけて、紐を張りながら近くの木に結びつける。この時、股を開くように吊り上げると暴れてなくて楽よ。」

あたしは紐を魔物と木に結んだ。
吊り上げはまだリリスには無理なのでこっちにした。

「最後の下準備として、この眠り薬を打ち込むの。」

「最初に飲ませるのはダメなの?」

「最初に飲ませるときに暴れて怪我したりするから、手は抜いちゃダメよ。」

相手は野生動物なのだ。
予想額の行動なんてすぐ起きる。
だから気を抜かず手順を踏む必要がある。

「はい、この薬を刺して。」

「こう?」

プス!

ブラックフォックスは少し暴れたがすぐに大人しくなった。

ちゃんと効いたようだ。
あたしは安全を確認すると、リリスの腕を持ちながら指示を出した。

「手順は牧場のモコモコシープと同じよ。ただ、野生の魔物は魔ダニがいるから払ってから作業するわよ。」

魔ダニ、野生の魔物に取り付き魔力を吸い弱られる害虫だ。素材して売る際に、駆除しておかないと素材が駄目になるので必ず処分しなくてはならない。

そういえば、ティーの飲んだ毛皮にはついてなかったなぁ。今度確かめてみるか。

あたしはマジックバックから小さな火種が出る魔導具を取り出した。
炎の魔法は得意だが、リリスに教える為に魔導具を使用する。

ズボッ!

あたしは地面からリリスのハサミの剣を一本抜き取った。
もう1本は抑えだから抜かない。

「まずは、剣の背で魔ダニを落として。」

「うん。こう?」

ガリガリ。ポトッ!

「そうそう、上手いよ。」ナデナデ

「えへへ…次は?」

「周りに燃えない物がないか確認して、少し穴を掘り、中に魔ダニを一箇所にまとめて入れて、この火を出す魔導具で燃やすのよ。ほら、やってごらん。」

「うん。」

「魔力訓練と同じでそれに魔力を注ぐのよ。」

「やってみる。えい!」

ぽっ!

あたしの親指くらいの大きさの火が出たわね。十分ね。

「できたわね。あとは、木や枯葉を集めて燃やせばいいのよ。燃やしたあとは、ちゃんと火の確認はするのよ。消し忘れたら魔獣が怒って、スタンビートと言って沢山の魔獣が周りの人里を襲うから絶対に消したか確認すること。」

「わかった。終わったら確認する。」

「念のため、はい!」

「水筒?なんで?」

「中の水を使って消すのよ。」

本来そこまでする必要はないが、それが採集の基本だ。
基本を忘れて手を抜けば油断という形で返ってくる。
だから、ここは手を抜かない。

魔ダニも燃え切ったようだ。
普通は魔ダニは最後に片付ける際にゴミと一緒に燃やすのだが、あまり放置し過ぎると、逃げて他の魔物に移ってしまう。
なので先に処理した。

リリスに火を確認してもらい。
やっと採集だ。

「いよいよ、毛刈りよ。」

「うん」

「牧場の手順を覚えているかな?」

「えっと、固定はしているから…
蹴られない方向に立って…」

そうそう、暴れたらすぐに離れれるようにするのよ。
お腹に刃を立てる。
リリスは剣をブラックフォックスのお腹に立てた。

「ストップ!!リリス、刃は逆よ。」

危ない、もう少しでブラックフォックスのお腹を裂く所だった。ふぅ…

「そっか!ごめんなさい。」

「次から気をつけてね。」ナデナデ

「はーい!えい!」

リリスは上手い刃を入れたようだ。
ちなみにあたしはブラックフォックスの両脚を抑えている

時間はかかったが無事に毛刈りは完了し、ブラックフォックスに回復薬を飲ませ解放した。

身体が大きく見えたのはどうやら毛が増えただけだった。
あの餌に育毛効果でもあったのかな?

そんなことを考えながら後処理を終え、帰宅した。

本当はもっと狩りたかったが、リリスが疲れて寝てしまったのでおんぶして帰ることにした。

先に帰っていたルナ達に成果を見せたら呆れていたが、しっかりリリスを褒めていた。
起きてからにして…

「リア…無茶させないでよね。」

はい…気を付けます。

毛皮の処理はルナに任せるつもりだ。
あたしはギルドに渡すからあまり知らないのよね。

「毛皮の処理はルナにお願い出来る?リリスに教えて欲しいのよ。」

「毛皮の処理?いいわよ。そこまでする必要ないと思ったけど、リアが言うなら教えるわ。
あっ!?ティーちゃん!まだ、ばっちいからダメよ。」

ルナが慌ててティーから毛皮を取り返した。
危ない!!
ティーの口に入るところだった。

いつもティーは刈り取ったばかりの毛皮は口に入れないのに、今回はどうして口に入れようとしたのかしら?グイグイ!

「あーうー…」

軽く頭を押しているだけなのに可愛い反応しちゃて、このこの!

「リア!早くお風呂に入ってね。リリスが汚れたままじゃ、可哀想よ。」

「はーい!リリス行くよ。」

「すー…すー…」

あたしは寝ているリリスを連れてお風呂場に向かったのであった。

おつかれ…







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