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6章

78 ホームランコンテスト

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カグリア 視点

2匹目の長生きな亀を求め…じゃなくてヒールタートルを求めて森を疾走中のカグリアよ。

ルナが言う通りティーを連れて行くと激レア魔獣に会えたり素材が採れるわね。
ルナの予想ではティーは善悪関係なく上質の魔力を求める性質があるみたいで自身を餌にして引き寄せているらしい。
恐ろしい食への執念を感じてしまう。

あたし達にとっては素材が入ればあたしの武器やルナの研究に使えるので嬉しいこと尽くめである。
厄介事は起きるがあたし達にとっては利益が多いので苦にはならない。

そんなことを考えると目的地の沼地にやって来た!
特に名前も付いていない普通の沼地だった。

ん?アクアタートルが降りるって?

アクアタートルを降ろすとそのまま沼の中に入って行った。

待っている間は暇なので、あたしとティーは…重力岩の破壊を試みた。

「はぁー!ふっ!」

ドゴン!

「キェー!!」

ガガガガガガ!!

硬い…アダマンタイトより断然硬い。
あたしが素手で全力で殴っているのにヒビ一つ入らず、ティーのアホ毛でも削れなかった。

最高の素材じゃない!

「ティー!この素材壊しがいがあるわね!」ドゴン!ドコン!

「あーい!」ガガガガガガ!!ベシン!ガガガガガガ!

結局アクアタートルが戻るまで頑張ったがヒビ一つ入らなかった。
やるわね!

戻って来たアクアタートルはヒールタートルを連れて沼を上がって来た。ヒールタートルはティーの2倍くらいの大きさで背中に目的の水苔が生えていた。甲羅が黒いので間違いなく千年亀のようだ。
ヒールタートルは若いとマミドリの甲羅で年を重ねて黒くなる。

あたしは目的の亀を見つけて安堵した。
しかし、ヒールタートルは疲れているように見えた。
目の下にクマが出来てため息する亀なんて普通は見ない。

「もうついでよ!ティー!聞いてきて!」

「あいあーい!」

ティーはテテテと近付いて話始めた。
今のうちにリアに報告しよう。

(ルナ!聞こえる?)

(リア?お疲れ様!どう水苔見つかりそう?)

(千年亀に今会えたけど、問題がありそうだから時間がかかるかも。今ティーが事情を聴いてる。)

(そう…でも見つかったなら、薬の準備はしてていいかしら?)

(ちょっと待って、ティーが戻って来て。)

(わかったわ。)

「どうだった?」

戻って来たティーが言うには、ヒールタートルは沼の中にいる大量の巨大蟹が夜な夜な寝床に押し寄せて来て眠れないらしい。

詰まる所、沼から蟹を追い出せばいいってことね。
とはいえ蟹の言い分も聞かないとどうするか決められないわね。

「ティー!ヒールタートルにこの沼に魚とか陸に上がれない生き物がいるか聞いてくれない?」

「あう?」

「また?ってお願い!干し芋あげるから!ね?」

「あい!」

カサカサカサカサ…

(お待たせ、どうやらヒールタートルの巣に巨大蟹が住み着いているみたい。追い出したら戻るわ。)

(巨大蟹?なら、ブルーサファイア海岸のロッククラブじゃない?)

(巨大蟹なんてロッククラブしかいないものね。)

(ロッククラブって淡水だと美味しくないのよね。ブルーサファイア海岸に飛ばしたら?)

(そうね。ロッククラブと確認出来たらブルーサファイア海岸に飛ばすわ。)

(そう、急ぎたいから薬の準備だけはしておくわ。)

(わかったわ。出来るだけ早く戻るからね。)

(待ってるわ。)

あたしはルナとの念話を終えた。

カサカサカサカサ…

ティーが戻って来た。なになに…どうやらここはヒールタートルが自分で作った沼だから蟹と自分以外いないらしい。
それは好都合ね。聞いてきてくれてありがとう!ナデナデ

行動に移る前に…

「ティーおいで!」

あたしはアイテムボックスから青色のネコミミ付きレインコートを取り出しティーに着せた。

「かわいい~!」

あまりの可愛さにあたしはティーを抱きしめてしまった。

おっと、いけない!早く終わらせないと!

あたしがティーにレインコートを着させたのは汚れない為である。
このレインコートはスライムジェルで加工した生地を使用している為に汚れを食べて常にコートを清潔にする機能が付いている。
これならルナに怒られないだろう。

あたしもレインコートを着て、振動注意の警告シールが貼られた木製の箱を取り出した。

「ティー!危ないから亀さん達とあそこの木で待ってて!」

「ん!あい!」

ティーは待つ木を確認すると亀に乗って木に向かった。

あれくらい離れれば汚れないでしょ!
さてと…ペリッ!

箱の封を剥がすと中に青白い液体の入ったガラス瓶が入っていた。
あたしは沼の近くに行き瓶の蓋を取り中身をばら撒いた。
この瓶の中身は氷結薬という薬でかけるとその周囲をどんどん凍らせていき水上の足場や魔獣を一時的に凍られることができる。
しかし扱いが難しくたまにアイテムバックごと凍り付く冒険者が現れる為にあまり使う人がいないらしい。

パキパキパキパキ…

少し多めに氷結薬をかけたので沼地全体を凍らせることが出来た。
ティーを見ると目を輝かせでヨダレを垂らしていた。
…徹底管理しないとダメかしら?

ん~…10分くらい置いときましょう!
その間に地図で方向と距離を確認しないと…

あたしはアイテムボックスから世界地図と方位磁石と魔鉄製棍棒を取り出した。

えーと…こっちでこの距離か…
この方向なら問題はなさそうだ。
よし!思いっきり行こう!

10分くらい経ちそうという時、沼地の氷を叩く音が聞こえていた。

お!?来た来た!

あたしは手に持っていた棍棒を沼の氷に突き立てた。

ドシン!
パキパキ…

あたしは沼の一部を割り生き物が通れる道を作った。

ぷくぷく…バッシャーン!

あたしが作った空気の通り道から1匹のグラビティタートルくらいの大きな蟹が飛び出して来た。

やっぱりロッククラブか…

ロッククラブは岩のようなゴツゴツした外装を持つ魔物で、元々はブルーサファイア海岸の名物だった蟹だ。
海に住めなくなってここに住み着いてしまったのだろう。

あたしの作戦は単純なもので沼の蟹を氷で酸欠させ空気を求めて来た蟹を…

「吹っ飛べ!!」カキーン!

浄化された海に飛ばすことだ。ロッククラブは耐久性が高く魔鉄の棍棒で飛ばしたくらいでは死なない。
昔、ブルーサファイア海岸から大量のロッククラブが押し寄せて来た時の依頼で消費出来ないロッククラブは海に戻してと言われたので今回みたいに吹っ飛ばしたが死んでいなかった。なので、今回も大丈夫だろう。
蟹は1匹を皮切りに次々と出てきた。

ほらほら!海に帰してあげるから来なさい!

カキーン!カキーン!

1時間経つのにまだ出てくる。
何匹いるのよ!ん?ティー?

カン!

あっ!?ミスった!

棍棒のあたりが弱く打ち損ねたロッククラブは近くに落ちてしまった。
ティーは謝っているのか、頭を下げていた。

「もう、びっくりするじゃない。どうしたの?オムツ?」カキーン!

フルフル!

違うようだ。カキーン!
どうやらティーもカニ飛ばしをしたいようだ。

「コントロールが難しいからダメよ。お散歩なら亀さん達と一緒にいるならいいわよ!ついでにさっきの蟹さんも連れて来てくれたら嬉しいなぁ。」カキーン!

「…あい!」

ティーは頷くとヒールタートルに近づき甲羅に跨がり散策に出かけた。
カキーン!





それからさらに1時間してロッククラブは湧かなくなった。
ティー達はまだかな?

カッ!ババババババババババ…

森の奥で誰かが閃光魔法を使ったようだ。
横真っ直ぐに放たれているのがよくわかる。
ティー達は無事かな?

カッ!バーーーーーーン!!

今度の魔力はティーだ。
明らかにさっきの閃光より大きい…
どうやら楽しんでいるのが魔力からわかる。
あの方向だと川に繋がる…
ティーは道の整備でもしているのだろうか?
無事みたいだし後で聞くか…

数十分して木をなぎ倒してカニがやって来た。
カニの凹み具合からあたしが飛ばしたロッククラブのようだ!

バキバキバキバキ…

「まんま!」

蟹の上にはティーが乗っているので無事に連れて来たようだ。

「ティーお疲れ!お使い出来たね!偉いよ!」ナデナデ

むふぅ!

ティーは誇らしげにしていた。
さて、最後のロッククラブを飛ばしますか…

「ん?ティーどうしたの?
出来た道で海に帰るから飛ばさなくていいって?
…そう。
気をつけて帰ってね」

どうやらティーが開いた道を使って帰るようだ。
ロッククラブは手を振って素直に川の方へ去って行った。

ふぅ!終わった!
あ!氷を壊さないと!

ドシン!

今度は全体が壊れるように棍棒を振り下ろした。

ピキピキ…パリン!

これで大丈夫でしょう!

あたしは砕いた氷の除去とティーのレインコートを片付け、ヒールタートルにお礼として水苔を貰い、ルナのもとに戻ることになった。
が、案内してくれたアクアタートルを送り届けなければならないので、あたし達はヒールタートルに別れを告げ、星見川な向かった。














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